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(イラストは個人で描いたものであり、下に紹介する音声作品とは関係ございません。
絵画ではおじいさんの姿で描かれることが多い王様ですが、王女は(当時)結婚適齢期で16歳くらいなのだから、王様は30前後だろうと思うのですが……)
物語読み上げです。
©VOICEVOX:四国めたん
王妃を失くした王様が、まさか実の娘に求婚するという物語。
それだけ聞くと「うぇっ!?」となるような近親相姦もの……しかし皮肉を描かせれば天下一品だったグリム兄弟。だからタイトルもロマンスのかけらもない「?」となるようなものだったのではないでしょうか……。
そこにはどのような意味が込められていたのか……。
ざっくりと物語説明
幕開け・王妃の死
死の床につく王妃、遺言として王様に言います。
「私とそっくりな女か、私より美しい金髪の女と再婚を」
それから月日は流れ、王様は王妃の遺言を守り妻に相応しい女性を探すもののなかなか見つかりません。
ある日王女の部屋をのぞいた王様。
そこにいたのは死んだ王妃にそっくりで、かつ彼女よりも美しく育った娘の姿。
遺言を守れるのは娘である王女だけ。
王様は王女に求婚することになります。
第1章・結婚の条件
王女は結婚の条件として、太陽、月、星のような美しいドレスと千匹の獣の毛皮を持ってくるよう言います。
王様はその無理難題をクリア。
しかし近親結婚を嫌がる王女は、太陽、月、星のドレス、金の指輪、金の糸枠、金の糸を持ち、顔と髪をすすで汚すと千匹の獣の毛皮をかぶり、城から出て森の中に身をひそめることに。
第2章・千匹皮としての生活。
そうするうちに城勤めのものに拾われ、彼女は千匹の獣の毛皮をかぶったまま城へ戻ることになりました。
「千匹皮」と呼ばれる王女。舞い戻った城で、台所で勤め始めます。
彼女は料理が得意!たちまち評判となり、王様にお出しするスープ作り担当となります。
最終章・そして結婚へ
ある夜、舞踏会が開かれ、千匹皮は太陽のドレスを身にまとい現れます。
王様に見初められる千匹皮。しかし正体がばれる前に逃げ出します。
王様にお出しするスープを作るよう言われた千匹皮。
彼女はそこに金の指輪を落としました。
金の指輪に気づいた王様、作った者を呼び出しますが、そこでも千匹皮は姿を見破られないようにふるまいます。
二度目の舞踏会では月のドレスで現れる千匹皮。
王様と二度目のダンスです。王様は彼女の金髪にいよいよ勘づきましたが、千匹皮はまたも逃げ出します。
千匹皮はスープの中に金の糸を入れました。
王様はスープの中にあった金の糸に気づき、再び千匹皮を御前に呼びますが、またも千匹皮ははぐらかします。
三度目の舞踏会、星のドレスを身にまとって現れる千匹皮。
やはり王様とのダンスの後逃げ出しますが、そこでうっかり自分の指にすすを塗るのを忘れてしまいます。
王様のためのスープに、最後の糸枠を入れる千匹皮。
それを見つけた王様はいよいよ王女が城にいることを確信し、千匹皮を呼びつけ、その指が白いのを見つけると毛皮とすすを落としてしまいました。
現れる金髪と王妃そっくりの美貌。
ここにふたりは再会し、結ばれ、幸せに暮らしました。
という、なんじゃこりゃ?なお話。
勝手に考察
©VOICEVOX:四国めたん
当時のヨーロッパの王室では、近親相姦が当たり前だった?ようです。特にハプスブルク家は有名ですね。
血統主義的な側面を持つ王室。
その中では従兄弟・従姉妹同士ですらも争うのがよくある話。
だったら親子・兄妹で関係を持ち、子を作ることでより強い結束を望んだ……かもしれません。
王妃がなくなった場合、娘が王妃の座につくことはかなり普通だったよう。
しかし近親相姦は子供への悪影響があります。遺伝子の異常を引き起こし、体が弱くなったり、知能が衰えたり、奇形児が生まれる……という負の側面も多いもの。下あご突出とか。
一見純粋な王室の存続のためっぽいですが、権力保持や保身のためだった可能性は極めて高い。
欲望のためにそのような婚姻を繰り返せば、内部から崩壊するのは仕方のない事。
グリム兄弟はそのような「権力のための近親結婚」に対しての痛烈な皮肉を込めていたのではないか……という説があります。
なぜ王女は千匹の獣の皮をかぶったのか?
有力な説は、「死んだ獣」をまとうことで、「王女だった自分」を死で覆い、そこから毛皮をはぐことで新たな身分の女に生まれ変わった……ということにしたのではないか、というもの。
これにより肩書的には近親婚じゃないよ、という「体」を装った、みたいなね。
教会との関係が中世ヨーロッパでは複雑だし、近親婚を認めていたり禁止していたりと色々な法があったっぽい。
それのカモフラージュなのかな……という。
王女は王様が用意した美しいドレスを身にまとい舞踏会に参加。
さらに金の指輪を落とすのは、「わざと」であったと考えられています。
王女自身も王と結ばれるために行動していた感があるということです。
そこに王への愛情があったのか、あるいは王妃という地位に魅力を感じていたのか、はたまた違う、純粋な思惑があったのか……。
とまあ、グリム童話はさすがにちょっと引いてしまうような内容。
書き換えられた物語では、別の国の王子様と千匹皮が結ばれるという物語になっています。
どっちが良いとかの問題じゃなく、近親相姦うんぬんというより、血統主義的な部分への挑戦だったのかな、と思うと、この物語は皮肉としては興味深いものがありますね。
この物語を知ったきっかけ。
©VOICEVOX:四国めたん
こちらですね。これはすごく聴きごたえあります。大好きですね。
こちらは近親相姦ものではないので、安心して下さい。
さすがに茶介さん。あれもこれもそれも(!!!)お上手で、うっかり惹き込まれます。
ちゅうだけでどきどきそわそわ。気持ちよさそう~。
グリム兄弟に指示されたまま王様を「演じる」彼。という設定で動いているのが何とも面白い。
絵の中の人物として、いつしか心(念?)を持つようになったという描写もあり、なんというか日本の「付喪神」的な雰囲気が。
「見たこともない妻をなくしていたし、娘という女は、なぜか私を邪険にする」
このセリフは面白かったし、
「恋をされたと感じた」
このセリフはなんだかぐっと来たなあ。
夢から目覚めるヒロインを手元に置いておくことは出来ない、と悟った王様の最後のセリフがずるい……しかし王様かっこいいな。茶介さんのトーンがまたよく合う!!!
聴く前はヒロイン、もうちょっと大人しい女性なのか?と思っていましたが、そうでもなく表情豊かで明るい、可愛い感じの女性でしたね。
「淫魔扱い」はちょっと笑っちゃったけど、まあ、それも良しとしよう。栄さんなら受け止めてくれるんだから。
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というわけで、グリム童話「千匹皮」でした。
歴史ものとして考えるなら面白い物語です。おとぎ話としては……ちょっとどうなんだろうか?な感じですが。
それでは、ありがとうございました。