初春に防音対策をなんとか終える。
飯塚は約束通り、安い電子ピアノを新品で購入した。
穏やかな夜だった。
外は雪に濡れて冷たいが、風が緩く流れている。
音楽室に改めた工場跡は防音シートのためか、中の空気を包んでいるようだった。
閉じた空気の中二人で並んで座り、譜面を読みながら律に鍵盤を弾かせる。
「これ指運び違うから。親指の次、人差し指って交互にして同じ鍵盤弾くんだよ」
「……こう? 指がつりそう」
力が入りきらず、音が鳴らない。
何とか鍵盤に触れるので精一杯だ。
「難しい。私の指って短いのね」
「てか柔軟さが足りない」
飯塚の指摘に律は笑った。
「何よう」
「本当のことだろ。ほらほら、しっかり指動かして。ちゃんと開く」
「えぇー。ねえメロディー忘れちゃう。譲くん、ちょっと手伝って」
律が肩で飯塚を促す。飯塚は「仕方ねぇなあ」と言いながら左手で鍵盤を押さえた。
耳にすっと馴染む音が工場跡に響く。
「ほら、そっち」
「どれ……」
「これ。黒鍵と、この……」
飯塚が手を回し、律を包むようにして鍵盤に触れる。
律は飯塚の右手がぶつかり、右手を跳ねさせるようにした。
火傷でもしたのかと思うほど、触れた右手が熱い。
飯塚が音を鳴らした。
聞き覚えのあるクラシックのメロディーが、ゆっくりゆっくり紡がれる。
亡き王女のためのパヴァーヌ、切ないような穏やかな音色だ。
飯塚は集中している、律の手を導くと鍵盤に触れさせた。
心臓の規則正しい鼓動が背中に響く。
律は鼓膜まで叩かれるような心地に指を震えさせた。
「で、こっから指滑らせて……どうした?」
飯塚が律を覗き込んだ。
後ろから抱きしめられるような格好のため、顔がかなり近い。
息づかいすら聞こえる。
律は思わず顔を背ける。
明らかに意識した反応だ、飯塚がおかしく思うに違いない。
頭がぼうっとするままそう考えていると、飯塚は腕の力を緩めて体を離した。
「ごめん」
そう聞こえ、律は振り返る。
「あの、違うの、なんか、緊張して」
「俺今、すっげえバカになってる。嫌なら逃げてくれ」
「え?」
飯塚の手が意志を持って律の腕を撫でた。
彼は言ったとおり、律を拘束することはしないままに肩を抱きよせる。
全身の産毛が立ち上がるような感覚に体が震えた。
飯塚の指先が律のまぶたに触れ、そっと下ろさせる。
酸素を求めて開いた唇が、柔らかいもので塞がれた。
軽く触れるだけのキスだ。
律は涙が滲んでくるのを感じる。
それを隠すまぶたにも同じ温もりが落とされ、額にも頬にも口づけられた。
無骨ながら器用な手で肩を撫でられ、その手が耳から首筋、顎を撫でる。
「……っ」
猫でも撫でるような手つきに腰が抜けそうになり、律は思わず飯塚の胸を叩いた。
「……ごめん」
飯塚はそう言うと唇を噛み、視線をピアノに落とした。
拒絶されたと思ったのだろう、悔やむように眉を寄せる彼に、律は慌てて声をかける。
「ち、違うの。嫌じゃなくて……」
上手く言葉が出てこない。
顔をあげた飯塚は続きを待つように見つめてきた。
「その……な、なれてなくて……嫌じゃないから……謝らなくていいから……」
律がなんとかそう言うと、飯塚はふっと力を抜いて笑った。
「本当、素直じゃねえな……じゃあ仕切り直していい?」
「えっ……?」
飯塚が律の腰に手を回し、体を引き寄せた。
鼻が擦れそうなほど近づき、耳元に唇を寄せる。
「俺の部屋、来る?」
律は頭が沸騰するのでは、と思った。
***
きんと張り詰めていた飯塚の部屋の空気が、二人が入ることで一気に緩く流れ出す。
ギターやジーンズ、AV機器が溢れる部屋は、律の部屋とは当たり前だが違う。
匂いが違う、空気が違う、感触が違う。
だが不思議と居心地が良かった。
飯塚の持つ雰囲気と似て、雑多なものを許容する部屋である。
飯塚が律の髪を一房取って、香りを確かめると指に絡めた。
その仕草に胸がわきたつのを感じ、律は息を詰めると体を縮こめる。
飯塚が視線を寄越した。
「あのさぁ、いい加減な気持ちじゃないから。恋人になって欲しいとかじゃないけど、律のことは大事な仲間だと思ってる。バカだからそれしか言えないけど、傷つけるつもりはないから」
律は頷いた。
「うん」
「元彼のこと引きずってるのも知ってる。なんつーか……代わりってわけでもない。クッションみたいなもんって思ってて」
「それは……違うような……」
「違う?」
