りんごの花 小説

「りんごの花」第17話 心まで重ねて *官能シーンあり

 ――さっきから聞いてりゃ
 言いたい放題 やりたい放題
 それって全部 他人のせいにしてんだろ
 本音でぶつかる覚悟もないくせに
 他人の言葉借りてイキがんじゃねえよ
 そろそろ我慢の限界なんだ
 いい加減本気出してぶつかってみろよ
 そんな調子じゃお前 お前の人生なんて手に入らない
 そんな調子で生きていこう なんて甘ったれたこと言うんじゃねえ
 お前がその気になるなら いくらでも相手してやるよ――

 飯塚達の出番がやってきて、ステージの空気を一変させる。
 ロックなナンバーは客席を驚かせ、人々の気分を高めていった。
 舞台袖でそれを見ていた律は、どこか夢でも見ているような、ふわふわした気分を味わっていた。
「すごいなー、盛り上がってきた」
 圭が隣でステージを覗き、感心したように言った。
「りっちゃん、知り合いなんだって?」
「……うん。譲くんとは、知り合い」
「そっか。で、一緒に向こうに……」
「帰るつもり」
 そう言い切ると、現実に感覚が戻ってくる。
「もちろんやることはやってから。でも今度は私が譲くんを捕まえに行かないとね」
 そう言うと、圭が笑って頷いた。
「なら良いよ。りっちゃん、頑張りすぎないで、頑張れ」
「……うん。ありがとう、圭ちゃん。純といつまでも幸せでいてね」
「そのつもり。大丈夫、俺ら、会えない距離じゃないし。なんかあったらまた呼べよ?」
 圭が人好きのする笑顔を浮かべる。
 律は太田や「お西さん」や、美穂に、と向こうで出逢った人達の顔を思い出す。今更ながら決して一人ではなかったと気づき、それを受け入れられるほど大人になれたと思う。
 佐竹との日々も、飯塚との日々も、どの瞬間もが今の律に繋がっている。
 ステージに目をやると、飯塚が律を見つめて意味ありげに笑みを浮かべた。
 マイクを手に持つと話し始める。
「えー、このたびは街おこしのためのフェスにお呼び下さり、ありがとうございます!」
 拍手が起きた。
 飯塚はメンバーを一人一人紹介、再生回数の最も多いナンバーを演奏し始める。
 歓声が起きる中、飯塚は「岐阜最高ー!」と叫んだ。

***

 夜の9時にライブは終了、クロヒョウはこの日限りの限定イベントのため、翌日には岐阜を離れる。
 伊藤はユーチューブにあげるため、スタッフからカメラを受け取ると早速確認しているが、棚田に襟元を掴まれ、車に乗せられる。
 向かうはホテルだ。
 腰痛から回復した婦人会の女性、圭とがそれに同行。
 律はタクシーチケットを片手に、タクシー乗り場に向かう。
 一緒にいるのは飯塚だ。
 彼はメンバーと別れ、律と行動を共にした。
 気分が高揚しているのか、体温があがっているのか、彼は肌寒い中にも関わらずジャケットを脱いでいた。
 途中撮影や握手を求められ、その都度対応する彼に付き合い、律はスマホを構える。
 皆嬉しそうだった。
「やりがいあったな」
「あった?」
「ああ。バーとかと違って、ロックなのもやっていいわけじゃん。ユーチューブとも違って生の反応見れるから楽しかった」
「なら良かった。盛り上げてくれてありがとう」
 飯塚が目を和らげて笑う。
 律はそれに今更胸をくすぐられた感じがして、思わず視線を逸らした。
「譲くん……なんか知らない人みたい」
「え? 俺?」
「うん。一人で先に大人になって、ずるい」
 飯塚は目を丸くし、律の頭に手を置いた。
「律は甘えるのが上手くなったな」
「そう?」
「おう。すげえ可愛い。俺以外の男にそういうとこ見せんなよ」
 律は顔をあげる。飯塚は律の髪をぐしゃぐしゃにかき回した。
「そうね、譲くんが私を夢中にさせてくれるなら、そうする」
「言うねぇ、努力しますよ」
 肩を寄せて歩き、タクシーに乗ると律はクロヒョウが泊まるホテルも近い駅前を指定する。
「なんで?」
 と、飯塚が眉を寄せた。
 律はシートに座り直す。
「最寄り駅だから」
「ホテルのだろ? 律の家に行くんじゃ?」
「そうよ」
 律がそう答えれば、飯塚は目を丸くして律を見つめた。
「小山内さんは……」
「遠回りしたの。私の家が譲くんにばれないようにって。ナンパ防止ね」
「……なるほどね」
 飯塚は頷くと不満気に腕を組む。
「俺疑われてたのか……そりゃそうか」
「ごめんね、わけを話す間が掴めなかったの」
「いいよ。ロミオ気分でも味わうから」
「あら、私ロミオはいや」
「そうなの? なんで?」
「だってすれ違いで不幸になったわ。ジュリエットもちゃんと話しておければ良かったのに」
「……タイミングがねぇ」
「そうね。合わなかったのね」
 そう言うと律は飯塚の手に自分の手を重ねる。
 飯塚がそれを握り返した。
「焦ると良くないよな。俺そういうクセあるから、またバカやるかも」
「それを一緒に楽しめばいいの」
 タクシーが到着する。
 飯塚と律は二人で白い外壁のアパートに入り、階段を昇り、部屋の鍵を差し込む。
 ギイ、とドアが開いて、飯塚が律を背中から抱きしめる。
 ドアが締まり、飯塚が鍵を締めた。

***

 清潔感のある部屋に漂うせっけんの香り。
 飯塚の匂いが異質に浮いて、その存在感を見せつけた。
 汗と体臭が混ざった男性の匂いを、この部屋は始めて迎え入れる。
 オフホワイトの壁紙が飯塚に染められるように色を濃くしていったように律には見えた。
 靴を脱がないまま抱き合い、口づけようとし――「消毒した方がいい?」の一言で我に帰る。
「そうよね」
「てか、俺汗臭くない?」
「……ううん。好きな匂い」
「律って匂いフェチ?」
「違うと思うけど……わかった、シャワー……」
「このままでいいって。律の匂い嗅ぎたい」
 律は飯塚に後ろから抱えられ、洗面台に連れて行かれる。
 そこで手を洗うため水を出せば、飯塚は律の指に自身の指を絡め流水に触れさせる。
 冷たいはずの水でも上がった体温を冷ませない。飯塚はハンドソープを押し、液体を泡立てる。
