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小説 黒豹とかたつむり

「黒豹とかたつむり」第8話 小さな影 後編*官能シーンあり

 足下をぽっと照らす照明だけのおかげで、紗矢はベッドの上でもリラックス出来た。
 自分の裸にはそれほど自信がない。
 下着もすでに脱いだ状態で、棚田は手で体のラインを確かめるように撫でている。
 性感とは違って、マッサージに近い心地よさだ。
「なぁに、労ってくれてるの?」
「それもあるかな。そうだな……きみの肌の手触りが好きだ」
 棚田はそっと太ももを撫でる。それからお尻に手を滑らせ、むにむにする柔らかさを楽しみ始めた。
「女性のお尻と胸とどっちが好き?」
 紗矢がそう訊くと、棚田はうーん、と唸った。
「触ってて良いのは尻」
「そうなんだ?」
「柔らかいのが面白い。胸は……そうだな、触ってるとそっちの表情が変わる。それが好きだな」
「性感帯だもの」
「だろうな。小さいけど」
 棚田の指摘に紗矢はむっと口を尖らせた。
 しかし棚田はそれに対して笑みを見せる。紗矢の頬を緩く掴み、尖った口にキスをする。
「そんなに小さくないし」
「俺の手が余るんだ」
「知らない」
 紗矢がむくれて背中を見せると、棚田はふっと笑って背中から抱きしめた。
「大きくしてやろうか?」
 棚田は紗矢の肩に軽いキスを落としながらそんなことを囁いた。
 悪びれる様子もない。
 紗矢は怒ってはいないが、かといって簡単にゆるすのももったいない、と棚田の手を叩いた。
「いいもん。別に巨乳に憧れてないしね?」
「へえ。でも触られるのは好きだろ?」
「む……よく観察してらっしゃる」
「感じてる顔が好きだから」
「それって、すっごい恥ずかしい……棚田さんてスケベなのか理性的なのか分からないな……」
「両方だな」
 棚田は体を起こし、紗矢に覆い被さると額に口づけた。その手は油断なく大きくはない胸に伸びる。
「……おっぱい、大きい方が好き?」
 紗矢は迫る感覚に息を深くし、そう訊いた。
棚田は首を横にふる。
「それはどっちでも……言っただろ? 感じてる顔が好きだ」
 棚田は紗矢の体をベッドの真ん中に引き寄せ、両腕を枕の上に持ち上げた。
 脇も広がる無防備な格好に紗矢はぶるっと体を震わせる。棚田の手が腕から脇、デコルテをじっくり撫でた。谷間に息がかかり、腰が揺れる。
「今日は……そのまま休んでろ」
「マグロでいいってこと?」
「マグロって言い方も何だかな。そうだな……無理させたくない……これどう言い換えりゃいいんだ」
 棚田の正直な悩みに紗矢は吹き出した。
「言い方に困ってるの?」
「俺はどうも、冷たいらしい」
「中身はそうでもない」
 紗矢はそう言って頬を緩めると、棚田の胸元に手を当てた。
 鼓動が手に伝わる。
 棚田は困ったように、わずかに眉を寄せた。
「本当は優しい。でも、棚田さんが誤解されやすいままでいたら、焼き餅焼かなくて良いかも」
「……それも何だかな。コミュニケーションは難しいよ」
「じゃあ、素直になってよ。棚田さんの言葉で聞きたい」
「……わかった」
 紗矢の言葉に棚田は頷き、耳元に顔を寄せた。髪が首筋をかすめ、くすぐったさに肩を縮める。
「紗矢を大事にしたいから、今日はゆっくり抱かれてくれ」
 紗矢は破顔して微笑むと、棚田の首から手を回して、背中をぎゅっと抱きしめる。
 棚田が喉を鳴らして笑ったのが聞こえた。体がすっと離れ、腕を枕に放り出すと棚田の手が鎖骨あたりを撫でた。
 首筋に唇が触れ、かすめるように滑ってゆく。
 撫でるような触れ方に紗矢は緊張を解いて、まぶたを下ろした。
 温かい手が肋骨あたりを撫でる。胸の谷間から喉にかけて、舌先が登ってきた。思わず上擦った声が漏れ出る。
 枕を掴み、足をすり寄せた。
「暗いのがもったいないな……」