飯塚は律をベッドに座らせると、腰近くに肘をついて服の上から腹に顔を寄せる。
「クッションはいやらしいことしません」
「確かに」
「それに……もう引きずってないし……」
飯塚は服の裾に手をやりながら視線をあげた。
上目遣いに探るように見つめられ、律は頬を熱くさせるとぷいと横を向く。
「もう吹っ切った?」
「うん……時間がもったいないもの」
律がはっきりとそう言うと、飯塚が口の端を持ち上げた。
「だよな、賛成。頑張り屋さんの律を逃がすなんて、あいつは俺以上のバカだね」
飯塚は律を寝かせるとそのニットカーディガンをめくり上げ、目を合わせるとそのまま脱がせた。
ブラの線がシンプルな上衣に浮かび上がる。
律は心臓が早鐘のように鳴るのを感じながら、下唇を噛んだ。
「嫌になったら言えよ、即行でやめるから」
「それって……辛いんじゃないの? 私はもう頷いたんだから、覚悟出来てる……」
飯塚の手が律の頭から頬をしっとりと撫でた。頭が溶けそうな心地よさに律が目を閉じると、飯塚がそのまぶたに口づけ、口を開く。
「じゃあ、お互い気持ちよくなるってことで」
「うん……」
飯塚が顔を近づけ、律はぎゅうっと目を閉じた。先ほどとは違う、食むような口づけに頬が熱を持つ。
薄く唇を開けば、飯塚が角度を変えて唇を味わい始めた。
「んん……」
律は唇を吸われる度に肩が震え、上擦った声をもらすと身をよじった。
飯塚が逃がすまい、と両脚の間に律の脚を収めてしまう。
スカートがずり上がり、寒気を感じて手を彷徨わせた。
「どした?」
「……暖房……入れて良い?」
「ああ、忘れてた……寒いか」
飯塚は立ち上がるとヘッドフォンをかけてある棚に向かう。
律はその背中を見ながら、上半身を起こすと靴下を脱ぐ。
ピッ、とエアコンのスイッチが入る音がし、飯塚が振り返ると「おお」と声をあげた。
「いいな、ストリップ?」
「え? そ、そういうんじゃ……」
「いいじゃん、そのまま見せて。俺も脱ぐから」
突然の提案に律は戸惑ったが、飯塚を期待に満ちたまなざしで律を見るばかりだ。
「……じっと見てるつもりなの?」
部屋は電気が点きっぱなしなのだ。
「恥ずかしがってるのもエロい」
「もう!」
律は顔を赤くすると上衣に手をかけた。
裾を左右の手をクロスさせて持ち上げる。
キャミソールがずりあがり、白い乳房がカップの中でふるんと揺れた。
上衣を床に置けば、飯塚が感心したように律を見つめて言った。
「すげえ色っぽい。そのままスカートも脱いで」
律はむっと唇を尖らせながら、スカートのボタンを外して膝立ちになる。
すとん、とスカートが落ち、紫の花が刺繍された白いショーツが露わになった。
「キャミも」
「譲くんも脱いでよ……私だけ下着姿って、恥ずかしいよ……」
律はそう言う声がどこか甘ったるいものになり、息があがってきたのが自分でも分かった。
ショーツの中が熱い。
まだ触れられてもいないが、飯塚の熱っぽい視線が肌に刺さるようだ。
視線だけの愛撫。
それをくすぐったく感じ、キャミソールで肌を撫でるようにしてそれを脱ぎ捨てる。
ショーツと揃いのブラが露われ、谷間に髪が流れた。
律は流石に恥ずかしくてたまらなくなり、胸元を腕で隠してベッドに座り込む。
「すげえ」
飯塚は満足げに頷くと、シャツを無造作に脱いでジーンズのベルトを外した。
バックルの金属音が鼓膜に刺さる。
律は視線をそらすと枕にのの字を書き始めた。
「何それ、そんな恥ずかしい?」
飯塚は軽口を叩いたが、からかうようなそれではない。
律は耳まで赤くすると頷いた。
「マジ可愛い。こっち向いて」
飯塚がベッドに膝をつき、律の頬に手を添えた。
想像していたよりも柔らかい目つきだ。
律はほっとして素直に応じると、彼の口づけを受け入れる。
ふっくらとした唇が触れあい、ちゅう、と吸われると腰が震える。
むき出しになった律の肩に飯塚の手が伸び、そのまま背筋を辿るように背中を撫でられた。
律は力をなくしたように飯塚の腕に任せる。
ギイッ、とベッドがきしんだ音をたてて二人を受け入れた。
律は飯塚の背に手を伸ばし、抱きしめた。
飯塚は整備士なだけあって流石にたくましく、器用に律の体を撫でると額から生え際に丹念に口づけを落としてゆく。
溶かされそうなほど熱い唇だ。
律は口を開けてはあ、と息を吐き出すと、その息も熱くなっているのに気づいて目を開けた。
飯塚が乳房に手をやり、ブラごと感触を確かめるようにするとふにゅっと掴んだ。