 指先から根元、手のひらに、と丁寧に二人の間で泡がしゅわしゅわと音を立てた。
 流水で泡を流し、口も、と言うと律の手のひらに溜めた水を飯塚は口に含んでうがいする。
 飯塚も手のひらに水を溜め、律にうがいさせた。
「こういうプレイってあり?」
 飯塚が口元を拭って言った。
 律は笑って「さあ」と首を傾げる。
「綺麗になった? 舌出してみて」
 飯塚はそう言いながら律の顎を持って上向かせる。
 律は言われたとおり舌を出した。
 赤いなめらかな舌がさらけ出され、律は顔に熱をあげるとまぶたを半分下ろす。
「うん、綺麗になった。俺のも見て」
 飯塚が舌を出す。赤くふっくらと肉厚で、触れると熱いのを思い出すと息苦しくなる。
「綺麗よ」
「熱あるかな」
 飯塚は律の腰を抱いて引き寄せる。自身の額と彼女の額をこつんと当て、「ないな」と確認すると耳元に顔を埋めてぎゅうっと抱きしめた。
「……律」
「なぁに?」
「俺の側にいてくれ」
「……うん」
「これから、ずっと」
「うん」
 律は背伸びし、手を伸ばし、飯塚の肩を抱いた。
 知ったままの大きさのはず、なのに以前よりも広く感じるのは何故なのか。
 飯塚の匂いがする。
 湿った土のような、濡れた樹皮のような、雨の後のような甘い匂い。
 律はそれを体全体に取り入れるように吸って、囁くように誓う。
「待ってて。ここでの事を済ませたら、譲くんの所に帰るから」
「分かった」
 お互いに腕の力を緩め、体を離すと顔を寄せる。
 心を捧げるように唇を触れあわせ、指を絡めた。

***

 淡いクリーム色のシングルベッドに音を立てて横たわり、覆い被さる飯塚の重さを感じて深く息を吐き出す。
 しばらくそうしてお互いの存在を確認していると、飯塚の手が頭を撫でてきた。
 律は目を開いて飯塚の頬を撫でる。
 彼の深くなった瞳を覗けば、そのまま吸い込まれそうになってくらくらする。
 促されるまままぶたを下ろせば、そこに柔らかい唇が触れてきた。
 飯塚の手のひらが髪と耳をじっとり撫で、律は背中が震えるのを味わいながら飯塚の首筋を撫でた。
 唇が滑り、頬にもちゅっ、とキスが降りた。
 飯塚の顔が耳元に埋まる。
 すうう、と飯塚が深く息を吸ったのが聞こえた。
「……律の匂い、好きだな」
「……匂い?」
「そう。前から良いな、と思ってたけどさ。すごい落ち着くし、なんか懐かしいって思ってた。……なあ、りんごって花咲くんだよ。見たことある?」
 律は飯塚の方を向いた。至近距離で目が合うと、彼は目元を和らげて律を見つめる。
「見たことない……どんな花?」
「桜に似てるけど、それよりちょっと丸い。花びらが白くてさ、ピンクっぽい紫っぽい色が端っこに出る。綺麗だよ」
「そうなの? 見てみたいな……」
「律のおっぱいに似てる」
「嘘!」
「嘘じゃないって。そんで、匂いがあるんだ。それと律の匂い、似てる」
 飯塚が語る内容に、律は胸を押さえて隠すようにしながらも、見たことのない花に思いをはせた。
「自分じゃ分からない。どんな匂いなの?」
「甘くて、爽やか。舐めたくなる」
「も、……もう」
「本気だけどな……キスしたい」
 飯塚は体をずらし、律の上衣をずらした。
 それこそ白に薄ピンクの刺繍が美しいブラが現れ、飯塚はブラごと揉み込むと白い肌を舐めた。
「あっ……」
「その声、久しぶり。やばいな、もう脱いどく」
 飯塚は上半身を起こすと上衣を脱いだ。
 ベルトのバックルを緩め、ジッパーを下ろす。
 律はわずかな金属音にも耳を責められるような感覚を得て、身をよじって両脚をすり寄せた。
 自分も脱ごうとブラウスのボタンに手をかけ、その指を飯塚が止める。
 律はその意図を察して手をどかせた。
「ストリップも良いけどな。脱がすのもたまらねぇ」
 飯塚の冗談に律はころころ笑う。ボタンが外され、肌がふーっと呼吸を始めた。
 飯塚はキャミソールを脱がせ、たっぷり揺れる乳房に目を輝かせると谷間に鼻先を埋める。
 ブラのカップを潰すようにして乳房を揉みしだかれ、律はくすぐったいやら気恥ずかしいやらで顔に熱をあげた。
「感じない? ここもりんごの花の匂いする」
「そうなの……? わかんない、けどっ……!」
 飯塚がカップ越しに蕾のような乳首をひっかく。律は息を乱すと唇を噛んだ。
 全身が重く感じるほど、次から次に情欲がわいてくる。
 早く繋がりたい、と体の奥が切なく疼いた。
「そう? じゃあ、俺だけの特権だな」
「や、あ……っ」
 蕾を引っかかれ腰を揺らす。そのせいでスカートがずり上がり、太ももがむき出しになった。
 膝を立てると飯塚の脚を挟み込む。
「今日敏感?」
「ん……うん」
「なんで?」
「それ、聞くのっ……?」
「聞きたいから聞く。なんで今日、そんな色っぽいの?」
 そう聞きながらも、飯塚の目は答えを知ってか余裕を見せている。
「……」
 律は言うまい、と唇を噛んだが、飯塚の手が背中を辿り、背骨を指先でなぞった。
 律は腰にうねるように温いものが流れるのを感じて首を横にふった。
「ずるいっ……!」
「ずるくて結構。それに、もう一個聞きたいことあるんだよ。答えてくれたらブラ外して、もう一個にも答えてくれたら、パンツ脱がしてやるよ」
「もう……!」
 飯塚は律の下着から手を離し、細くのけぞる首筋に唇を這わせた。時折深く息を吸い込み、彼女の匂いを堪能している。
 律が言おうか迷っていると、飯塚がまだ脱がないままに下半身をすり寄せてきた。
 ジーンズとも違う、手触りのなめらかな下着越しに熱いモノを感じ、律は全身がカッと熱くなるのを感じて体を反転させた。
「もうやだぁ……!」
「やだ? だったら素直になれよ。触って欲しいだろ?」
 飯塚は律の肩を掴み、吐息ごと吹き込むように囁く。律は思わず指を噛んだ。
「ひぅう……っ」
「自分の指噛むなって」
 飯塚は律の口から指を抜き取り、目を合わさせるとじっと覗き込むようにする。
「俺が好きだから? 逢いたかったからだろ?」
 律は泣きそうに顔を歪め、何度も頷いた。
