小説 黒豹とかたつむり

「黒豹とかたつむり」第11話 君の好きなところ 後編 *官能シーンあり

 部屋につくなり棚田は紗矢の背中を壁におしつけた。
 腰を抱いて口づけると、紗矢の手が腹から胸を撫でてくる。血流まで促されたかのように全身がぽっと温かくなる。
 飯塚の家でしばらく過ごしたため、紗矢とこの部屋で過ごすのが待ち遠しかった。顔を見合わせると、彼女はデートの間に見せたような「女性」の顔をしている。
 色気と期待と親愛を含んだ目の色。キスを拒まれた時に感じた不可解な壁がないことにほっとした。
「棚田さん、なんか楽しそうね」
「楽しいんじゃなくて、ほっとしてる」
「久々に自分の家だし?」
 紗矢はもったいぶるようにそう言って、棚田の腕をそろっと撫でた。わずかに首を傾かせたため、ほっそりした首筋がやけに艶めかしく覗く。
「そうだな。やっぱり自分の家は落ち着く」
「意地悪だなぁ」
 そう言って笑みを浮かべる紗矢の、艶めかしい首筋に顔を寄せる。長い髪をかき分けると、甘い香りが鼻腔に流れ込んできた。
「くすぐったいよ~」
 体を揺らして笑う彼女の腰を強く抱いて、甘い香りに集中する。洋酒の香りだ。それと、桃のような。
 彼女以外の誰かの匂いはない。
「いい匂いだ」
「本当? まだシャワー浴びてないけど」
「だからだな。紗矢の匂いがする」
 紗矢の髪を一房指にからめ、唇に当てる。さらさらと滑る感触が気に入った。
「綺麗な髪だ」
「フェチだもんね」
「そうらしい。ここも色っぽい」
 棚田は紗矢のシャツのボタンを3つ外し、襟を開くと鎖骨を撫でた。紗矢はまぶたを閉じ、棚田の手の動きに合わせて息を吐き出す。
「耳も」
 赤くなった耳を爪の先でなぞると、紗矢は棚田の腕に回した指先に力を込めた。
「今日、何……?」
「さっき言っただろう、紗矢のどこが良いか教えてやるって」
「えっ。こういう形で?」
「こういう形で」
 紗矢は頬を赤く染めながら、むう、と口を尖らせた。その唇がしっとりと赤く色づいて見えるのは気のせいではないだろう。
 下唇に触れると、白い歯が見えた。
 その奥に入り込みたい気持ちに逆らえず、唇を寄せる。じんと温かく柔らかいそれを味わい、舌でなめて誘う。
 紗矢の手が肩に伸び、顔の距離が近づいた。つま先立ちをしたらしい。
 不安定になった彼女の腰をしっかり抱き、開かれた唇の中で舌が触れあわせる。じんわりと溶けそうな熱を味わうと細いくびれから背中を撫でた。
「背中も好きだな」
「そうなの? 自分じゃ見えない」
「なら俺が見といてやる」
 紗矢は声をたてて笑うと髪をかきあげた。目元は酔った時のように目尻が下がり、赤くなっている。瞳が色を濃くしたためか、却って光を集めてきらきらしていた。
 腰が重くなるほど艶やかだ。
「熱くなってきた。ねえ、冷房入れよう」
「汗まみれでもいいだろ」
「野性的だなぁ。頭が沸騰しそうだもん」
 だから、と譲らない紗矢に根負けし、棚田はエアコンのリモコンを取りにテーブルに向かった。
 スイッチを押すとエアコンが動き出す。
 棚田はついでに、とゴムを取り出してシャツを脱いだ。
 その背中に紗矢の肌が触れる。
 振り向くと下着姿の彼女がまっすぐに見上げてくる。
「もう脱いだのか」
「熱かったから。うそ、冗談だってば。新しい下着だから、ちょっと見て欲しくて」
 大胆なことをする彼女の手を取って振り返る。白のユリが刺繍された面積の小さなブラに、同じデザインのショーツ。ずいぶんサイドが細い。
 無駄のないスタイルにすらりとした脚がずいぶん際立つ。色っぽいというよりは、綺麗だ。
「似合うよ」
「良かった。今度好きな色言ってね」
「俺の? きみに似合うのが良いだろ」
「まあ、そうかな。ところで何してるの?」
 紗矢が言ったのは、棚田の指がショーツのサイドのゴムを引っ張ったりしていることだ。
 棚田は眉をあげて紗矢を見て、こともなげに言う。
「この音が好きでね」
「パチンってやつ? ちょっと痛いんですが」
「それは悪かった」