カップから乳房がこぼれ、律は体を熱くすると手で隠す。
「隠すなよ」
「恥ずかしいもの……ねえ、電気消して?」
「い・や・だ」
「じゃあ、せめて、布団……」
律が手を伸ばしてかけ布団を取ろうとしたが、飯塚が易々とそれを遠ざける。
ベッドの足下からかけ布団が落ちた。
「ねえ~」
律が情けない声を出すと、飯塚がふっと笑って律の唇を奪った。
「最初のえっちなんだし、全部見てたいんだよな」
飯塚がそう言うので、律はせめて、と固く目を閉じて腕で顔を隠した。
「隠すのかよ。まあいいや」
飯塚は律の両胸を両手で包む。
寄せてはぽよぽよと揺らして楽しんでいるようだ。
「ちょ、ちょっと……」
律が手を止めようとすると、飯塚は寄せた胸元に鼻先を埋めてぱっと顔をあげた。
「すっげえ気持ちいい。律胸でかいな」
飯塚は手を離した。メロンほどありそうな左右の乳房が揺れながら重力に従い、カップにおさまった。
だがバストトップが天井を向いて、張りのあるのが見て取れる。
「着やせするんだ。知らなかった」
「も、もう言わなくていいから……」
飯塚は白いメロンのような律の胸を揉みしだき、味見でもするかのようにぺろりと舐めた。
谷間に近いそこが唾液で濡れて光る。
「いい匂いしてきた。……胸せめられんの、好き?」
「……嫌いじゃない……」
「素直じゃないねえ、それって損しない?」
「さ、さあ……そうなのかな……」
飯塚はブラの肩紐をずらし、なめらかな肩にかかった髪を背中に流すと鎖骨にちゅう、と音を立てて吸い付く。
「ん……」
ぴくっと肩が跳ね、鼻をつまんだような声が喉の奥から漏れ出る。
鎖骨の中央の溝、その下、胸までの平らな部分まで、デコルテ中に薄い花びらが散ったように赤い跡が出来てゆく。
飯塚はブラのストラップをずらし、脇に舌を埋めてじゅるっ、と舐めた。
「あっ……!」
「ああ、脇弱いんだ。バンザイしたらもっと舐めてやるよ」
「い、いい。要らない……」
「ほんとにぃ?」
いたずらっぽく言いながら、飯塚は律の背中に両手を回すとブラのホックを外す。
ふっと締め付けがなくなり、体が楽になった律は枕に手をやった。
胸の先で咲くのを待つ蕾のような乳首が、外されるブラで擦れて固くなるのを枕を掴むことでごまかす。
うっすらと色づく淡い蕾に、飯塚が視線を落とす。
「すげえ綺麗」
その視線が律の性感を呼び、恥ずかしくなって顔を横にふった。
「見ないで……」
「それは聞けない……。美味そう、舐めていい?」
ダメとも言えずに固まると、飯塚が探るような目で律を見つめた。
「素直じゃないよな、本当」
そう言うと、きゅんと固くなった蕾を舌先でつうっと舐めた。
熱い電流のようなものが走ったように感じ、律は息を詰めると飯塚の肩に手を置いた。
「あっ……待ってっ……」
「待って? 無理無理。本気で嫌だったら殴って」
「嫌じゃないっ……けどっ」
律が言い終わらないうちに飯塚は舌先で蕾を弄くった。
じんとする快楽に腰が怪しく揺れる。
たっぷりの唾液で蕾がぬらぬらと濡れ、赤く染まりだした。
「んんっ……!」
「いい反応。もっとしようか」
飯塚は右胸を唇で撫で、こりこりと固くなる蕾をちゅうっと吸い上げる。
左胸を手で包んで形を変えさせながら、赤くなる蕾を弾いた。
「……っあ……ぁっ」
律は声を押し殺したため喉がひりついて、口元を左手で隠すと右手で鎖骨を押さえた。
「んん……んぅ……!」
「声出せよ」
「い、や……!」
律は必死に首を横にふり、目を固く閉じた。
ショーツの中が熱く、重く、脚をすり寄せると粘着質なものを感じて全身が更に熱くなる。
「感じやすいんだ。すっげええっち」
飯塚は含みを持たせた声で、唸るように言う。
律はいやいやをすると言い返そうとした。
「そんなことっ」
「これしてみたかった」
飯塚はどこ吹く風だ、完全にペースを掴むと律の両胸を両手で包み、寄せて赤く膨らみ始めた蕾を集める。
飯塚は息を吸い込み、二つを一度に舐めた。
「あ……!」
一際高い声がもれ、首筋をそらすと浅く息をする。
飯塚は律の反応を見ていたが、胸の感触を楽しむと口に含み、ちゅううっときつく吸って舌でべろりと舐めあげる。
「ん……ん……! 譲く……待って……」
「待つ? 何を?」
飯塚は口から蕾を解放すると、律の鎖骨から首筋に唇を這わせ、耳に音をたててキスをする。
体を震わせる律をあやすように髪に指を入れて頭を撫でた。
