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心理 音声読み上げあり

ギリシャ神話「ピグマリオン」物語はシンプルなのに……。※独自考察含む

物語はシンプルなのに、すごく難しい内容。これは男尊女卑?いや、裏には女性への畏敬の念があるような。

 

©VOICEVOX:四国めたん

 

幕開け・女性不信の王ピグマリオン。
ある時、売春婦が集団を作り、男性に隷属するのではなく「商売」を行っているのを見たピグマリオン。
そのことで女性不信になってしまいました。
彼の理想とする女性は貞淑で、一歩下がってついてくる従順かつ素直で美しい乙女オブ乙女。
売春婦はその正反対のイメージだったようで、女性の持つ「嫌な面」を見てしまった結果、独身を貫き通すことに……。

 

第1章・されど芸術家は像を彫る。
しかし芸術家ではあったので、理想の女性像をモデルに完璧な像を作ろうと決意しました。
彼は生身の女性からは距離を置きましたが、美の象徴として乙女像を作り出すことへの疑問はなかったようです。
ピグマリオンの理想の女性は真っ白な象牙で作られました。
その仕上がりは生きた女性と間違われるほどリアルで、かつ生身の女性ではかなわぬほどの美しさ。
しかも乙女像は処女性を備えており、貞操観念を持ったポーズで表されています。
まさしく売春婦とは異なる「理想の淑女」
ピグマリオンはなんと、自らが彫りだした理想の乙女像に恋をしてしまったのです。

 

第2章・恋心はただ募る。
しかしただの象牙で作られた像にすぎません。
動くことも話すこともない彼女――しかしピグマリオンは目覚める度に彼女への想いを強くしていきます。
ピグマリオンは大きな愛情を感じ、妻のように扱いました。
毎日のように花を贈り、裸でいさせることに恥ずかしさを感じ、ドレスを彫ったりアクセサリーを買い与えました。
ついには食事を用意し、自ら持つ中で最も上質なベッド、シーツ、枕に寝かせる毎日。
そのうちに、この乙女像が本物の女性であると思い込み始めたのです。
象牙の冷たい肌に触れ、愛をささやき、口づける。
いつかキスを返してくれるのではないか――そんな淡い期待を抱きながらその肌を丹念に愛撫していく。

 

第3章・女神への祈り
アフロディーテの祭りの日、ピグマリオンは女神に捧げ物をし、祭壇の上に立って祈りました。

「神よ、どうかあの乙女像のような乙女を私の妻に」

実際に「像を妻に」とは恥ずかしくて言えなかった、という説があります。
まだ理性を保っていたらしいピグマリオン。
しかし本音ではあの乙女像をこそ妻に、だったことは間違いありません。

 

最終章・奇跡
その日、ピグマリオンが家に帰り、いつものように乙女像に駆け寄ると彼女を抱きしめます。
肌に触れ、いつものようにキスをすると、ふんわりと柔らかく、血が通ったような温かさ。
ピグマリオンが驚いて顔を離すと、そこにはこちらを見つめて息をする乙女像の姿が。
思い込みではない、と確認するようにもう一度キスをし、その胸に触れるといつもの固い胸ではなく、徐々に柔らかくなっていきます。
彼が触れていく場所から徐々に温かく柔らかく、まるで生きた人の肌のように変化していくではありませんか。
脈がうち、心臓は鼓動する。
ピグマリオンはアフロディーテのもたらした奇跡に感謝します。
乙女像はピグマリオンの愛撫に頬を赤らめ、恥ずかしそうに見つめてきました。
ピグマリオンは彼女を「ガラテア」と名付け、妻にします。
二人の間には子供も生まれました。

 

物語だけで言うなら、ピグマリオンや男性の理想を具現化した都合のよい物語感も否めません。
しかし知るほど男女の沼に足を取られそうな複雑なものが……以下独自考察です。

©VOICEVOX:四国めたん

 