 棚田があっさりやめると、紗矢はまじめな顔をして目を覗き込んでくる。
「もしかしてS?」
「かもしれない」
「そのうち縛ったり……」
「するかもな」
「またまた~」
 紗矢は明るく言ったが、棚田は彼女の首を撫でて言った。
「皆似たようなもんだ。恋人から贈られるネックレスやブレスレットは……首輪代わりだろ」
 棚田の説明に紗矢は眉を寄せた。
「まさか、あのキーホルダー……」
 探るような目つきだが、耳まで赤くした姿はどうにもまんざらではなさそうに見える。
「考えすぎだ」
 棚田は紗矢の頬を撫でて口づけた。
「肌の感触もいい」
 彼女の背を撫で、脚からお尻へ手を伸ばす。むき出しの肌に触れ、確かめるため中心へ手を伸ばすとようやく布地に触れた。
「今日Tバックだった?」
「そうだけど」
「マジかよ。仕事中に……」
「動きやすくて良かった。これ、エロの意味だけじゃないから誤解しないでよ」
 紗矢はにゅっと人差し指を突き出す。
 棚田はその指先と彼女の目を交互に見つめ、半眼になると息を吐き出した。
「今後も穿くのか」
「多分。見せるためじゃないから、大丈夫」
「見るのは俺だけだぞ」
「そうなるようにしてね」
 ずいぶん挑発的な言葉だ。だがそれとは裏腹に紗矢は甘えるように目元を和らげている。
 彼女の手が胸から登ってきた。
 それを取って手のひらに口づける。
「そうだな」
 手のひらから指の付け根に音を立てて吸い付くと、紗矢は肩をぴくりと跳ねさせた。
 働き者らしく、弾力のある手。器用なそれが逃げるように動き、棚田はそれを追いかけて口に咥えた。
「ん……」
 上擦った声が聞こえ、ぐわっと体が熱くなった。
 紗矢の体を抱きよせて肌を密着させる。ブラ越しに胸が柔らかく形を変え、谷間から桃を熟成させたような匂いが立った。
「こ、ここでするの?」
 眉をハの字にして戸惑う紗矢の手首を取り、細い血管の浮き出る内側を吸う。紗矢は驚いたように腰をひいた。
「あっ……ちょっと」
 息を弾ませた声は甘酸っぱいもの。いい反応に棚田は気を良くした。赤く染まるほどきつく吸うと、紗矢は目を閉じて脇腹を叩いてくる。
「ねえ」
「ここじゃ嫌なのか」
「電気ついたまま……だし」
「下を向いてれば平気だ」
「そっちはそうかも……しれないけどっ」
 ブラごと胸を鷲掴み、もちもちした感触を確かめていると紗矢は首を横にふった。
「私は恥ずかしいっ……」
「悪いけど、俺はそういう姿も見たい」
 棚田は椅子をひいてそこに紗矢を座らせた。恥ずかしげに両脚をすり寄せる姿に、全身をめぐる血が沸き立つように反応する。
 ブラの肩紐がずれ、柔らかい乳房がこぼれた。汚れを知らないようなその白さにぞくぞくする。
「今日はつけたままで良いよな」
「う、うん。良いよ……」
 紗矢の両膝をゆっくり広げ、そこに体を入れこむと膝立ちになって胸元に顔を寄せた。甘い匂いに誘われるまま舌を這わせ、バストトップにキスをする。
 紗矢は悩ましげに息を吐いて、棚田の首と肩に手を置くと喉をそらせた。
 カップをずらし、色づいてピンと立つ果実を舌でつつく。
「あ……」
 紗矢の一際高い声に、棚田は喉が腫れたように感じる程の興奮を得る。もう片方の果実も指でこね、交互に口内で味わうと紗矢の腰があやしく揺れた。
「その声もいいな。好きだ」
「い、今……好きとか言わないで……」
「何でだ?」
「……あ、頭ほんとにおかしくなりそう……」
 紗矢の返事に棚田は口の端を持ち上げる。
 そういう姿が見たいのだ。もっと夢中にさせてみたい。
 胸の果実をきゅう、とひっぱり、耳元に唇を寄せると紗矢は喉の奥からか細い声でないた。
「好きだ」
「やっ……!」
 棚田がささやくと同時に、紗矢は脚に力を込める。しなやかな脚に腰を締め付けられ、棚田はくつくつ笑うと「悪かった」と素直に謝る。
「も、もうからかわないでよっ」
「それは無理な相談だ。それに……ここ」
 棚田は指先で彼女の乳輪をくるくる撫でる。紗矢は腰を跳ねさせながら、視線をそこに落とす。
「こんなに膨らんでる。反応してるんだろ?」