律にはその緩い愛撫すら官能を呼ぶものになり、はあ、と熱い息を飯塚の肩にかけた。
「む、胸……もう、やだ……:」
長く受けていない刺激に、胸が熱くなって痛みすら感じる。
どきどきと心臓がうるさくなって、律はそれをなだめるように手のひらを谷間に当てた。
飯塚がゆったりとそれを見つめる。
「胸、もうやだ? 仕方ねぇな、次どうして欲しい?」
「ん……え……っと……」
律はぼうっとしたまま目を開ける。
間近でぶつかる飯塚の目は、情欲でじっとりと色が重く、見ていると頭まで犯されてしまいそうだ。
彼も息を荒くして、律の姿に興奮しているのがよくわかった。目をそらすことも出来ないまま息を整え、飯塚の胸元に手を滑らせる。
うっすら汗ばんだ肌を撫でると、飯塚が腹の底から深い息を出した。
「なに、マッサージしてくれんの?」
「うん。なんか……触りたくなって……」
「そう? まあ体には自信あるけど」
ホームレスに耐えたし、と飯塚はおどけて見せる。
その余裕に満ちた彼の笑顔に律はようやく体の強ばりが抜け、頬を緩めると筋肉のラインにそって指を這わせる。
胸元、腹、へそ、肋骨の部分、と手のひらも使って体を辿る。
体温が馴染み、飯塚の呼吸が深くなるのが伝わってくる。
顔を見れば、飯塚が唇を噛んで息を殺していた。
「……気持ちいい?」
そう聞けば、飯塚は目をそらす。
彼のその目元が赤い。
「嫌ならとめてね」
「嫌じゃないし……」
「譲くんも素直じゃないよね……」
飯塚は腕を伸ばして上半身を支え、律の腰に手を回すと身を起こした。
ベッドで向かい合って座る格好になり、律は腰を曲げて飯塚の腹に口づけた。
「うっ……」
「しょっぱい……」
「汗汗」
「お仕事頑張ってるもんね」
「……そういうこと」
律は左右の肋骨のあたり、意外に広い胸にちゅう、と唇で吸い、見上げると飯塚の視線とぶつかった。
飯塚の手が律の頭を撫でながら、色づく乳首へ導く。
律は髪を耳にかけながら、グミのように弾力のあるそれに吸い付いた。
「うぁ」
と、飯塚が喉を震わせて声を出したかと思うと律の細い肩を止める。
「嫌だった?」
「ちょっと手加減して。声でる」
「声出るのが嫌なの?」
「そりゃそうだろ、男が喘いでどうすんだよ」
「……気になるものなの?」
「気になる」
女子の声は興奮するんだけど、と飯塚は律の耳に歌うように囁き、彼女の腰を震わせた。
「あっ……!」
「それそれ。ヤバい、もう勃ちそう。キスさせて」
飯塚は律の顎をすくい上げ、上向かせると唇を吸って舌で舐めた。
「んぅ……っむ」
戸惑って反応が遅れた律に構わず、飯塚は舌を口内に進入させると好きになめ回した。
されるがままの律は溺れそうなキスに体温を高めたが、こんな荒々しいキスはされたことがない。
混乱がきわまって視界をぐるぐるさせる。
「む、ちょ、ま……っ」
歯列に上顎を余すところなく舌でなぞられる。
律は飯塚を叩こうとしたが、力強く抱きしめられかなわない。
飯塚が満足したのか唇を離すと、どろっと唾液が垂れて律の顎から胸元に落ちた。
「苦しいってば……」
そう言えば、飯塚がそろそろと律の背中を撫でながらふふっと笑った。
「ごめん」
「もう……」
息を吸い込みながら睨めば、飯塚は余裕に満ちた顔で見下ろしてくる。
律は口をむっと尖らせると飯塚の脇腹をくすぐった。
「おい、ちょっと!」
飯塚は笑いながら律の手を止めようとする。が、くすぐったいのか上手く力が入らないようだ。
律はひとしきりくすぐると手をぱっと離す。
飯塚がひいひい言いながら律の手首をとってベッドに押し倒した。
「油断ならねぇ」
「そっちこそ」
そう言い合って、唇を重ねる。
角度を変えて深くすれば、唇の柔らかさに胸が跳ねるようだった。
舌の表面をなぞられ、腰を揺らすと飯塚の右手が胸から腹へ、徐々に下げられてゆく。
飯塚の手が腰を掴み、離すと恥骨からお尻に伸びる。
「ああ、すっげえ気持ちいい」
飯塚は律のお尻をむにゅむにゅと掴んでは撫でる。
しっとりと、しかし弾むような感触は立ち仕事の賜物だ。
「気に入った?」
「うん。何、胸あるし尻しっかりしてるし。もったいないな、なんで隠してたんだよ」
「隠すって……見せるものでもないような……」
「……ホットパンツとかミニスカートとか」
「寒いよ」
「いやいや、見せるべきだって。あ、やっぱなし。見せなくて良い」
「どっちなの……」
「律がモテたら困る」
「なんでよ」
「腹立つじゃん、なんか」