「あ、逢いたかったっ」
「俺が好き?」
「好き、好きっ……!」
 飯塚はそれを聞くと律の顎を掴み、有無を言わさずに口づける。
 飯塚は律の口内をなめ回し、舌を吸う。唾液を絡めて逃げ道を防ぐと、それを彼女に流しこむ。
「んん……!」
 飯塚の手が律ののど元を撫でた。飲み下すのを確認するようにすると、ようやく解放する。
「っ、はぁ……っ……!」
 律は息も絶え絶えに胸元を上下させると、飯塚を涙で潤む目で睨んだ。
「窒息するかと思ったじゃない……!」
「ごめん」
 飯塚は素直に謝ったが、律の背に手を置いて、じっとり撫でる。
 肩甲骨にしっとりした唇を当て、舌先で骨のくぼみをなぞる。
「ごめん、すっげえ嬉しかったから……約束通り、まずブラな」
 飯塚の武骨ながら器用な指が、ブラのホックを外す。
 胸が解放される気持ちよさに律は息を吸い込み、肩紐をずらして床に落とす。
「もう一つの聞きたいことって、何?」
 飯塚が律の背中をなだめるように撫でる。彼は律の質問に目を開くと、ショーツのゴム部分に人差し指を入れて持ち上げたり、スライドさせたりした。
「そうだな……出てったあの時、律、俺に何か言ったよな? ごめんね、は覚えてるんだけど、その後が分からない。あんな泣きそうな顔させて、俺が傷つけたんなら謝りたいんだよ」
 飯塚の言葉に律ははっと顔をあげる。
 上半身を捻って飯塚を見れば、彼はいたって真剣に律を見つめるだけだった。
「……俺酔うと記憶飛ぶんだよ。俺、何か言った? だから謝ってたのか?」
「違う……」
「じゃあ、何?」
「……」
 律は身を起こし、飯塚の脚に手を置いて向き合う。
 飯塚は彼女のその仕草も何もかもを見た。
「……譲くん、あの頃、時間を割いて私と一緒にいてくれたのに、裏切ることになるから、謝ったの……」
「俺が好きでやったことだろ、裏切るとかじゃねぇよ」
「そうかもしれないけど……」
「じゃあ、その後、最後。なんて言った?」
 飯塚の質問に律は、胸から涙がせり上がってくるのを感じる。
 目を逸らしてはいけない、と手を口元にやって何とか耐える。
「大好き……忘れてって、言った……」
 それを聞いた飯塚は、自身の唇を舐めると律の肩を持って抱きよせる。
「忘れろって?」
「言った」
「……大好き?」
「……言った」
「……前半だけ受け取っとく」
 飯塚は律の目を見つめながら、手を彼女の下腹部に滑らせる。
 恥骨からショーツに手を入れ、ゆっくりと引き下ろした。
「後半は受け取れない」
 飯塚の宣言に律は頷いた。クロッチ部分が蜜に濡れ、色を変えていた。
 柔らかい恥丘に、柔らかい恥毛。飯塚はへそのまわりを指先でくるくる回し、そのままつうっと下へ忍び込ませた。
「あ……」
 ぷっくり膨らんでいた花芽に飯塚の指先が触れると、じんととろけそうな感覚に目眩がする。
 が、飯塚はそのまま秘部を素通りし、両手で律を引き寄せると背中から寝かせる。
「譲くん、下脱がないの?」
「後で。脱いだら自制出来そうにない。今挿れたら痛いだろ?」
「……そうかな……」
 今すぐにも欲しいくらいだ、と律は感じているが、1年以上も時間が空くとどうなのだろう、痛むのだろうか。
 飯塚はふうっ、と息を吐き出して体を起こす。
 律を全身、じっと見つめた。
「あの……」
「すげえ綺麗。セックスすんのが不思議だな……」
「え?」
「俺、なんか感動してる。変?」
「変……? どうかしら。嬉しいけど……」
「なら良いか……俺らがどんな気持ちでまぐわうか、なんて、俺ら次第だよな」
 飯塚が古い日本語で言ったので、律は思わず笑ってしまった。
「笑うとこ?」
「いい言葉よね、まぐわうって」
「だよな」
 飯塚は笑みを浮かべると再びベッドに膝をついて律にかぶさる。
 律の肩から脇を撫でてあげさせ、ベッドフレームを掴ませるとむき出しになった脇に舌を這わせた。
「汗かいてる、かも……」
 と恥ずかしがる彼女を尻目に、飯塚は脇のくぼみを丹念に舐める。ぞわぞわする緩い刺激が首にまで昇ってきた。律は熱い息を吐き出す。
「あ……んん」
 熱に浮かされたような声がもれると、飯塚が口元をにやつかせる。
「やっぱここ弱いよな。胸とどっちが良い? 今日は素直になれよ」
「……んん……ええと……」
 答えに迷っていると、飯塚が淡く色づいた蕾を乳輪ごと口に含む。
「あっ!」
「分かった、胸か。脇は今度開発しようぜ」
「え……」
「楽しみだな」
「えーと……お、お手柔らかに……」
「”優しくして”じゃないの?」
「してくれないんじゃ……」
「ひどっ……俺紳士的な男だろ?」
「否定はしないけど……」
「肯定もしない? 律って厳しいな」
 飯塚はふふっと笑って、律の両胸を寄せると蕾をいっぺんに味わう。
「んー……!」
 熱湯でも流されたような強い快楽に律は眉を寄せた。
 飯塚は口の中でやりたい放題だ。舌で蕾を包んで、たっぷり濡らすと弾いて吸い上げる。
 律は無意識に手に力を入れ、腰をくねらせた。
 飯塚が途端に息を荒げ、口を離すと左胸を鷲掴みにする。
 きゅうう、と固くなった蕾が寂しげに性感を訴えた。
 飯塚は起ち上がるそれを指先でくるくるなぞる。じんとした疼きに似た感覚に律は熱い息を吐く。
「ここでイかせてみたいな……」
「それは……だめ……」
「なんで?」
「余裕ない……ねえ、お願い……」
 律は手を下ろすと自身の下腹部に沿わせる。
 飯塚がそれを目で追いかけ、ほお、と感心にたような熱の吐息を律に浴びせた。
「ここ……おかしくなりそう……」
 そう言いながら律は脚を開き、すでにシーツの色を変えるほどに愛の蜜を垂らす秘部を晒した。
「大胆すぎ……」
 そうからかう飯塚の声はどこか苦しげで、目を見れば瞳がどんどん広がっていく。
「素直になれって言ったでしょう……?」
「言った、言った。すごいな……ひくついてる」
 飯塚は体をずらし、律の太ももを撫でながら更に広げる。
 ぷっくりふくれた花芽が、恥毛ごと雨にでも濡れたように光っていた。