 棚田の独り言が聞こえ、目を開ける。
「私はこっちの方が落ち着く」
「それは俺もだ。ただ……もっと見ていたい」
「……じゃあ、ねえ、前髪あげて」
 紗矢は手を伸ばし、棚田の髪に触れる。硬く、黒々とした髪だ。前髪を後ろに流すと、まつげの向こうにきらめくような目が見える。
 こんな時なのに穏やかな色を宿す目が。
「見えやすくなった?」
「ああ……確かに」
 棚田は自身を持ち上げ、紗矢の額に口づけた。その手は緩慢に上半身を滑ってゆく。肩に指が触れ、紗矢はびくりと反応を見せた。
「肩出す服禁止だな」
「自分でもびっくり。ここ感じるところなんだ」
「その気になれば全身性感帯になるらしいぞ」
「そうなの? ……それ、生活大丈夫?」
 紗矢の疑問に棚田は目尻を下げて笑った。
「どうだろうな」
 棚田はそのまま紗矢のお尻を撫で、膝を立たせた。
 両脚で彼自身を挟む格好になり、紗矢は下腹部に集まる疼きをごまかせなくなってしまう。
 その恥ずかしさをごまかそうと横を向いて、息を吐き出すと自分の体を抱くように左手を胸元に置いた。
 肩を指先でくるくるいじられる。産毛が逆巻いて登ってくるような感覚だ、くすぐったいようなぞくぞくするような。
 紗矢はつま先を浮かせ、右手を彷徨わせて結局棚田の腰に置く。
 乳房のもっちりした柔らかさを、口できゅうっと吸われた。じんとした熱が生じたが、まだ緩い。
 焦らされているのだろうか。このままだと意識がふわふわ浮いて、眠ってしまいそうだ。
 棚田の体が徐々に遠のいていく。手は肩から胸の膨らみへ、鼻先は谷間に埋まり、そのままどんどん下腹部に至る。
 内ももを持ち上げられ、しっとりとはしているもののまだ濡れていない秘部ではなく足の付け根にキスが落ちる。
 くすぐったさに足が跳ねた。
 そのまま内もものくぼみを丹念に舐められると、確かな快楽にお腹の中が疼いた。
「う……っ」
 紗矢は腰を浮かせたが、棚田はそれをやすやすと押さえ込み、もう片方のくぼみも同じようになめた。熱く感じる舌が、ずるずると皮膚の薄い部分をせめてゆく。
 紗矢がきつく唇を噛むと、代わりに茂みに覆われた穴がついに果汁をしたたらせる。
 それがお尻に流れてゆく感触に紗矢は顔を熱くした。
「ん、うぅぅ」
「体、熱くなってきたな」
 棚田は紗矢の乳房に手を伸ばし、やわやわと揉んで内ももを舐めた。きつく吸われ、そこを舌先でなぞられる。
 お尻のあたりが冷たい。紗矢は息を逃がすように吐き出した。
 棚田が紗矢の体を引き寄せ、へそのすぐ下を吸った。
「そこはくすぐったい!」
「そんなにか? 素直な体だな。ここは?」
 棚田は恥骨のあたりを指で撫でる。滲むような性感があるくらいか。それでも腰が揺れた。
「それから、ここ」
 お尻と太ももの境界線。紗矢は足を強ばらせた。
「ここも」
 膝の内側にキスが落ちた。紗矢はまぶたを一瞬下ろすとわかった、と頷く。
「感じるっ……」
「いい返事だ。背中はどうだ?」
 棚田は紗矢の返事を待たずに体をひっくり返す。
 紗矢は背中を無防備にさらす体勢に、体を震わせた。
 すぐに棚田の体温と手のひらの感触が伝わり、ほっと息を吐くとついでやってくる感覚に思わず高い声をもらす。
 背筋を指先でなぞられたのだ。
「ん~んん……!」
 肩甲骨に彼の唇を感じる。じゅうっ、と音を立てて吸われると亀のように首を縮める。
「背中弱いな。前もそうだった」
「そうかも……っ」
 紗矢が体を横に向けると、棚田は脇から手を入れて胸をわしづかむ。うなじを舌先でせめられ、紗矢は喉の奥をひりひりさせて喘いだ。
「いい反応だな。顔が見えればもっと良い」
「そ、それは今は無理っ」
「今度鏡でも使うか」
「えーっ!?」
 棚田はわめく紗矢に体重をかけ、互いの腰をすり寄せる。ねっとりと濡れたお尻が、棚田の下腹部を濡らしただろう。くちゅっと音がした。
「あっ」