どういう意味、と律は思ったが口には出さずに噤む。
飯塚の手が内ももに伸び、じわじわと熱に近づいてきた。
律は息を詰めると飯塚の体に手を這わせる。ふにふにと乳首をつまむと、飯塚が唇を噛んで言った。
「好きなの? そこ触るの」
「面白いもの、ここの感触」
「男のなんか触っても意味ないって」
「気持ちよくない?」
「……ノーコメントで。それよりこっち触っといて」
飯塚に手を導かれ、下着の中で存在感を増すモノに触れる。
じっとりと重さを感じるモノのごつごつした感触に全身が反応する。
中が疼いたのは本能なのか、律は息を整えるとそっとモノの形をなぞる。
飯塚が律の手の動きに合わせて息を吐き、肘を枕元につくと、律のむき出しの首筋に口づけた。
舌で血管の通る辺りをなぞられ、律は耳まで熱をあげるとぎゅっと目を閉じる。
「……っ」
「声出せよ」
耳たぶを咥えたまま唸るような声で言われ、律は肩を震わせるとつい声をあげた。
飯塚の指がショーツを辿り、くぼみに指を食い込ませたからだ。
「んん……っ」
「すげえ濡れてる……俺の指、ふやけそう」
鼓膜に響くほどの距離で囁かれ、律は体を強ばらせると息をつめた。
まだショーツを穿いているのに、くちゅくちゅと粘着質な音が聞こえてくる。
まだ触れられていない花芽のようなクリトリスがじんじんと熱く、震え始めた。
「……ふ、う……!」
甲高い声が喉の奥から出た。飯塚がにやにや笑う。
「良い声」
「ゆ、譲くんは?」
「俺? 気持ち良いよ。直で触って、もうちょいでかくして」
律は飯塚の下着の中に手を入れ、そろっと脱がすとモノを外に出した。
ぴょこん、と勃ちあがるそれを見れば、目元まで火傷したように顔が熱くなってしまった。
「見るの初めてじゃないだろ」
飯塚がどこかおかしそうに言った。
「……そうだけど……」
「分かってるって。律、ヤリマンじゃないしな。セカンドバージンだったりして」
飯塚はそう言うと律の額にちゅっとキスする。 律はそれを指でさすり、「そういえばそうかも……」と小声で言った。
飯塚のモノを触れば、固く、筋張った竿がだんだん湿り気を帯びているのが分かる。
指を滑らせ、先端の鈴口をつんつんすれば、とろっと我慢汁が指を濡らした。
「譲くんも濡れてる」
「やばいな。律、手先器用なの忘れてた。もう離して良いよ」
律は言うとおりに手を離す。
ちらっと見れば、太いドリルのように、重く鋭そうな形をしている。
律は下唇を噛んで視線を逸らす。
(どうしよう。ちゃんと入るかな)
半年以上は乙女生活だったのだ、中は確実に狭くなっている。飯塚がショーツごと指を食い込ませている部分が、きついくらいにきゅう、と締まり、体が強ばってきた。
「尻あげて」
「え?」
「脱がすから、尻あげてって」
「あ、うん、そうね……」
律がお尻をあげると、飯塚がショーツに手を入れ、お尻を直接撫でてずらしてゆく。
飯塚は体をすり寄せながら下がり、胸に腹に音をたてて口づけて露わになる下腹部、脚の付け根をべろりと舐めてちゅうう、ときつく吸い上げた。
「痛っ……あっ」
飯塚は律の両脚を持ち上げ、秘部をさらけ出す。
「や、ま、待って」
つう、と蜜が流れ、お尻にまで垂れる。
飯塚がそれを舌でなぞった。途端、ぞくぞくとうずきが背筋に流れた。
「あっ」
「やーらしい。触ってないのにひくひくしてる」
「見ないで……っ」
「綺麗な色してる。見ないでいられないな」
飯塚は脚を下ろすと広げさせた。
律は脚をばたつかせ、手を伸ばして隠そうとするが飯塚の手でやすやすと両手を捕まえられてしまう。
飯塚の指が蜜で濡れた花びらをめくり、熱を持つ蜜口を広げる。
また蜜が溢れてきた。
「ここ、あんま使ってないの? きれいなピンク色だけど」
「見ないでってばぁ……!」
「そんなに見ないで欲しい?」
情けない声を出す律になだめるよう飯塚が問う。律が頷くのを見て、飯塚はふっと笑った。
「じゃあ舐める」
「んん……っ!」
飯塚は舌を出すと、めくった花びらをねっとり舐めた。
熱い舌で触れられ、じんじんとした疼きが体の奥に生じる。蜜がたっぷりと溢れ、飯塚はじゅるじゅると音を立ててそれをすすった。
「あ……っ!」
腰が逃げそうになり、飯塚の手がそれを押さえる。
「逃げんなって」
「違っ……あっ、ねえ……!」
長く味わっていない快楽に、体が混乱しているのだ。
じわじわと熱に浮かされ、自制がきかない。
「イキそうなの……っ!」