ガラテアの事や精神面は全く語られていません。
とにかく女性不信のピグマリオンが描いた「理想の女性像」の具現化のような女性で、男性の理想をぶつけられたようなものかもしれません。
貞淑で、清純で、大人しく、あまりしゃべらない。(ガラテアのセリフは一切ない)
彼の愛撫に応えて体は変化していく、というのも、どことなく男性優位なSexを思わせます。
女性を先に導いた方が、結果男性も性感を得やすいというのは確かですが、それが公に提唱されているのはここ数年のこと。
アダム徳永さんの体験や科学的発見に基づいた説であり、当時の男性優位な社会で、果たしてそういった発見があったかはわかりません。
また売春婦に対する嫌な目線という描写もあります。
売春が勧められるわけではありませんが、他に生きるすべがない女性への差別はいかがなものか……という風にも思えますね。
商売として成り立つのは男性「客」がいるからなのだから、女性だけが蔑まれるいわれはないように思いますよ。
ただピグマリオンがどうこう、ということではなく、当時の社会的風潮が現れた物語。
それに対して文句を言うことは誰もすべきでないのかもしれません。
男性優位ではありますが、女神アフロディーテへの信仰はあったので、女性を極端に低く見てたわけでもないのでしょう。
いつの世でも優しい男性はいるし、優しい女性もいるし、その反対もいるのでまあいいか。

 

また売春婦たちを見て不信を募らせたということではありますが、一方で女性が全て男性に隷属するわけではないというシーンでもあります。
男性が求める理想の乙女とは正反対な女性たちの姿。
言い方を変えると、ピグマリオンにとってガラテアは従順な妻。
売春婦たちは自立した女王のようなもの。
売春婦はある意味、男性を圧倒出来る女性達でもありました。
日本のお遊女さんといえば花魁ですが、彼女たちは自ら客を選ぶことが出来ました。
しかも愛人まで抱えることもありました。
病気を得たり、好きでもない男性に身を任せるのはかなり過酷ですが、その分男性を見下せる職業でもあったよう。
(注意しないと遊女は性処理道具として見られ、人としての尊厳を失うこともあります)
そのため地位に関係なく男性を意のままに操る術を身につけた売春婦は、かなり恐ろしい存在だったのかもしれません。
セクシャルな面に置いても、主導権をどちらが握るかの攻防戦めいたところがあります。
この両側面をさらっと描いたこの物語。
ロマンチストで傷つきやすい男性の心をよく表しているのかもしれません。

 

人工物であるガラテアと生身の売春婦たち。
人工物であるガラテアは受け身です。
ピグマリオンの理想なのですから、Sexに対しても愛撫に対しても常に受け身で、恥ずかしがる様子で描かれます。
一方、生身の売春婦たちは本能に備えている性欲を素直に認め、謳歌し、なんなら男性たちを圧倒します。
男性としてはMなら問題ないでしょうが、ベッドの上でいきなり主導権を握られると自分の劣等感を強め、いい気分ではないでしょう。
彼女たちへの不信というより、男としての自信をなくすことへの恐怖があったのではないでしょうか。
手練れである女性たちを満足させられなかったら?
手練れである女性たちに蔑まれてしまったら?
ピグマリオンは王でもあったため、そういった自尊心が傷つくのを恐れた可能性もあるのでは……というのも、当時この地域は強烈な家父長制だったようですから。
女性に主導権を握られたり、あるいは蔑まれるなど、とんでもないことでしょう。
ならば自分の愛撫に素直に反応し、性的欲求を持たず、可愛いだけの妻でいてもらった方が色々気楽でしょう。
ガラテアは決して彼を裏切らないはず……ですから。

 

一方、最初に心境の変化が起きたのはガラテアではなくピグマリオンです。
彼女に恋した彼は、花を買い、ドレスを買い、食事を用意し、とかいがいしく彼女に尽くします。
上質な生活を彼女に与え、朝目覚めれば愛をささやき、夜寝る時は愛撫を施す。
なんだか恋に恋する乙女のような細やかさです。
花に目覚める男性は意外と多いものですが、そのきっかけが女性であるのは多いもの。
彼の中には女性的な感性が目覚め、成長していたのは間違いないでしょう。
美しいものと優しいもので彼女をめいっぱい愛でいっぱいにしようとしています。
その結果、愛で満たされたガラテアも目覚め、彼を受け入れるわけです。
陰陽のルールとも合っているとも思います。
陽(男性性)の中で陰(女性性)は育つ。
男性の愛で女性性が目覚めた感がガラテアにはありますね。
男性の愛により女性として目覚め、満たされるのは一つの幸福でしょう。

 