 つい体をくの字に曲げ、逃げてしまう。
 棚田は脚を伸ばして追いかけた。
「そのまま、もっと突き出せよ」
「もう濡れてるからっ」
「知ってる。生身で触れ合えるのは今だけだろ?だから、もっと」
 紗矢はぎゅっと目を閉じ、そろそろとお尻を元の位置に戻す。
 彼の言ったとおり、生身の秘部が、生身の彼のモノに触れた。火傷しそうなほどにそこが熱くなる。
 紗矢が体を震わせると、棚田はむき出しの首に舌を這わせた。
「あぅ……っ」
 脳がしびれそうになり、視界がぼやける。強い刺激がない分、ぼやぼやした感覚に溶けていきそうだ。
 脚の付け根でぬちゅぬちゅと互いの愛液が絡まる音がしている。内ももに粘り気の強いそれが流れ、棚田のモノが擦れる度に淫猥な音がなった。
 熱い若芽が早く触れて、と震え始める。
 紗矢は堪えるように自分の指を噛んだ。
 それを見た棚田が胸から手を離し、彼女の指を口から引き抜いた。
「何……?」
「俺のを噛んどけ」
「え……」
 棚田の人差し指が口内に滑り込んでくる。
 紗矢は自分のよりも大きく、固い指に驚いて体を強ばらせたが、歯列や下あごを撫でられてふっと力を抜いた。
 彼の手を取り、指の腹や関節に舌を絡める。その時棚田が熱い息を背中に吐いた。
 ちゅうっ、と背中にいくつも唇の感触が落ちてくる。舌の表面を指先でなぞられる。
 紗矢は今まで感じたことのない心地よさに、目尻を下げて微笑んだ。
 指が引き抜かれ、それを追って口づける。棚田の手を抱きしめた。
「こういうの……良いな。好き」
「ゆっくりされるのが?」
「うん……綿飴の中にいるみたい」
 紗矢の言葉に棚田は体を起こして何度も頷く。紗矢の肩を抱いて上向かせると目を覗き込んできた。
「可愛いな」
「まさか……」
 紗矢は笑ったが、棚田はまっすぐに見つめたままだ。顔が近づき、紗矢が目を閉じるとそのまま唇が触れあう。
 そっと唇を開くと、棚田の熱い舌が歯を舐めた。そのまま口の中をゆっくりと探られる。
 紗矢が仰向けになると、棚田は彼女の肩に手を回しつつより深く唇を重ねてきた。
 舌先が触れあい、ぬるぬると唾液を絡めて舌を吸う。棚田の腰が熱を帯びて、それを伝染させるかのように紗矢の体にこすりつける。
 唇が離れると吐いた息はずいぶん熱い。
「そろそろ挿れたい」
 棚田のささやきに紗矢は頷き、体が離れると胸を抱くように手を重ねる。
 棚からゴムを取り出した彼の背を見つめ、寒くないのに震える肩を撫でた。
 準備を終えた棚田がベッドに膝をつき、四つん這いになって紗矢に覆い被さる。
 紗矢は自ら足を開いた。
「楽にしててくれ」
「うん」
 紗矢は足の間に体を割り込ませる棚田の背中を抱いて、肩に感じる彼の堪えるような息づかいに耳を熱くした。
 はっきりと触れられたわけではないが、彼を求めて果汁を溢れさせるそこは柔らかく溶け、熱くいきり立つモノが触れると器用に口を開いた。
 ずるっ、とエラばった部分までが収まる。圧迫感と同時に目がチカチカ焼けるような熱さに紗矢は眉をきつく寄せた。
 ぎゅう、と棚田の肩を抱く手に力が入り、「痛いか?」と切羽詰まった声で訊かれ目を開ける。
「大丈夫……痛くない」
「本当か?」
「うん。熱いなーって……それだけ……」
 紗矢は息を吐き出すと、背中に枕を押しつけて上体を起こした。その時、中がモノで擦れてビーン、と快楽が走った。
「あっ……!」
 甘酸っぱい声が出て、口元を隠しながら棚田を見た。
 彼は一瞬目を丸くし、次にはほっとしたように頬を緩める。目には先ほどとは違う、獰猛な表情を浮かべて。
「そんな声が出るなら、本当に大丈夫らしい。さっきのは、ここか?」
「あっ、やっ……待って……」
 棚田が腰を掴んで、モノの先端を内壁に擦りつけた。じんじんと、全身がほどけそうな気持ちよさが徐々に広がってくる。棚田と繋がっている部分がきゅうきゅうに蠢いた。