律が悲鳴に近い声でやっと言えば、飯塚が顔をあげて指を蜜壷に沈めた。
「!」
「顔見せて」
「だめ……!」
中を探られ、飯塚が体を持ち上げて顔を覗き込んできた。
脚を挟んで開かれ、股のモノが太ももに擦れて濡れてゆく。
「んんん……!」
「我慢すんなよ、イっていいから」
飯塚が花芽を指の腹でくりくりと撫でた。
ぱんっと弾けそうな強い快楽に律は目尻に涙を浮かべる。
溺れそうな人のように飯塚の腕にしがみつき、つま先にまで力を入れると寄せてくる波に意識を預ける。
蜜壷の中と花芽とがぐううっと熱を集め――
「……っあぁ!」
ぐわっと爆ぜると体がびくびくと跳ねる。
飯塚がそれを押さえるように唇を重ね、舌を絡め取ると髪を撫でた。
唇が解放され、律がぷはっ、と息をすると飯塚が瞳の色を濃くしてじっと見つめてきた。
「イクの早かったな」
「……だって……」
「長くしてないからだろ? ここすっげえ狭い」
飯塚が蜜壷に沈めた指をくいっと曲げた。
鈍くなったのか、それが重くすら感じる。
飯塚は律をじっと見つめ、中を探り続ける。
律はそれがくすぐったく感じた。
体感ではなく、心がくすぐったい。
「ふふっ」
と笑えば、飯塚がむっとした。
「余裕かよ」
「違うってば。嬉しいの」
「嬉しい? 何が?」
飯塚に目を合わせて笑うと、彼の肩に手を置いて胸に額をくっつける。
「気持ち良いようにしてくれてるんでしょ?」
そう言うと、飯塚がわずかに頬を赤くした。
「そりゃ……女の子が気持ちよさそうにしてるのを見るのが好きなんでね」
「女の子って年齢でもないけど……」
「女の子で良いじゃん、こういう時くらい」
律が顔をあげると、飯塚が瞳を広げて見つめてくる。
彼の目尻が柔らかくなっているのを見ると、律は胸がむずむずするのを感じ、手を伸ばして飯塚の顔を近づけさせるとその目尻に口づけた。
「良いねぇ、こういう不意打ち。口と耳にもしてくれよ」
飯塚が余裕を見せ、律は声を出して笑うと飯塚の腰に脚を絡めて身を起こす。
飯塚が意図を汲んで、律から指を引き抜くと腰を持ってベッドに背中を預けた。
飯塚に跨がり、髪を背に流すと彼の頬を包んで口づける。
柔らかい感触が気持ち良い。
飯塚に背とお尻を撫でられながら、耳もとにも唇を滑らせた。
まるで子犬か子猫のじゃれ合いだ。
性感はあっても恋人同士の情事のような官能とは少し違う。
それが心地よかった。
飯塚の手が胸に伸び、乳房と乳首をいたずらに触れる。
「んん!」
腰がぴくんと跳ね、飯塚を軽く睨むとお尻を掴まれた。ぐいっと広げるようにされると、蜜壷が疼きを取り戻す。
「譲くんっ」
「何? お、けっこう柔らかくなったな」
「う……んん」
飯塚の指先が蜜口を撫でる。
そこはウミウシのように、なめらかに蠢いて飯塚の指を包んだ。
徐々に快楽を思い出し、また熱を生み始めたようだ。
律は頭を振ってごまかすと、飯塚のぴんと勃つモノをそろっと撫でた。
飯塚の腰があやしく跳ねる。
「やべぇ、律ってマジで器用」
「撫でられるの好き?」
「そりゃな。でもマジで待った。挿れたくなるから」
「……」
飯塚が言ったことに律は手を止める。
何も出来ずにいると、飯塚が頬に触れてきた。
「……嫌なら挿れないけど」
そう言いながらも、彼のモノは張り詰め、びくびくと揺れている。
律は眉を寄せ、唇を噛むとその場に座り込んだ。
飯塚がふうっと息を吐いて正面にむいてあぐらをかく。
「……やめとく?」
そう低い声が聞こえ、律は顔をあげないまま手を伸ばす。
飯塚の節だった指を掴むと、きゅっと握って首を横にふった。
「ううん……最後まで、しよう?」
そう小声で言って目線をあげれば、飯塚はまっすぐに律を見つめ、覗き込むようにして髪をかき分けると、ちゅっとキスをした。
「……じゃあ、ゴムつける」
そう改めて告げられ、律はしっかりと頷くと自身からもキスをする。
飯塚は脱ぎ捨てたジーンズのポケットからコンドームを取り出した。
慣れた手つきで封を切り、片手で器用につけながら律の首に手を回してキスをする。
唇を舌で舐め、開けさせると口内へ。
口元からぐちゅぐちゅ聞こえ、律は顔を熱くさせて体の力を抜くと、飯塚の肩に手を回してそのまま押し倒される。
舌を丹念に吸われ、ぱっと離れると飯塚が下半身を両脚の間に収め、覆い被さる。
ぶわっと鼻腔を刺激するような男性の匂いがして、律は酔ったような心地になった。