「あ……」
 そこは色が濃くなり、まるで完熟したさくらんぼのようだ。棚田が舐めたせいでつやつやしている。
「エロいな」
「うぅ……っ」
 今にも泣き出しそうな顔で首を横にふる紗矢の、胸の果実を舌で包んで味わう。甘酸っぱい吐息と、震える体が彼女の性感を棚田に伝えた。
 その彼女の脚が、無意識に腰を撫でる。そろそろ下がかなりきつくなってきた。
「冷房入れて正解だった」
 そう独りごちていると、紗矢の手がふと浮いて、棚田の耳に触れた。熱になぞられるような感覚に思わず息が跳ねる。
「っ……!」
 棚田は思わぬ刺激に顔をあげた。紗矢のぼんやり赤い目と合い、彼女が息を吐くのがやけにはっきりと見える。
「……耳、好き……なんだ」
 紗矢は小さな声で、確信を得たことを言う。
「こっち来て……」
「ま、待った」
「どうして……? お互い、しよう」
 紗矢は口を開けたまま息をし、姿勢を正すと棚田の頭を抱えるようにした。甘い匂いに包まれる格好になり、棚田は耳元にかかる彼女の荒い息づかいに頭がぐらつくのを感じた。
「どっちが好き……?」
 重いくらいに熱っぽい声が右耳に注がれる。ついで熱く薄い舌で輪郭を丁寧になぞられ、棚田は脳がしびれるような官能を得た。片目をきつく閉じてその拘束から逃れようと試みる。
「待て、待てっ」
「嫌なの? 良くなかった?」
 じゅうう、と唾液ごと耳たぶを吸われる。溶けてしまいそうなほど気持ちが良い。だが主導権を握られるとは。そういう趣味はない。
「じゃあこっち?」
 紗矢は棚田の頬を撫で、唇でそろっと耳を擦った。ふうっ、と息がかかり、脇腹からぞくぞくと腰のモノへ、熱すぎるほど反応する。
「く……うっ」
 彼女の緩い拘束を押し返せないまま、その手首を取る。ちゅくちゅくと鼓膜にいやらしい水音が響いた。
 ぱっと紗矢の唇が離れ、したたる唾液が首筋に落ちる。
 そのタイミングでようやく彼女を引きはがす。まぶたの半分落ちたその顔は欲情で真っ赤になっていた。
 つやめいた唇が薄く開き、不安げな声が降ってくる。
「良くなかった……かな……」
 棚田はふーっと息を吐き出すと、彼女の腰から手を入れて抱きしめる。唇を重ねて舌を絡めると、ずくずくと腰が疼いて仕方がない。唇を解放すると間近で目を合わせる。
「良かった」
 そう言いながら、手を少しずつ前へ移動させる。
 つんとした乳首を撫で、胸の重みを味わって下腹部へ。
 意図を察した紗矢が脚を持ち上げ、それを体を縮めた。すがるように手が首に回され、きゅう、と力が込められる。
 棚田はショーツ越しに熱のこもる秘部に指先を埋めた。
「んん……!」
 たっぷり濡れたため、布越しでも指先がねっとりと濡れる。そのまま割れ目にそうと、紗矢はますます体を強ばらせて棚田にしがみつく。
「あ……んん……!」
 紗矢の吐いた息が胸元にかかった。それに産毛がざわざわ反応し、それをごまかすように彼女を抱く腕であやすように揺らす。
「もう少し力抜けよ」
「……無理……油断したら溶けそう」
「なら、一回イけばいい」
「……私だけ?」
「ああ」
 棚田は紗矢と唇を合わせ、触れるだけのキスをしながら手を移動させた。
 へそを撫でてショーツの上から中へ入れる。
 指先が赤い若芽に触れると、紗矢は体をびくりと震わせて息を飲み込んだ。
 熱く溶けたような秘部に指先を埋める。とろとろの果汁がまとわりついて、動きをなめらかにした。呼吸するように蠢く花ヒダに指が包まれ、下着の中のモノが想像のせいでまた重くなる。
「ふっ……うぅ」
 紗矢は小刻みに首を横にふっている。限界が近いようだ。
 棚田はうっすら目を開ける。ぼやけた視界の中で彼女の目尻に浮かぶ涙を見つめた。
 ああ、綺麗だな。
 そんなことをふと考え、ぽってりと腫れた唇を強く吸う。紗矢は腰を跳ねさせ、秘部に埋めた指をきつく締め付ける。
 熱い若芽が指でいじめられ膨らんでいく。
 舌を強く吸って、ショーツの中をぐちゅぐちゅにかき回すと、紗矢の体が棚田を打つように跳ねた。