「んん~っ!」
「ああ、いい声だな。ここが好きか?」
「知らなっ……あっ!」
 棚田の熱い息が胸元にかかったかと思うと、鋭い性感に腰が跳ねた。まだ柔らかかった乳首が舌で覆われ、あっという間に固くなったためだ。
「あっ……それ、だめ……!」
「感じてるんだろ?」
「だからっ! うぅっ……それすぐイっちゃう……!」
 胸で生じた快感がすぐに腰に運ばれる。中ではずりずりと弱い部分を擦られ、頭が重くなってきた。
 紗矢が喉を仰け反らせて枕をきつく握りしめると、棚田は息を荒げながら首筋に顔を埋め、こりこりになった乳首を指でいじる。
「本当にもうイクってば……!」
「ああ」
 棚田の腕を掴み、きつく目を閉じる。ぎりぎりまで留まっていた快楽の熱が、ずるずると擦られて引き出される。
 ずくん、と腰が重くなり、つま先に力が入ると棚田に足を抱えられてて、ぐっ……と内壁を擦られた。しびれるような感覚に体を跳ね起こす。
「あぁっ!」
 紗矢の体の中で熱が弾け、そのまま全身に快楽が突き抜ける。体が言うことを聞かずに何度も跳ねた。
 枕に背中が沈みこむと、棚田が髪を撫でながら口づけてくる。
 紗矢は体を小刻みに震わせながらそれを受け止め、膝を立てた。
 唇が離れ、紗矢は気だるい体をそのままに棚田を見つめる。
 中は重いクリームにでもなったかのよう、彼のモノにじっとりまとわりつき、きつく締め付けている。そのため熱くて固いモノが更に質量を増しているのが分かってしまった。
「今やめなくて良いから……」
「辛くないのか?」
「大丈夫……」
 紗矢は棚田の背に手を回した。密着させるように腰をすり寄せ、体を預けるようにかぶさる棚田を全身で抱きしめる。
「これじゃ甘やかされてるみたいだ」
「こういうの嫌?」
「嫌じゃないけど……慣れてない」
 棚田の戸惑ったような様子に紗矢は目を細めた。お互いに慣れていないことがあるのだ、と知ると安心感が出てくる。
 誘うわけではなく、じゃれるように、足を持ち上げて彼の腰に撫でつける。
 棚田も口元に笑みを浮かべ、上体を起こした。
 ふっと和らいだ気配がし、棚田に足を持ち上げられても紗矢は恥ずかしさを感じなかった。
 膝を抱えるように彼の腕が入り、繋がった部分が天井を向く格好になる。
 重い中はなめらかに蠢いて、棚田のモノが進んできても抵抗を見せない。壁をよじ登ってくる度にジリジリと新たな火種が紗矢の体に生じた。
「はっ……」
 上擦った声を出し、紗矢は手で口元を隠した。
「力、抜けるか」
「ん……」
 棚田が苦しげに表情を歪めている。
「早く来て」
「欲しい?」
「うん。奥まで……」
 紗矢は繋がっているところに手を沿わせ、指を開いて彼のモノを挟んだ。どろっとした自身の愛液で指が濡れ、そのまま花ヒダを開く。
 ずぷぷっ、と果汁が溢れ出て、モノが入り込んでくる。
 重みのある肉塊が中の壁をぐりぐり擦りながら奥まで到達する。
 紗矢は自身の震える肩を抱いた。
 挿入されて、こんな風に感じたことはない。奥までぴったりとハマって、じんわり溶けそうな熱さも自分の中と同じくらいだ。
 細かな電流が体の中心から全身に広がってゆくようで、息をするだけでも気持ちが良い。
 棚田が深く息を吐き出した。
「……ああ、良いな。ぴったりだ」
「棚田さんもそう思う……?」
「ああ……」
 棚田は確かめるように腰を揺らし、その度に奥に触れ火花が散るような快楽に息が弾む。
「イクのがもったいないくらいだ」
 棚田はゆったりと笑みを浮かべた。それを見た紗矢も、感じたことのない満足感に笑みを浮かべる。
「奥すごい……こんなに感じてる」
「好きか?」
「好き……」
「参ったな……紗矢はずいぶん、感じやすい」
「誤解しないで。その……尻軽じゃないから」
 紗矢がそう言うと、棚田はしっかりと頷く。
「そう思ったことはない」
「……それは良かった」