脚を持ち上げ、飯塚の腰にすり寄せると飯塚の手がそれを掴んでお尻まで撫でる。
「くすぐったいっ」
「マジで? 開発の余地あるなぁ」
「もう。冗談ばっかり」
「どうかな」
飯塚は余裕の笑みを見せると上半身を起こして、股のモノをたっぷりと蜜で濡れ蜜口にあてがった。
鋭さすら感じるそれの感触に驚き、無意識に蜜口が締まった。
飯塚はモノの先端で蜜をすくうようにし、ゆっくりと花びらから花芽、脚の付け根までをぬるぬると移動させる。
律は熱いモノでいじられ、息をもらすと口元に手をやった。指先を噛んで息をすれば、徐々に熱いものになっていることに気づく。
「ん……」
「……良い感じ。これ気持ちいいな。律は?」
「良いけど……っ」
じれったい。
緩く熱い刺激に、腰がもっと、早く早く、と勝手に動き出す。
「あっ……」
「その動き、すっげぇやらしい……ここもひくひくしてる」
「やぁ……」
飯塚がふいに花芽をちょんと押した。
熱い電流が流れるような快感に、律は高い声をもらす。
「そんな動いたら入らないって……」
飯塚が息を荒くしながら、からかうように言った。
律は口を両手で押さえ、涙目になりながら飯塚を見つめた。
「だって……!」
「じゃあ我慢な。ほら」
「あ……っ!」
飯塚がぐうっと花芽を押した。背筋がそるほどの快楽が駆け上り、律は目尻に涙を流すと息を整え、飯塚の手を叩いた。
「意地悪っ……! わざとでしょっ?」
「悪い。律可愛すぎるから、つい。もう挿れるから、本当に」
「早く……っ!」
懇願するよう言うと、飯塚が深く息を吐き出し、モノの先端を蜜口に沈めた。
こぽっと音がして、蜜を溢れさせながらモノが入ってくる。
律は圧迫感に眉をひそめ、ぐっと唇を噛むと下半身の力を抜いた。
「きつ……っ」
飯塚が呟くのが聞こえ、律は指を噛むと息を吐いて腰を伸ばした。さっきよりはスムーズに、モノが入ってくる。
「んん……!」
飯塚がうめくようにし、律の腰を持つと腰をぐんっと進める。
ずるるっ、と潤んだ内壁を擦られながら、モノが狭い部分を超えて収まった。
律ははあ、と息を吐き出し、目を開ける。
飯塚が眉を寄せているのが目に入った。
「譲くん……?」
「……すっげぇ良いよ、熱くて……」
律は体の熱を持て余しながら頷き、ふと気づいた違和感で視線を落とした。
飯塚のモノは入りきっていない。
「あ……ねぇ……」
「もうちょい、このまま……ここ、良くない?」
モノの先端が中程の天井を撫でた。
律はじんじんする感覚に目を瞑ったが、はっきりとは感じない。
「わ……わからない……」
「そう?……律って中で感じる?」
「え?」
飯塚の問いに律は首を傾げた。
思わず佐竹との情事を思い返してしまったが、中が気持ちが良い、というのは曖昧だ。
花芽に触れられて、というのは覚えているが。
「わ、わかんないよ……」
「そうなの? 苦しくは、ないんだよな?」
律は頷いた。見れば飯塚の方が苦しそうではないか、唇を噛んで、眉を寄せている。
手を伸ばして飯塚の手に触れると、目が合った。
「苦しいの……?」
「まさか……だったら中でしぼんでるって」
そう言われ、律は体を熱くさせた。中にあるモノを意識してしまったからだ。
ゴリゴリと固く、熱いそれは律の中で強く脈動している。
頷くと飯塚がほっと息を吐き出した。
「奥……来ないの?」
「行きたいけど、色々確かめたいんだよな……」
「確かめる……?」
飯塚は目元を赤くしながら、腰を揺らした。
モノが中で蠢いて、内壁をぞろぞろと擦りあげる。
もぞもぞとした感覚の中、じんじんするものはあるが快楽には遠い。
律はぶんぶん頭をふった。
「あの、あんまり、感じない……」
律がそう言えば、飯塚はゆったりを笑った。
「そうなのか? よっしゃ……」
飯塚は律を抱き起こし、膝に座らせると腰を支えた。
「ど、どうしたら良いの?」
「俺ので中イかしたいけど、今日は無理っぽいから諦める。でも奥まで入れて、俺イって良い?」
汗ですべりそうな律の腰を、飯塚はしっかり抱いていた。
はあ、とかかる飯塚の息が熱く、モノは熱棒となっていた。
律は頷いて、飯塚の首に手を回すと肩を抱いて息を吐き出した。
ぬぷぷっ、と蜜がモノに押されて溢れ出し、飯塚の太ももを濡らす。
「はぁ……!」
ぐぷっとモノが根元まで入り込むと、飯塚が喉を震わせて満足気な息を吐き出した。
内蔵を押し上げられるような感覚に律は目の前をチカチカさせたが、お腹いっぱいに満たされる感覚に陶酔に似たものを味わう。