 飯塚はそこをじっくりと見つめ、喉を鳴らして唾を飲み込む。
 野生動物めいた彼の目の輝きに、律は今更全身が焼かれそうなほど恥ずかしくなった。
「やっぱりだめ……!」
 喉の奥から悲鳴のように言うと、脚を閉じる。そのまま体を丸め、枕を顔にかぶった。
「恥ずかしくて死にそう……!」
 くぐもったその叫びが聞こえたのか、飯塚はぷっと笑った。
「何だそれ、可愛いかよ」
 飯塚は律の枕を奪い、腕を耳元について見下ろす。
 律は横を向いて熱くなった頬をごまかした。
「顔見せろって」
 飯塚は律の頬に吸い付き、鎖骨に軽く歯を立てる。
 律はぶるっと体を震わせると飯塚の肩に手を置いた。
「ね、ねぇ……」
 両脚をすり寄せてみるも、飯塚は肝心の部分に触れようとしない。
 先ほどから花びらが熱を求めてふるふる揺れるようだった。
 早く触って欲しいのに。
「何?」
 飯塚はわざとらしく無視し、つやつやに濡れる胸の蕾を貪るばかりだ。
 それにもすら体の奥が疼き、蜜が溢れて仕方ない。
 このままじゃおかしくなる、と律は意を決して口を開いた。
「さ、触って……っ」
「どこを?」
「んん……っ! あっ……し、下……」
 飯塚は口の端を持ち上げる。律の脚を指先でなぞり、しっかり開かせるとベッドから降りて膝をついた。
 飯塚が内ももを押さえたため、閉じるに閉じられない格好になり、律はいつもより早くなる心臓を押さえようと胸に手を当てた。
「膝抱えて、開いてろよ」
「うん……」
 律は膝を曲げ、内側に手を入れた。
 外気に触れた敏感な花芽がひくっと震え、それでもおさまりそうにない熱に赤く染まっている。
 飯塚は脚の付け根を唇と舌でなぞり、目を閉じてすうーっ、と息を吸い込んだ。吐き出される熱い息が蜜口にかかり、律は腰を跳ねさせる。
「……律の匂いしかしねぇな」
「え?」
「なんでもない」
 飯塚はほっとしたような声で独り言を呟き、そっと花びらを下から上へ、なで上げる。
 途端にとろけそうな快楽がぽっと灯り、律は深く息を吐き出すと目を閉じた。
 蜜がとろっと溢れ、お尻にまで垂れてゆく。
 飯塚の指がそれを追いかけ、すくいあげると花芽をぐりぐりと押した。
「あっ!」
 弾けるような感覚が背筋をくすぐる。
 律が腰を浮かせると、飯塚は力を込めて脚を押さえた。
「すっごい、濡れてる。ふやけそう」
 飯塚はゆるゆると花びらをなぞり、蜜のついた指を舐めとる。
「熱っちいし、喉カラカラ」
 そう呟くと唇で花びらを吸った。
「ん……! あうっ」
 じゅぷっと音を立てて蜜が丁寧に舐めとられてゆく。
 とろけそうな中に鋭い性感があり、律は背筋をそらせて、自分の体を抱きしめた。
 そうでもしないとあられもない声が出てしまいそうだった。
「味濃い。自分でしてなかった?」
「そういうの聞かないで……」
 飯塚は目線だけ寄越すと舌先を蜜口に埋める。
 熱くぬるついた舌に触れた部分が溶けそうになった。
「汚いよ……っ」
「まさか……んー、すげえ酸っぱい」
 飯塚は息を押し殺すようにする彼女の脚をしっかり掴み、ぐじゅぐじゅ音を立てて蜜口をかき回す。
 律は背を反らせ、快楽に耐えるためか飯塚の髪を掴んだ。飯塚の息が荒くなり、ふっと蜜口に息が触れると体が跳ねそうなほどに興奮が伝染する。
「っあぁ……もうだめ……」
「気持ちいい?」
「うん……」
「こっちも触ろうか」
 飯塚は自身の指先をぺろっと舐めると、うずうずと赤くふくれあがって震えていた花芽に触れた。
「あ……!」
 律は上擦った声をあげ、喉もそらせて口を押さえる。
 飯塚がそれをちらりと見た。
「あっ、イク……っ」
 喉の奥から引き絞った声が出た瞬間、ぎゅうっ、と蜜口がきつく締まる。熱い電流が背筋を駆け上り、つま先を跳ねさせると律は体を小刻みに震わせた。
「……っはあ……あっ……」
 深く息を吸って胸元を押さえる。
 体は震え、奥が物足りない、と微熱を残す。
 飯塚が脚を離し、体をぴたりと貼り付けて抱きしめる。彼の背中に手を回し、普段より熱い体温を味わった。
 髪を撫でられ目を開ければ、ぼやけた視界に気遣わしげに見つめる飯塚の目がある。
 律は彼の汗ではりついた額の髪をかき上げ、頬に触れると顔を持ち上げて口づけた。
「もっかい」
 飯塚はゆったり笑うとそう言って、律の頭を抱える。
 律はリクエスト通り軽く唇を合わせる。
 飯塚が律の背中に手を入れて体を揺すった。
「もっかい。濃いの、しよう」
「ふふ」
 律は飯塚の後頭部で両手を組み、指先を離すとそれを髪に割り入れた。
 頭を撫でながら引き寄せ、飯塚と唇を重ねる。
 しっとりした口づけはやがて深くなり、互いの口内を舌でなぞり合う。
 律にとってこんな本能任せなキスは初めてだ。
 下手でも上手でももはやどうでもいい。
 飯塚と何かを分け合うのが楽しくてたまらない。
 舌先を絡ませ、唾液を交換すると、飯塚が体を抱きしめたまま反転させる。
 飯塚を見下ろす格好になり、律は膝を曲げて彼の腹部に座ってその耳元に噛みついた。
「っへへ。すっげえくすぐったいな、これ」
「気持ちよくない?」
「気持ちいいよ。俺まだ性感帯になってないかも」
「そうなの? キスしたら育つかしら」
「”お手柔らかに”頼むよ。耳だけでイってみたいし」
「責任重大だわ……」
 律はそう言いながらも頬を持ち上げた。
 飯塚の耳元に唇を寄せ、軟骨をなぞってふっと息を吹きかけた。
 飯塚の手が急かすように律の腰を掴む。
「右と左、どっちがいいの?」
 律が囁くように言うと、飯塚は「んー」と考えてみせる。
「わかんねえな。じっくりで良いよ。次の楽しみにとっとこう」
 そう言って、飯塚は律の首を撫でて顔を近づけさせた。
 ちゅっと音を立てて口づけ、飯塚の手が律の手を下半身に導く。
 すでに濡れた下着はじっとりと熱っぽく、昂ぶって固くなっていた。
「撫でる? 舐める?」
「律の好きにして」
「んー……」
 律は顎に手を当てて考え込む。
 好きに?