「んん~……っ!」
 紗矢のくぐもった声が出たとともに、びくびくと花ヒダが震える。
 棚田は溢れそうになった彼女のものか、自分のものかわからない唾液を貪欲に飲み込む。
 押しだそうとしてかきつく締まる花ヒダの中に指を押し込め、やがて紗矢の体がぐったりしてくると中をまたかき回した。
 ぐちょぐちょと重いくらいの音がなった。
「……やだぁ」
「何が?」
「……私、はしたない……椅子汚しちゃう……」
 周りを気づかう余裕があるらしい。そういうところも彼女らしいと言えそうだが。
「そうだな……汚したくない?」
 紗矢は何度も頷いた。
「なら今綺麗にしてやる」
 棚田は指を引き抜いてそれを舐めとると、その場にしゃがみこんだ。
 紗矢が手を伸ばしたが、のそのそとしている。
 その隙にショーツをずらし、果汁を溢れさせる赤く染まったそこに口をつけた。
「……っ!」
 紗矢の太ももが閉じようとするのを手で押さえる。紗矢は髪を掴んで止めようとしてきた。
「だめ……!」
「じっとしてろ」
「や……!」
 ねっとりした果汁をずるずる吸うと、奥からまた溢れてくる。酸っぱいものが喉の奥に流れ込み、食道を通る感覚になんとも言えない満足感があった。
 棚田は舌を伸ばして穴をぐるりと舐めた。紗矢は声にならない声をあげ、再びきつくそこを締める。
「あっ……また……!」
 そんな声が聞こえたと思ったら、どろっと果汁が溢れて花ヒダが収縮した。彼女の体がびくびく震え、絶頂を迎えたと知るや口を離して彼女を見る。
 力をなくしただらしない脚の向こうに、目元は涙をたっぷり湛え、頬は薔薇のように赤い表情が見える。
 とぷっとまた果汁をたらす花ヒダ、その奥の鮮やかな赤が見えた。棚田のモノをきっちりと包んでしまう赤が。
 紗矢のあられもない姿に鳩尾あたりからぐわぐわと言いようのない感情がわいてくる。
 早く彼女を自分のものにしなければ。
 焦りに似た欲情に突き動かされ、棚田は立ち上がるとベルトを緩めようと手をかけ――細長く、震える指に触れられてその手を止める。
「い、今挿れないで……」
「待てない」
「少し待って……中重いの。だから、あの……」
 紗矢は留めるのではなく、ベルトを緩めてきた。ジーンズのジッパーが器用に下ろされる。
 彼女は目元を赤くしながら、緊張した面持ちで見上げてくる。細い指先が下着越しに剛直するモノに触れ、手のひらが全体をやわやわと包む。
 棚田は喉を震わせながら息を吐いた。
「したことないから……下手だと思うけど」
 紗矢は椅子から降りてその場に両膝をつく。下着が下ろされ、冷気がモノに直接触れるがそれでも熱は逃げない。
 むしろきついくらいに熱くなってきた。
 紗矢は下唇を噛んで、目元を赤くしながらそれを見つめている。鈴口からは我慢汁が溢れ、てらてらとしていた。
「……無理しなくていい」
「大丈夫……でもどうして欲しいか言ってね」
 赤黒く、どくどくと脈打つ太いそれが、紗矢の白く細い指でそろそろと撫でられる。
 ビーン、と熱が走るような感覚に棚田は息を飲み、ぐっと唇を噛む。
 紗矢は黒くなった血管の走る竿を手で握って、エラから根元までゆっくり上下した。官能を促すような、刺激的なマッサージだ。棚田は息を乱して目を開けた。
 上目遣いに様子をうかがう彼女と目が合う。
「……気持ちいい?」
 ぱちぱちとまばたきする彼女の目は潤んで、薔薇色の頬、充血してぽってりと色づく唇に目が釘付けになった。
 白いデコルテの先にささやかな谷間が見える。
 度数のきつい酒に飲まれた気分だ、頭がくらくらしてどうしようもない。
 このまま彼女を何とか自分のもので染めぬいてしまいたい。
「棚田さん」
 名を呼ばれ、棚田はぐっとブレーキを踏む。不安げに眉を寄せる彼女に頷いてみせた。
「ああ、いいよ……」
「良かった……」
 そう言って、棚田の出したものでぬるついた手を器用に動かし、紗矢は顔を近づける。開いた唇からふっと息がかかり、びくりとモノが震えた。
「く……っ」
 まずいぞ、と棚田は思った。