飯塚の首を抱きよせ、すうーっと息を吸い込むと、汗混じりの男の匂いでいっぱいになる。
頭がくらくらした。
「っあぁ、すげえ。律ん中きっつい」
「……大丈夫?」
飯塚が口元に笑みを浮かべ、律の髪、肩を撫でた。
「すっげえ気持ちいい。すぐ出そう」
「……そうなの?」
「動いたらやばそ」
律はぷっと笑って腰を少しだけ動かした。飯塚が「うっ」と声をあげる。
「追い詰める気かよ」
「えへへ。なんか、つい……」
「くそ……何だよ、それ可愛すぎ」
飯塚は律の頬を挟むと尖った唇をかすめ取る。
ちゅっと唇が離れると、飯塚は律の腰を両手で抱いて、脚を揺らした。
律の花芽が赤く膨らんで、密着した肌に擦れて熱を思い出し、背中が震える。
「あ……」
上擦った声が漏れ、手で口元を隠すと飯塚がその手を剥がした。
「そのまま喘いで、声聞かせてくれよ」
「や……だ、あっ!」
意固地な律の花芽を、飯塚の指がとらえる。
体を揺さぶられ、中を貫かれながら刺激され。
きつく彼のモノを締め付けるのを自覚して、律は胸元まで熱を高めると飯塚の肩に額を預けてくぐもった声をあげた。
「あぁ……中濡れてて良いな……音聞こえる?」
「き、こえる……」
飯塚が下から突き上げる度、奥がずんずん鈍く疼いて蜜をとろけさせる。
ベッドのきしむ音の中にぬちゅぬちゅ蜜の音が聞こえ、律は耳が火傷したのでは、と思うほどの熱を感じた。
「耳栓欲しいくらい……」
「俺が栓してやろうか?」
嫌な予感がして慌てて断ろうとしたが、飯塚は止める間もなく耳に舌を埋めた。
「ひぁっ……!」
ずるずるっと脳まで舐められているような感覚に肩を縮め、目をきつく閉じる。腰が揺れ、飯塚を追い詰めた。
「うわっ、やべ」
飯塚が慌てた様子で耳を離し、律の腰を抱え込んだ。
「出るとこだった」
「み、耳禁止っ」
「マジかよ。せっかく良いとこ見つけたのに……まぁいいか……そろそろ終わらせないと明日響くぞ」
「え、あ……うん」
「つかまってて。ちょい激しくする」
飯塚に導かれ、律は両手を飯塚の肩から背中に回した。
飯塚は律の首すじを撫でるように唇で触れ、鎖骨を舐めて吸い上げると右手を腹に沿わせて蜜で濡れそぼつ花芽を撫でた。
「あっ……!」
「こっちでイケそう?」
「う、ん……!」
飯塚がギイッ、とベッドをきしませて腰を強く突き上げる。
律の肩に、はっ、と獣じみた飯塚の息が肩にかかる。律は花芽をいじられながら聞く息づかいに体の芯まで熱で焼かれるような快楽を味わった。
「っ……あぅっ」
飯塚の肩でくぐもった声をあげ、背に回した指に力が入る。
飯塚はぐっ、ぐっ、と腰をつきあげ、息を乱し始めた。
「やべ、も、出そう……!」
「あぁっ、う……いいよっ、イってぇ……!」
「律も……っ」
飯塚はぐりぐりっ、と花芽を指で押さえ、律の顔をあげさせて深く口づけた。
「んん~……っ!」
舌で舌を撫でられ花芽をつままれると、熱いものが押し寄せてくる。律は喉を仰け反らせた。
「っあぁ……!」
と悲鳴に近い声をあげれば、じんじんする熱が蜜口を走り抜けた。途端、飯塚のモノが一段と重みを増す。
「出る……!」
「あっ……!?」
飯塚が喉を引き絞るようにして息をし、律の体をきつく抱きしめると、そのままベッドに倒れ込む。
律は下敷きになりながら必死に背中にしがみついて、揺さぶられる度に高まる熱に声を抑えることも忘れてしまった。
「あっ……あぁ!」
花芽をこねくり回され、中を突かれて脳まで溶かされそうなほど気持ちいい。
ぐいぐいっ、と体が跳ねるほど揺さぶられるとたまらず一際高い声で喘ぐ。
「あぁあっ! もう、イク……!」
「俺も……イクからっ……!」
ずっ、ずっ、ずっ! とベッドごとお互いの体が揺れると、律の中がびくびくっ、と震えて飯塚のモノをきつく締めた。
熱い迸りが薄いゴムの中に流れ、別の意志でも持っているかのように内壁がそれを飲み込むように蠢いた。
律の体が陸にあがった魚のように跳ねるのを、飯塚がきつく抱いて留める。
二人して湿った息を大きく吐き出し、不器用に酸素を吸い込むと、どちらからともなく唇を求める本能に従った。
飯塚の手が伸びて、律の頭を抱く。
頭をゆっくり撫でられる心地よさに、律は目を閉じると返事をするように彼の背を撫でた。
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