 とにかく下着を脱がそうと体をずらしてベッドから降り、しっかりと形を浮かび上がらせるそれに目が釘付けになった。
 下着越しに撫でると、手のひらに重みが伝わってくる。
 顔を寄せ、湿った箇所に舌を這わせる。しょっぱいような複雑な味に、青臭いモノの匂い。
 以前はいっぱいいっぱいだったが、今は飯塚のモノを見る余裕があった。
「うぉ、やべ」
「嫌だった?」
「違うって……けっこう焦らすな」
 飯塚は慌てて下着を脱ごうとしたが、律がその手を止める。
「好きにって言ったじゃない」
「言ったけど! マジか、律焦らすタイプかよ」
「どういうのが好きか、知りたいだけ。もう脱ぎたい?」
「……」
 下から見上げる格好で言えば、飯塚は目元を赤くして唇を舐めた。
「主導権握られるとは……」
「そういうのじゃないから。これは……”お互い様”っていうの」
「なるほど……?」
 首を傾げつつ納得した飯塚の、下着の中でビクビク震えるモノに手を這わせた。
 手のひらが濡れ、指を離すと未練がましく糸をひく。
「譲くん、興奮してた?」
「してた」
「私に?」
「他にいるかよ。やべぇな、暴発する」
「今出すから……ちょっと我慢して?」
 律はねだるように言って、飯塚の下着をおろした。跳ねるように起き上がった赤黒くそり立つモノがむき出しになり、飯塚が強く息を吐き出す。
 律は指先で動物の鼻のような先端をなぞり、鈴口を軽くついた。
 飯塚が「うっ」とうめく。
「嫌だったら止めてね……」
 髪を耳にかけ、口をめいっぱい開くと咥えこんだ。喉をついて出してしまったが、目を閉じて再び奥まで入れこむ。
 飯塚が「ああ」と上擦った息をもらす。
 ずるるっ、と我慢汁が喉を滑り落ちていく。それにもすら腰が淫らに反応する。
 飯塚の手が髪をかきわけてきた。視線をあげると飯塚は顔を歪ませて赤くしていた。
「気持ちいい?」
「ああ……もうちょい、強く吸って……」
 じゅううっ、と言われた通り吸えば、飯塚は腰を揺らして唇を噛んだ。
「良い……ちょ、腰、動かしていい?」
「んっ? えっ?」
 戸惑う律の頭を軽く押さえ、飯塚はゆっくりと腰を押しつけ、またゆっくりと引き抜く。
 喉が擦られ、熱いような感覚に目がチカチカする。律はぎゅうっと目を閉じ、飯塚の太ももに手を置いてそれを叩く。
「んー……!」
「やりすぎた? ごめん……」
 律は口を解放され、ぷはっ、と不器用に息をした。口元をぬぐって、目尻に浮かんだ涙を払う。
「悪い」
「びっくりしただけ……」
 飯塚は律の唇を指先でなぞって、顔を寄せると口づける。
「消毒」
 そう言って律の口内を丁寧に舌でなぞる。律は飯塚の肩をぽんぽん叩いた。
「良いのに」
 そう笑って言うと、飯塚もゆったり笑う。
「気持ちよかった。今度噛んで」
「危ないんじゃ……」
「甘噛みで」
 飯塚はそう言うと律を抱きしめベッドに導く。
 正面から抱き合う格好になり、律がほっとして力を抜いていると、飯塚が背中を撫でてくる。
「挿れていい?」
 律は頷いて、飯塚の胸元に頭をすり寄せた。
「うん。あの、でもゴム……」
「ホテルで買った」
 律は顔をあげる。
「いや、せっかく再会してよ、チャンスあるなら準備しとかないと。俺その辺はまじめだから」
 飯塚はいたってまじめな顔をしている。
 律の体を撫でて待つよう言うと、ギターケースを開けて中からシールの張られた小箱を取り出す。封を切って包みを取り出し、ベッドに戻ると器用につけていった。
 律はそれを見て、息を深く吸い込んで胸元を押さえる。
 緊張はしているが、同時に嬉しさに胸が震えている。
 飯塚が膝を立ててベッドに登り、律の頬を撫でて頭に手を回す。
 律は彼の頭を抱くように手をまわし、口づけを受け入れた。熱が上がってはれぼったくなった舌をゆったり絡める。喉が溶けそうな感覚に眉が開き、飯塚の手が腰を撫でると素直に力を抜いた。
 律は枕に頭を沈め、脚を開くと飯塚の腰に手を当てる。
 飯塚はそれに促され、たっぷりと濡れる蜜口をモノでなぞる。
「あ……」
 じわっと解かされそうな熱いしびれが走り、眉を寄せて腰をくねらせると飯塚は息を荒げながらそれを繰り返した。
「……っ、ねえ」
「何?」
「じ、焦らしてる?」
「違うって……これ、良くない? 俺はすげえ気持ちいい」
「そうなの……?」
 固く熱いモノでゆるゆると柔らかい花びらをこすられ、律は息を乱して口元を手で覆った。
「嫌だ?」
 飯塚の問いに首を横にふる。
「気持ちいいよ……」
「そりゃ、良かった……あー、すっげえ、やばい……」
「どうしたの……?」
「俺の……マジでガチガチ……入る?」
 飯塚は律の蜜口に指を差し入れ、中を探るように動かす。
 柔軟に蠢く中は、律が思うよりも準備が出来ているようだ。次から次に熱い蜜が溢れ、飯塚の指の動きに合わせてまた溢れ出す。
「も、やだ……っ」
 こぽっと蜜があふれ出て飯塚のモノを濡らした。律は顔を熱くさせると秘部を手で隠す。
「入りそうだよな……痛かったら言えよ」
 飯塚は律の手を取って背中に導く。白い両脚を開かせ、体をぐっと押しつけるようにすると蜜口にモノをあてがう。
 ずぷっと音をたてて、蜜口がモノを迎え入れてゆく。
「あつ……っ」
 律は小さく悲鳴をあげ、体を丸めるとすがりつくように飯塚の背を抱いた。
 ぐぐっと腰を進められ、貫かれる感覚に律は目尻に涙を浮かべる。
 痛い。
 苦しい。
 中が焼けてしまいそう。
 なのにその感覚すら愛おしい。
 飯塚の背を抱く手に力を込め、耳元に頬をすり寄せる。
 飯塚が髪を撫で、力強く体を抱きしめてくる。
 しっくりとハマる感覚に、息が全身を駆け巡るように溶け出した。