 紗矢は受け身なだけの女じゃないようだ。ご奉仕どころか主導権を握られかねない。
 紗矢の柔らかく、なめらかな舌がアイスキャンディを味わうように先端をぺろっと舐めた。
 じわじわと高まっていた熱が宥められ、それと同時に重い快楽がまた溜まる。紗矢は時折棚田を見上げ、息を荒くして鈴口を舌でなぞる。
「どこ……したら気持ちいい?」
 紗矢は姿勢を崩し、気だるげに腰をそらせた。
 モノを、横笛をふくようにして唇を滑らせている。
「……裏筋……ああ、そこ……」
 紗矢は言うとおりに舐め、垂れた唾液か我慢汁かを辿って、筋ごとちゅう、と吸った。
 つたないながらも丁寧な愛撫だ。
 棚田はきつく目を閉じて息を吐き出し、紗矢の顎を持ち上げてやめさせる。戸惑うような目が棚田をまっすぐに見つめた。
「もういい」
「……ダメだった?」
「いや……イかされそうだった」
「イっていいのに」
「もったいないだろ。……イクなら中がいい」
 その場に座り、目を丸くして首まで赤くする彼女の腰を抱いた。
 棚田はその手首を取ると顔を近づけ、濡れていた唇の端を舐めとる。そのまま唇を重ね、口内に舌を進入させると隅々まで味わい口を離す。
「……残念だな」
 そう小声で言うと、紗矢はえっと言って目を大きく見開いた。
「な、何が?」
「……紗矢の最初で最後の男になりたかった。元彼が羨ましいよ」
 上書きしたい、と言いながら指で彼女の胸の谷間からへそ、下腹部までを辿る。紗矢は指を追いかけるように見ていたが、視線を持ち上げて会わせてくる。
「……過去の人はもうどうでもいいし」
 紗矢は横を向くと唇をとがらせ、つんと顎を持ち上げる。耳まで赤くなっているのがよく見えた。
 さらさらした髪を手にとって口づけると、紗矢は視線を戻して言った。
「棚田さんのわがまま」
「悪かったな。俺は嫉妬深いんだ」
「上書きとかしなくても、女性には月のものがありますからお腹は綺麗になるんですぅ。あとこういう時に別の人のこと言われると、頭に浮かんでくるから嫌だな」
「今は俺のことだけ考えたい?」
 棚田がふっと笑って言えば、紗矢はむっと眉を寄せた。
「……そうって言ったら?」
「嬉しいよ」
 棚田は膝の上に紗矢を座らせ、脚を撫でた。目を合わせると紗矢は唇を尖らせたものの、目尻を下げて甘えるような表情を見せた。
「棚田さんって、素直なのかそうじゃないのか……」
「それは紗矢もだろ。ほら、キスしよう」
 棚田が紗矢の頬を撫でると、紗矢は目を閉じてキスを受け入れた。弾力のある唇の感触を楽しみ、舌を誘い出すと絡め合う。
 紗矢の手が肩から首筋へ伸びた。髪が撫でられ、生え際がちりちりと官能を訴える。
 紗矢の背中に手を回して抱きかかえ、膝立ちにさせるとコンドームの封を切る。彼女が見おろす格好で肩に手を置き、棚田の額やまぶたにキスを落とした。
「可愛いことをする」
 そう言うと、紗矢は目を閉じたまま微笑んだ。
「耳にもしていい?」
 いたずらっぽくそう言う彼女の腰を掴み、耳元に唇を寄せると囁きかける。
「理性を忘れて良いなら」
「ひゃっ」
 紗矢は赤くなった耳を手で隠し、棚田の腕の中で距離を取る。
 棚田はにやりと笑って再び紗矢を引き寄せた。
「で? 中は、もう大丈夫なのか?」
「あ、うん、そうね。大丈夫……」
 頷く彼女のお尻に手を回し、ショーツのクロッチ部分をねじって指を進める。
 ぬちゅぬちゅと水音が鳴り、紗矢は目を閉じると首を横にふった。
「はぁ……あっ」
 花ヒダの奥、果汁を溢れさせる穴はしっかりと濡れて、柔らかく誘うように蠢いている。
 入り口あたりをいじると気持ちいいのか、紗矢は腰をくねらせて口元を手で隠した。
 指を1本から2本、彼女の中は飲み込んでゆく。指を広げて中をぐるぐるかき回せば、熱い内壁は柔軟に広がってゆく。
「入りそうだな」
「……ゆっくりしてね」
「けっこう、広がってるけど……不安なのか?」
「不安っていうか……なんか棚田さんの……中でしっくり来るからすぐイキそうになる」
「……」
 つまり良いってことか?