さらに彼女に命を与えたのはアフロディ―テ。
結局女神です。
舞台となった土地は男性優位社会ではあったようですが、女神信仰と女神によるガラテアの誕生。
そしてガラテアの妊娠と出産。
となると、やはり命を産むのは女性である、という母性への賛歌のようでもあります。
売春婦への不信感、女神への尊敬、ガラテアへの愛情、と女性への「理想像」の押し付け的な欲求とともに、女性への美化、畏敬が物語全体を覆っているようなのです。ようは、女性に対して下に見ていたのではなく、劣等感をこじらせただけかも、という。
でもこの話、
「男性は、王は、こうあるべき」
「女性は、妻は、こうあるべき」
という理想論を押しつけられた男女の話、とも感じられます。
これは現代では女性に対して「女らしく」を強要しないで、という雰囲気があり、男性への不遇が語られていない気がします。
男性もまた「理想的な男性像」を押しつけられてきた面があります。
弱みを見せず、力強く、家庭を守るために、と弱さ・甘さを許されないでいたような。
そうでないと社会を整えることは出来ず、発展させられない。
結果心を閉ざすというか、機械的に働いたために感情が動かなくなる男性は多かったのですよ。
ピグマリオンもまた、「妄想によって作られた人々の理想」の中で自分を模索していた人なのかもしれません。
強烈な劣等感が底にあり、女性に認められたいと思う一方で、自分が女性を認められない。
この葛藤はピグマリオンの心に暗い影を落としていたのかも……。

 

しかし、表は男性優位的な物語で、ガラテアは一切話さない。でも裏は?
女は黙って男の後を着いてくれば良い、と言う男尊女卑も感じさせるにも関わらず、そのピグマリオンは家に帰ると彼女のために花やドレスやアクセサリーを与え、温かい彼女の肌に愛撫を尽くす。
外では王様な男性が、家では女王である妻の奴隷……という感じすらある。
こういうカップルは、けっこう古今東西多いですけどね。
だから女性は裏で男性を操れてしまうし、日本でも「女性の手のひらで転がされてるくらいが丁度良い」というのもありますしね。
孫悟空がお釈迦さまの手の上で転がされている……というのも、男女の関係を表しているようだ、という説もありますから。
ガラテアのような可愛い女に癒されたい。Sexでまで女性を負かさないといけないプレッシャーを感じていては、精神は疲弊する一方。
そんな一面もあったのでは……
ガラテアのことが語られない物語なので、どうしても偏ってしまう。

 

ピグマリオンの愛はそれでも本物だった。
家の中では彼女中心!ガラテアのためにドレスを用意したり……というのは男性ならではの細やかな、ロマンチックな、与える愛情をそのまま表しているようです。
ガラテアを性欲処理のための「お人形さん」扱いしたのではなく、本当の妻として大切に扱いました。
これだけは本当です。
そのため、アフロディーテも彼の愛に感動し、芸術を司る女神としても彼の才能を応援したくなったのではないか、とされています。
そんなピグマリオンの純粋な愛情、アフロディーテの慈悲によって誕生したのがガラテア。
彼女が純粋な性格となったのは、ベースにあるのが純愛だからかもしれない……と思うのは日本人だからかな。付喪神的な……。

 

エロスとプシュケはどこまでも「心の」物語でしたが、ピグマリオンに関しては物語自体は短めなのにも関わらず、当時の「社会」という表と、「家の中」という裏の世界とのいかんともしがたい事情を感じさせる、かなり複雑でデリケートな物語、という感じ。
ちょっとやそっとじゃ理解できない男女性の問題といった感じで、かなり難しい。

表面だけでは何事も判断できないなあ~、と改めて考えさせられた物語です。
特に男性は社会では「おバカ」を装えたり、エラそうに出来たり、とけっこう器用な人が多いですから。
外で男性同士の「適切なマウント」を取れない分、家で女性相手にマウント取るような人もいますし(こういう人苦手なんですよ、ごめんなさい。だったらピグマリオンの方がそりゃ可愛げがある……)

外と中、表と裏、上と下、理想と現実、と正反対なものが絡み合った複雑な物語。
単純な「理想の押し付け」とは言い切れない感じかなあ。

いかがでしたか?
あくまでも考察なので、これが正解というものはありません。
しかしちょっと考えてみることで、人生に役立つヒントがあればこれ幸いです。

それでは、ありがとうございました。

 

 

 

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