 飯塚が顔をあげ、律の顔を覗き込んだ。
「すごい……律ん中、溶けそうだな……」
 飯塚は瞳を大きく広げ、汗の滲んだ額を手首で拭うと確かめるように腰をぐるっと動かした。
「んん……! ちょ、ちょっと……!」
「ごめん、なんか感動してて」
「感動ついでにちょっとだけ……このままいて」
 律がそう言うと、飯塚はふう、と息を吐き出して体の力を緩める。
 再び目が合うと、腹の底から喜びが湧き上がってきて笑みがこぼれた。
「なんだよ」
「なんでもない」
「意味深かよ。なあ、抱きしめていい?」
「うん」
 律は両手を広げて飯塚を迎えた。
 耳元にクセのある髪の毛がかかり、胸元をぴったりと合わせて全身の体温を分け合う。
 鼓動が重なって、互いの匂いが混じり合った。
「嬉しい」
 律が囁くと、飯塚は返事の代わりにか彼女の背に回した手のひらに力を込める。
 飯塚のモノが脈打ち、中の壁伝いにそれが奥にまで響いてきた。
 今まで知らなかった思わぬ快楽に眉を寄せ、喉を震わせると飯塚が顔をあげる。
「……大丈夫か?」
「大丈夫……あっ」
 中がぎゅう、と締まった。飯塚がその瞬間に顔をしかめた。
「ご、ごめんね」
「大丈夫。ちょっと、不意打ち。今のすげえ良かった」
「えっ」
「やっべえ、イかされそう」
 飯塚はそう言って頬を緩めると腕を突っ張って上半身を浮かせる。
 離れてゆく体温に、律は思わず手を伸ばした。飯塚はそれを握りしめると上半身を起こして座り直す。
 中でそそり立つモノが壁を擦った。
「んんっ」
「ああ、すっげえ気持ちいい。中やばいな」
「あっ……!」
 飯塚は唇を噛むとずるずると引き出しては中に入り込み、中を余すところなく擦りあげる。
 蜜がとろとろ流れ、モノをなめらかにしていた。
「……あぅ、う……っ」
 律は子猫のねだるような声が出そうになり、口を押さえる。
「感じる?」
 飯塚の問いに何度も頷く。
 繋いだ手をぎゅっと握りしめると、飯塚がその手を持ち上げて口づけた。
「あっ……!」
「かーわいい。中どうして欲しい?」
「わからないっ……」
「じゃあ好きにしていい?」
「いいよっ……!」
 飯塚は律の腰をしっかり掴むと、奥まで貫いてぐりぐりと先端を押しつける。
「んんぅ……!」
 ベッドがギイッと悲鳴をあげ、シーツが波打つ。
 柔らかい乳房がそれに合わせて揺れる。
 飯塚が荒く息を吐き、律の脇に手をつくと筋肉をなめらかに動かして激しく突き上げた。
「あっ……!」
 熱い肉塊でせめられ、中が火傷しそうだ。律は視界がチカチカするのを感じ、飯塚の手に爪を食い込ませる。
 飯塚の汗が彼女の白い谷間に流れ、それにもすら腰がぞくぞくと反応する。
 思わず浮かせると飯塚が逃がさないとばかりに追いかけた。
 肌と肌がぶつかる。
「んん……! もう、ねぇっ」
「イって良いよ。俺も一回出す、からっ」
 手が離れ、飯塚が耳元に顔を埋める。
 熱く荒い息が耳にかかったかと思うと、むきだしの肩に彼の唇と舌と歯の感触がぶつかる。
 ぶるっと快楽が肩から腰におりてくる。
 首を仰け反らせて何とか息を吸い込めば、飯塚が唇を重ねた。
 舌をきつく吸われ、浮いた腰から飯塚の手が伸びてお尻を撫でる。
 律は必死になって足のつま先にまで力を込める。
 縋りつくものを求めた脚が、飯塚の腰をとらえた。
 ぬぷっ、と粘着質な音がし、蜜口がきつく締まる。
 飯塚が目を光らせた。
 そう見えた瞬間に、中の壁がびくびくと小刻みに震えて熱が全身に走る。
「あっ! イくぅ……!」
「んん……! うっ……あっ!」
 ぎゅううっ、と熱が弾け、脚が跳ね上がる。
 中で熱いものが解き放たれ、それが飯塚の熱い体液だと察して体が歓喜に打ち震えた。
 体が空中に放り出されたかのように突如軽くなり、一気に重くなる。
 それにぐったりと身を任せると、飯塚が半開きのままの唇を重ねて口内を好きになめ回した。
 律は息も整わないままそれを受け入れ、手を伸ばして彼の首を引き寄せると自らも口づけを求める。
 やがて目を閉じ、お互いの体をきつく抱きしめ合う。
 ひんやりした汗に、熱いくらいの体温。
 律が膝を立てて身をよじると、飯塚が眉を寄せて小さくうめいた。
「……譲くん?」
「ごめん、もっかい……」
「えっ……あっ」
 飯塚の言葉の意味を察し、律は体をかっと熱くする。中で重々しくしていた彼のモノが、ぐんと熱を取り戻している。
「ま、待って……」
「分かってる。いったん、抜くから……」
 律の制止を聞かず、飯塚はずるっとモノを引き抜いた。途端、中がねだるようにうねり、背筋に甘えるような快楽を届ける。
「あぁっ……うっ……!」
「何、やらしい声。抜いただけだろ?」
「んん……!」
 飯塚のからかいに返す余裕もない。蜜口が未練がましく震え、泣くように蜜をたらす。
 飯塚は体を起こすと顔の汗を拭う。箱からもう一つの包みを取り出し、結ぶ余裕もないのか使用済みのコンドームを抜き取ると波打つシーツに捨てた。
 飯塚が呼吸を整えるようにし、律の太ももを撫でる。律は意図を察してその手を止めた。
「待って……体、痛くなりそう」
「体位変える?」
「そうしたい……」
 そう言って体を起こせば飯塚が腰を引き寄せる。
「譲くん?」
「俺の上乗る? 律のこと下から見てたい」
「上……」
「嫌いか?」
「ううん……したことないから」
「あれっ、そうなの?」
「うん。……譲くんはしたことあるのね」
 表情を気まずく固めた飯塚に気づき、律は首を傾げる。
「どうしたの?」
「いや……俺そこまですけこましじゃないんで……」
 飯塚はもごもごと話した。