 そう言いたくなったのをこらえ、棚田は代わりに息を吐き出すと紗矢のお尻を掴んでゆっくり下ろさせた。
 薄い膜で覆われたモノの先端が、熱い彼女の花ヒダに触れる。果汁でしっかり濡らそうと秘部全体を擦ると、紗矢は肩を強ばらせて息を飲んだ。
「力抜けよ」
「わ、わかった」
 紗矢は目を開けると棚田の肩に縋りつく。目尻にうっすら涙が浮かんでいた。
 棚田はそれを唇で拭い、モノの先端をぐっと花ヒダで隠されていた穴に押しつけた。
 熱い。
 ぐぷぷっ、と音をたててモノが紗矢の中に突き立てられていく。紗矢が喉の奥から引き絞るような声でないた。
 そのまま紗矢の体を自身に引き寄せ、ぐっと腰を落とさせる。
 じゅくじゅくしたイチジクのような中は棚田のモノに群がるようにさざ波を打ち、エラのはった部分に舐めるように絡んでくる。
「あぁ、すごいな……っ」
 思わず声が出て、紗矢の背中を抱く手に力が入った。
 紗矢が逃げるように腰をひいたが、今逃がせるはずもない。彼女の後頭部に手をやって、はあはあと息する唇を唇で塞いだ。
 ずずっ、と果汁を引きずりながら中を進む。
「ん~……っ!」
 紗矢が声にならない声をあげている。棚田が更に腰を落とさせると腕の中で全身を震わせ、唇が離れると「あぁっ!」と耐えきれずに嬌声をあげた。
 彼女の言ったように、モノは奥まで寸分の違いもなくしっくりと合う。
 内壁は先端どころか、竿も根元までも舐めるように、やわやわと締め付けるように包み、モノの脈動すらも貪欲に受け入れている。
「……あっ……」
 紗矢の腰を解放すると、彼女は背中をそらせて左手を彷徨わせた。
 胸元までうっすら赤く、汗をかいた体は手のひらに吸い付くようだ。左手を迎えに行き、指を絡めて握ると紗矢は口で息をしながら目を見てきた。
「……あぁ……熱いっ……」
 紗矢はそう呟くと繋がった部分を見つめる。体がわずかに動いただけでぬちっ、と音がなった。
「すごい……」
 紗矢の涙混じりの目がじっとそこを見ている。棚田は彼女の視線に焼かれてしまいそうなほどの刺激を感じた。
 腰をゆるくふると、紗矢は肩をぴくんと震わせて、落ちないように棚田の肩に右手を回す。
「あっあっ……」
「その顔も良いな……他のやつには言えないけど……」
「も、もうそれ、いいよ……」
「もういい? まだあるのに……」
 棚田は紗矢の腰を抱いて、ゆったりと腰を回す。紗矢はわずかな振動に促されるように甘酸っぱい声を出した。
「んんっ……! う……棚田さんの……硬い……」
「きつい? それとも褒めてるのか?」
「え? わかんな……いっ!」
 ぐいっ、と奥にねじ込むようにすると、紗矢は喉をそらせて声を乱した。
 色づく胸の頂きが目に入り、思うままに舌を這わせると紗矢の中がきゅうっと反応した。締め付けられる快感につい力が入る。彼女を抱きよせ、胸板でつぶれる乳房を鷲掴みにした。
「んうぅ~っ! ちょっと、待って……!」
 手を伸ばして距離を取ろうとする紗矢の乳房を好きに揉んで、きゅっと硬くなった乳首を弾く。紗矢は「あっ!」と鼻にかかった声を出した。
「名前……呼んでみろ」
 腹の底からぐるぐるとエネルギーが沸き立つようなのを感じながら、そう声をかける。
「しゅ、しゅういち……っ」
「もう一回……」
「んぐ……うっ、柊一っ……!」
 揺さぶられながら必死に自身にしがみつく紗矢が、目元をぼうっとさせながら名を呼んだ。
 つながった部分からぐちゅぐちゅなって、出し入れする度にとろとろした熱い果汁が流れてくる。