 目が合うと唇を開き、舌を出す。
 棚田はそれを吸って、紗矢の肩に手を置いた。ずずっ、と全身で舐めるように擦りつける。
 紗矢は中からどろどろに溶けそうなほどの熱さを感じ、肌に薄い幕のような汗をかいた。口を開いて息をし、すがりつくように棚田を抱きしめる。
「溶けそうだな……」
「こんなに固いのに?」
 呟いた棚田にそう返せば、彼は顎をしゃくって紗矢を見おろした。
「油断ならねえな」
 そう言って笑みを浮かべる彼の頬に手をやれば、汗で吸い付くようだった。瞳がぼんやりと広がっている。
 紗矢は顔を近づけ、唇を触れあわせた。しっとりとした温もりが伝わる。
 棚田が抱き合う格好のままベッドに体重を預け、ぐぐっと腰をしずめてはずるずると引いた。
 さざ波のように繰り返すうち、中からずぷずぷと果汁が引きずり出される。
「う……んん」
 じわじわと弱い炎で快楽を焼き付けられているようだ。紗矢はひりつく喉の奥から息をし、目尻に涙を溜めるとつま先に力を込める。奥がずんずん刺激され、その度に腰が揺れた。
「あっ……うぅっ」
 紗矢が背中をそらせると、弾力のある乳房が持ち上がる。ぴんと尖った頂きが棚田の肌に擦れてしまう。紗矢は一際高い声で喘いだ。
「んんぅう……!」
「中、うねってる……そんなに俺のを絞り上げたいか?」
「変なこと……言わないで……っ」
 言い返すと棚田はふっと笑うが、息が荒くなって鼓動も強くうっていた。
 ぐいぐい打ち付けてくるモノが中で存在感を増している。紗矢は棚田を抱きしめる手に力を込めた。
 そうでもしないと体が熱くて溶けそうだ。
「う~……っ!」
 声を押し殺して唸るようにすれば、棚田の手が頭を撫でた。そのまま抱え込まれ、紗矢は自然と彼の肩口に顔を埋める。
「もうすぐ終わらせるから、耐えてろ」
「う、ん……!」
 紗矢はまぶたをぎゅっと閉じ、息苦しさに耐えかねて口を開いた。
 荒い息づかいが重なって聞こえてくる。
 熱く硬い肉塊が激しく出入りする。
 全身に膜が張ったような、異空間に迷い込んだような心地だ。紗矢は「熱い、熱い」とうわごとのように小声で繰り返し、体を震わせた。
 ふと耳に熱い息がかかり、目を開くと棚田の苦しげな表情がぼんやり見えた。
「そろそろ出そうだ……」
「出る……?」
「ああ……先イクか?」
「一緒がいい……んうっ……」
 ごりっ、と内壁を擦られ、ビーンと脚に電流が走る。紗矢は胸元を押さえて息をした。
 棚田が顔を近づけ、耳に噛みつくとしっかりと体を抱きしめてくる。
 脚が広がり、与えられる熱の逃げ場がない。
「あっ……あぁっ」
「外の方が良いか?」
「ううんっ、中……っ、中でイって……!」
 紗矢が棚田の体にきつく抱きつくと、彼は紗矢の脚を掴んでガツガツと腰をぶつける。中でモノがビクビク破裂しそうに震え、紗矢の中で無遠慮に暴れ出した。
 じわあっ、と何かが溢れてくる。
 それを感じた瞬間、全身がカーッと熱くなり、ビクビクっと中がきつく震えたあとに、全身にもそれが広がった。
 紗矢が腰を引こうとした時、棚田がそれを押さえた。ぐっと腰を引きつけられ、逃げ場もなく体は密着する。
 どろどろになった中で互いの熱がぐんぐん高まり、一気に弾けた。
「うぅっ……!」
「く、あっ……!」
 たまらず出た声がキーンとする鼓膜にざわざわ響く。
 中で熱いものがびゅっと飛び出るのを感じ、本能なのか花ヒダがきつく締まろうとする。紗矢はそのたびにつり上げられた魚のように体を跳ねさせた。
 うっすらと目を開けると、涙混じりの視界の中で瞳を黒々と輝かせる棚田の目とぶつかる。
 紗矢が手を伸ばして求めると、棚田は息を吸い込んで口づけを落とした。

 

次の話へ→「黒豹とかたつむり」第9話 疑い

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