 律は飯塚と位置を交替する。
 飯塚が枕に背を預け、上半身をわずかに起き上がらせたまま律を引き寄せた。
 律は跨がるようにして下腹部に座り、きょろきょろと視線を彷徨わせる。
「どうしよう」
「俺の、掴んで入れるんだよ」
「えっと……」
 律はお尻を浮かせると目元に熱をあげながら飯塚のモノを探る。
「うわ、エロい」
「えっ」
「顔ばっちり見える……すげえ可愛い」
「見ないで……っ」
 律は髪をふって顔を隠そうとしたが、飯塚は手を伸ばしてその髪をかきあげる。
 きらめくまつげの向こうに、じっと顔を覗き込んでくる好奇心に満ちた飯塚の目があった。
「見ないでってば……!」
「無理、無理。動画撮りたいくらい可愛い」
「それ絶対嫌!」
「しないって。その代わり脳裏に焼けつけとく、だから見せろよ」
「う……」
 飯塚の目元が柔らかく細められる。
 律は口を尖らせたが、顔を隠すことはせずに髪を耳にかけた。
 手を伸ばして自身の秘部をなぞる。
 ふやふやになったそこは熱を持ち、緩い刺激にも関わらず蜜をたらす。新しいコンドームに包まれた飯塚のモノを手で掴むと、そこに沿わせるようにした。
「ん、う……」
 きつく締まる中の壁を、飯塚のモノがこじ開けるように入り込んでくる。
「きっつい……良いな、これ……。飲み込まれる感じ」
 硬さを失わない飯塚のモノに若干の怖れを抱き、律はまぶたをきつく閉じたり、息を詰めては吐き出したりしながらゆっくり中に入れこむ。
 飯塚が熱っぽい息を吐き出し、律は目を開けた。
「良いの……?」
「良い。律の中、すげえ。カスタードみたいになってる。マジで気持ちいい」
 飯塚は見上げるようにして律の体を見つめ、手を伸ばすとお尻を掴んだ。
「ひゃっ」
「俺の、根元まで、飲み込んで」
「わ、分かった……」
 飯塚は急かすように見つめるくせに、律に任せて体を撫でるばかりだ。
 律は彼の肩に手を置き、腰を下ろす。
 腫れたような中の壁が、器用に広がってモノを飲み込む。
 熱い電流に焼かれるような感覚を目を閉じてじっくり味わうと、きゅうう、と奥が飯塚を迎えるように降りてくるように蠢いた。
 深い部分で深い口づけをしてるようだった。
 脳まで溶けそうな熱い快楽に、体の奥から息がのぼってきて口から放たれる。
 飯塚がごくっと喉をならした。
「は……いった……」
 律がうっすら目を開ければ、目に入るのは自分の部屋の壁だ。
 淡い照明に照らされた二人の影が、艶めかしく重なっている。
 客観的に映るあられもない二人の影に、律は全身から汗が吹き出す思いだった。
 飯塚が切羽詰まったように浅く息をし、律の体を指先でおそるおそるなぞる。
「あぅん……っ!」
 跳ねるような声が出て、律は口を押さえる。
「エロいは撤回……律マジで女神だ」
「な、えっ?」
「マジで……ここ俺の形なってる。覚えた?」
「え?」
 飯塚は律のへその下あたりを指先でくるくるなでる。
 くすぐったい感触に腰を揺らせば、モノが中をぐいっと刺激する。
「下からせめんのも良いね」
「もう……!」
「小言はナシ」
 飯塚は律の首を寄せて唇を啄んだ。
 律は背中をそらせ、お尻を突き出す格好になる。無防備なそれは性感を高めた。
「普段じゃ想像出来ないな……すげえ。律」
「なにが……なんなの?」
「乱れてる姿、マジで綺麗」
 飯塚は真剣なまなざしで見つめている。律の汗でしっとり濡れた髪をなで、赤くそまる頬を手のひらで包んだ。
 熱を求めて膨らんだ唇はとっくに口紅が取れ、彼女自身のピンク色に艶めいている。
 飯塚に誘われるまま目を閉じて唇を合わせる。
 舌が触れあい、絡めると飯塚は誘うように舌を引っ込める。
 律は髪を耳にかけ、彼の胸板を撫でながら舌を差し入れた。
 唾液を絡ませ、じゅるっと吸い上げられると体の奥にあやうい熱が生じる。
 腰がその熱を求めてゆっくり前後に動いた。
「あっ……あっ」
 また蜜があふれ出てくる。そのお陰で動きやすくなり、ぱっくり開いた蜜口が飯塚のモノを咥えて放す。それを繰り返すと、飯塚が唇を噛んだのが見えた。
「譲くん……気持ちいいっ?」
「いいっ……」
 飯塚は抑えていた何かをはじき飛ばすように、律の体を強く抱いて、肩に歯をたてた。途端にびりびりと新しい性感が律を追い詰める。
「あぁっ!」
 飯塚の手が背中をそらせる律の体をなで回し、左の膝を立てるとつま先でシーツを掴む。
「動いていい?」
「えっ……あっ……!」
 律は腰を掴まれ、倒れ込むことも出来ず胸の前で両手を組む。
 中で飯塚のものがよりガチガチに固くなった。
 飯塚は限界なのか、目の下を赤くして眉をきつく寄せている。
「う、動いて、いいよっ」
 律がそう言うと、飯塚は右手で律の手を取り、腰を抱いたまま下から突き上げる。
「あぁっ!」
 ビーン、と頭まで響くような鋭い快楽に貫かれ、律は喉まで反らせる。
 たぷん、と飯塚の腰に合わせて揺れる乳房が鷲掴みにされ、ぴんと立つ蕾があっという間に飯塚の口にとらえられた。
「あぅっ、あっ!」
 抑えきれずに高い声をもらすと、飯塚がもう片方の乳房にも顔を寄せる。
 交互に愛撫が施され、律は軽く混乱を始めた。開いたままの唇が吐息とともに勝手に言葉を紡ぎ出す。
「あぁっ……もっと……っ」
「ん?」
「もっと……っ、してっ……」
「もっと?」
 飯塚が律の手を放し、両胸を寄せると手の中でもみくちゃに愛撫する。律は腰を揺らして体の奥を震わせた。
「んん……!」
「気持ちいい?」
「きもちいいっ……! あぅっう……っあ!」
「律……すげえ、可愛い……そんな欲しい?」
 律は目尻の涙をぽろっと落として頷く。甘ったるい声はいつしかすすり泣きに変わっている。