 お陰で出し入れがしやすい。奥まで押し込むと紗矢の体が跳ねるように反応した。
「あぁっ……! 柊一……!」
 名を呼ばれるたびモノがぐんぐん反応する。きついくらいに漲って、内壁に擦れるたびに火花が散るような性感を得た。
 紗矢が目を閉じた瞬間、目尻に溜まっていた涙がこぼれる。唇からは熱い息と上擦った声が漏れていた。
 棚田は彼女の胸を揉みしだき、ぷにぷにしている乳輪ごと口に含んできつく吸う。紗矢の中がきつく締まり、かと思うと奥が柔軟に広がった。
「っ……もっと中、入りそうだな……」
 ずぷっ、と大きな音がなって、棚田のモノが深く飲み込まれる。紗矢の腰を掴んでがんがん突き上げると、紗矢が手のひらで胸を叩いてきた。
「え? だめっ……あっ……もっとゆっくりっ……」
「無理だ……こっちがイかされるっ……!」
 もったりと絡みつく内壁がどんどん熱く、ぎゅうぎゅうに締め付けてくる。奥が誘うように広がって、入り口がきつく締まった。
 紗矢が首筋に抱きついてきて、息を荒げながら喘いだ。
「あうぅ……っんん……! もうイク……いっちゃう……!」
「もう少し我慢してくれ」
「やだ……あっ!」
 首を横にふる紗矢に構わずに棚田は背を床につけた。彼女に跨がられる格好になり、手触りの良い尻が腿に乗ってくる。
 戸惑うような顔をした紗矢が、胸に手をついて見おろしてくる。彼女の奥にまっすぐに剛直があたり、中のざらついた部分に先端が擦れると背筋まで震えるような快楽が走る。
「ああ……すごいっ、そのまま、俺のこと見てろよ」
「えっ……あっあ……!」
 紗矢の腰を掴んで自身の下腹部に押しつけるようにすると、その細い腰が波打つように揺れた。胸が振動に合わせて揺れ、誘っているみたいだ。
「やだぁ……恥ずかしい……っ!」
「マジかよ……そんな腰ふってるくせに」
「意地悪……!」
 紗矢は声がかすめさせ、両手を胸の前で組む。
 棚田は彼女の腰を両手で掴んで、パンパンと腰をぶつける。
 紗矢が浅く呼吸をし始めた。もう絶頂が近いのだろう。棚田はぐらつく視界の中、喉が火傷したように感じるほどの興奮をそのまま彼女に伝える。
 小刻みに力強く、奥から離れないように体全体で揺さぶって、ぐりぐりっ、と中を穿つようにすると紗矢が背中をそらせて一際高くないた。
「ああぁっ!」
 びくびくと締め付けてくる内壁の動きに合わせ、棚田もぱっとブレーキを離す。
 モノがぐぐぐっ、と張り詰め、欲望に任せ勢いづく。熱いぬるついた体液が薄いコンドームの中でびゅるびゅるっと噴き出した。
「くぅ……っ!」
 ぎりぎりっと奥歯がきしみ、体が跳ねるに任せると、まだ震えのおさまらない紗矢の体を跳ねさせた。
「あっ……出て、る……っ」
 紗矢がそう呟いて、体を前のめりに倒した。
 一滴残らず出し切ると、口を開いて息を吐き出すと、片腕をついて上体を起こし、ぐったりとした彼女を抱きよせる。
 汗でぴったりと肌が張り付き、まだわずかに震える彼女の肩口に歯をたてた。
「あっ……やん……っ」
「もうしばらくこのまま……っ」
 腰を引こうとした紗矢を抱きしめ、鎖骨にも歯を立てる。舌で噛んだあとをなめ回し、唾液を吸うと紗矢は「はぁっ」と掠れた声で喘いだ。
 口を離して紗矢の顔を覗き込むと、頬も目元も真っ赤に染まり、とろんとした目で見つめ返してくる。
 半開きになった口元を棚田が親指でなぞると、紗矢はそれを咥えて棚田と同じように緩く歯を立てる。
「……その顔もいい」
 棚田が肩で息をしながらそう言うと、ちゅう、と紗矢はその指を吸った。

 息を整え、ようやく頭もしっかりしてくると、紗矢が自分の胸元を見ながら困ったように眉をひそめた。
「どうした?」
 棚田がそう訊くと、紗矢は顔をあげて首をふる。
「服に困る……」
 紗矢が指さしたのは赤い吸いあと。首元にもあって、夏の服で隠せるかどうか。
 棚田は無意識にか、思ったよりも多くつけてしまっていた。うっすらとだが、歯形もある。
 参ったな、と棚田は首を撫でた。
「スカーフでも巻いとく……」
「悪かった。夢中になって……」
「い、いい。説明しなくていい。恥ずかしくなるから……」
「恥ずかしい? 自分の格好見てみろよ。よっぽど恥ずかしいことになってる」
 棚田がそう指摘すると、紗矢は更に自身を見おろした。カップのずれたブラからは乳房がこぼれ、下着はクロッチがめくれて秘部が露出している。ぬめぬめと透明な果汁が太ももまで濡らしていた。
「……シャワー浴びてくる」
「一緒に浴びるか。きみの手が届かない所まで洗ってやるよ」
「いい! 要らない!」
 棚田のからかいに紗矢は顔を真っ赤にして断った。浴室に足早に駆け込み、リビングに顔だけ出すと半眼で睨んでくる。
「すけべ」
 そう言って浴室に立てこもる紗矢の姿に、棚田は頬を緩めて笑った。
 入れ違いにシャワーを浴びて、一人がけのソファに座ると紗矢が近づいてきた。
 紗矢は棚田の膝の上に脚を揃えて座る。
 甘えるように胸元に頭をすり寄せ、手で彼の体を抱くようにしている。
 同じシャンプーを使ったはずなのに、香りが違う。どこか甘やかな香りのする髪を撫でると、紗矢が見上げてきた。
「……ずっとこのままでいられたらいいのに」
 そう呟いた声はどこか寂しげで、棚田が不思議に思って彼女を見つめると、紗矢は緩く首をふって微笑んだ。
「なんでもない」
 紗矢は両腕を棚田の背に回し、ぎゅっと抱きしめると目を閉じた。

***

 棚田の寝顔が見える。
 普段は前髪にごまかされている目の強さはなりをひそめ、じっと見ていると不思議なほど穏やかな寝顔だった。
 紗矢は触れないままに、彼の顔を指先でふちどる。男性的で、年相応の顔立ち。
 紗矢に好みのタイプは存在しないが、もしあったら棚田はそうなのだろうか。
 誘われたから気になったのだろうか。
 それとも人として良いなと思っているからだろうか。
 自分の気持ちがまるで分からないまま、女性としての本能ははっきりと彼を受け入れている。
 他の誰かでは無理だろう。浜野の告白を受けてそれを知った。
 それだけは紗矢の中に確かに存在する感覚だった。
 受け入れたいのは彼だ。
 ところがそれも、いつかまた沈んでいってしまう感覚なのだろう。
 以前のように受け入れられなくなる。
 なぜこのままでいられないのだろう。
 女性としての本能のままでいられたら、棚田のことをもっと好きになれる気がするのに。
 そう思った瞬間に視界がぼやけ、熱くなった目をごまかそうとまぶたを閉じる。
 その時、棚田の手が肩を抱いてきた。
 どきりとして顔を見れば、薄く唇が開いてかなり無防備に眠っているようだ。
「……」
 紗矢は自分のとは違う、大きな、節だってごつごつした手に自身の手を重ねる。
 そうしていると、同じくらいの体温が溶け合っていくような心地よさに、意識が飲み込まれていった。

 

次の話へ→「黒豹とかたつむり」第12話 織姫と秘密

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