 体の奥から飯塚の熱で溶かされそうだ。痛いくらいに手足に力がこもる。
「もっと欲しい?」
 飯塚は律の腰を掴んで揺さぶる。
 するどい快楽の電流に頭まで犯されそうだ。
 律は頭をふって耐え、揺れる乳房を抑えようと祈るように胸の前で手を組む。口を開ければ熱く掠れた息がもれるばかりだ。
「もうだめ……だめ……」
 何とか言葉にすると、目尻から堪えきれずに涙がこぼれる。
 飯塚は体を起こすと張り詰めた胸の頂きに吸い付き、谷間に流れる汗を舐めた。
 その途端に全身が震え、体の奥に熱の波が押し寄せる。
「んぅ……っ!」
 律がぎゅっと目を閉じた瞬間、飯塚のモノが触れている部分が跳ねるように震え、背筋を昇って弾けた。
 蜜口がびくびくと小刻みに震え、飯塚のモノをきつく締める。
「っあ……! やべっ……イった?」
 飯塚の声に返事もまともに出来ずに頷けば、中の壁が熱く焼かれるような感覚に目を開ける。
 飯塚は唇も半開きのまま、熱に瞳を大きく広げて律を見ていた。
 どこまでも求めるような彼の欲深いまなざしに腰があやしく震える。
 律は息も苦しくしていたが、飯塚がまだ果てていないことに気づいて思わず彼の頭をかき抱く。
「譲くんも……っ」
「ああ……でも、さぁ。後ろからしていい? 背中にもキスさせて」
「いいよ……っ」
 律の返事を聞くと、飯塚は彼女の後頭部を手で持ってキスする。
 唇が離れると飯塚が律の体を持って、そのまま反転させた。中で飯塚のモノがぐるんと跳ねるように動き、壁を擦った。
 背中に飯塚の体温を感じて振り返ると、飯塚が乳房をなで回しながら顔を寄せ、唇を合わせる。ゆっくりと上体がベッドに沈んでゆく。
 律は枕を掴み、飯塚の手に促されるまま膝を立て、腰を持ち上げる。
 顔は見えないままに荒い息づかいを背中に浴びる。それだけでぞくぞくが背筋をくすぐった。
 甘えるような吐息が漏れ、口元を隠すと飯塚がその手をどかした。
「もっと喘いで、聞かせてみろよ」
「やだ……っ」
「やだ? なんで」
「……変な声でしょ?」
「へえ? 自分の声聞いてる余裕あったんだ。もうちょい精進しないとダメか」
「そうじゃない。……ばか……」
 これ以上感じたら怖い、と思う律がせめてもの悪態を吐けば、飯塚は肩に手を置いて、体をすり寄せる。
 赤くなった耳たぶを唇で柔らかく吸われ、律はイルカのような細い声でないた。
「ぃやぁ……!」
「変っていうか、すっげえそそる声」
 飯塚はそう囁くとぷっくり膨らんだ耳たぶを口内で弄ぶ。
 ちゅぷちゅぷと脳内まで愛撫されているかのような感覚に目が回りそうだ。
 律は降参、と言わんばかりに飯塚の頬を軽く叩く。
「耳だめ……!」
 そうか細い声で言えば、飯塚がくつくつと笑う。
「はいはい」
 そう楽しげに言った飯塚の頬を汗がすべり、肩に落ちた。
 律が体を横にして顔を見れば、飯塚はまっすぐに律を見つめてきた。
 彼の胸元が大きく上下している。そっと手が髪を撫でてきた。
 全身で熱を味わうように重ね、顔を寄せると口づけ合う。
 舌を絡め、腫れるまで唇を吸って、息を荒げて上擦った声が出始めると、飯塚がゆっくりと、深く、腰をすり寄せる。
「は、あ……」
 壁全体がしびれるように、溶けるように疼く。
 眠りに近い意識の中、飯塚の確かな存在だけが律をここに留めているようだった。
 ――このまま飛んでいきそう。
 そう声に出したのだろうか、飯塚が背中を撫でながら「いいよ」と言った気がする。
 目を閉じて指を絡めて、体の奥から溢れてくる熱情を吐き出す。
 中で飯塚のモノが張り詰めた。
 じわじわと全身が溶けるような快楽に背骨が震え、目を開けると涙がいくつもこぼれてゆく。
 飯塚が息を荒くして、首筋に歯を立てる。
「あっ……!」
 その瞬間に体の奥から新たに蜜がこぼれ、熱くつながった部分を濡らした。
 飯塚が下腹部をぎゅっと締め付けたのが伝わってきた。
「……俺もうイキそう……律は……?」
「もう何も……分からない……っ!」
 そう首を横にふるが、ひどく心地良く、甘い声が息とともに出るばかりだ。
 飯塚は律のその姿に満足そうに笑って、絡めた指に力を込めると力強く腰を押しつけた。
「ん……!」
 奥をぐうっと突かれ、一際高く声が出る。
 そのままぐりぐりと腰を揺り動かされ、頭がぱちぱち弾けそうになった。
「激しくしていい?」
「んっ……してっ……!」
 飯塚は動物のようにはっはっ、と口で息をして、律の腰をしっかり抱くと今にも張り裂けそうなモノを思うまま使って、律を貫いた。
「出る……っ!」
 そう聞こえたかと思った瞬間、蜜口がびくびく震え、背骨から脳までを熱波が通り抜けた。
 中で熱いものが吹き出したのを感じ、中の壁が小刻みに震えてそれを飲み込もうとする。
「あっ……!」
 飯塚が腰を跳ねさせ、息を吐き出す。
 肌と肌がぶつかり、飯塚の欲にまみれた熱を体の奥で感じていると、どろどろになってしまいそうなほどの体の重みに支配される。
 唇をふっくらとさせながら息をし、目を閉じて今の満たされた感覚を味わっていると、飯塚が覆い被さってきて、しっかりと両腕で抱きしめられる。
 ほっと息を吐き出し、飯塚の体を強く抱きしめる。
 心まで重なるように。
 そう願いを込めて。

 

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耳攻め体験してみない? えっちなASMR多数!もちろん男性向け作品も……

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