小説 続・うそとまことと

第2話 その夜(官能シーンあり)

 

 彼は浴室の電気を点けると琴を下ろし、服を脱ぎ始めた。
琴もいそいそと服を脱ぐ。
 都筑が琴の髪を持ち上げた。
 気分転換に、少しだけウェーブをかけた髪は汗でしっとりしている。
 それを見つめる都筑の目は情欲をにじませ、色が濃くなっていた。
「どうかしたんですか?」
「いいや……」
 都筑が顔を寄せた。彼の愛撫ですっかり感じやすくなった右耳は、息がかかるだけで腰に走るような快感を得てしまう。
「まだ、ダメ」
「どうして」
「汗かいてるっ……」
 荷物を入れるだけとはいえ、初夏の日差しですっかり体温は高まり、下着が張り付くほどだった。
 しかし都筑は気にした様子がなく、身を寄せたまま琴の素肌の腰に手を回すとスカートごとショーツを降ろしてしまった。
「いい汗だよ。べたついてない」
「いい汗って何ですか~っ!?」
「説明すると長くなるから。気になるなら早くシャワー浴びよう」
 二人は素裸になると浴室に入り、都筑がカランを回してシャワーを流した。
 しっとりした空気が徐々に満ちて、風呂場の穏やかな照明が全身を照らす。
 都筑は相変わらず無駄のない体つきだ。
 作業のためだろうついた筋肉は見せるためのようなそれではないが、その飾らない背中に都筑の人柄がよく現れていた。
 琴は見慣れた都筑の背中にほっとする。
 思わず指を伸ばし背骨にそって、つつつ、と滑らせる。
「何っ」
 都筑が声をあげて振り返った。
「えへへ」
「くすぐったいな」
「綺麗な背中」
「背中? アザが多いだろう」
 資材の搬入のために打ったのだろう痕だ。
確かにあるが、琴は気にならない。
 むしろ誇らしい痕だ。
「アザも含めて」
 琴がそう言うと、都筑は目尻を和らげ、照れたように肩をすくめてみせる。
 琴はそのまま都筑の左肩に残る、司を守ってついた裂傷痕に触れた。10㎝ほどの傷痕。
 幸い神経も筋肉も傷つけることはなかった。
 頭部の傷痕は髪に隠れてわからない。が、こちらは浅い傷だったようだ。
「……まだ痛い?」
「時々ね。そのうち気にならなくなるよ」
 琴は都筑の返事を聞いて頷く。
 都筑は「かわいそう」という風に言われることを嫌う。彼にしてみればこの傷は勲章に近いのだろう。
 琴としてはもう二度と危ない目に遭わないで欲しいと思うが、しかしそれで逃げを打つ男だったら惹かれない。
 危険から人々を守るのが彼の仕事なのだから。
 そっと唇を寄せ、傷痕に触れる。
 他の部分と違い、固くしこった傷痕。
 舌でなぞると都筑が姿勢を崩した。
「くすぐったい」
「ふふ」
 琴はすっかりいたずらっぽくなり、そのまま両手を伸ばして都筑の腹部で指先を絡めた。
「普さん、大好き」
「……胸が当たってるんだけど」
「嫌?」
「まさか……」
 都筑は琴の手を取り、振り返ると肩に手を置いて床に座らせた。
 都筑も座り込むと、シャワーの温かい湯が二人の髪を濡らし始める。
「大胆になったな」
「いやらしくなっても良いって、普さんが言いました」
「そうだった。じゃあ俺のため?」
「どうでしょう」
 そう嘯く琴の唇を都筑はさっと奪って、頬をつまむと舌を割り入れた。
「んん……っ」
 口内を好き放題に舌でかき回され、琴は脳がしびれるような感覚にくらくらした。
「いやらしい」
 都筑が口の端をにやりと曲げて、そんなことを言った。
 琴はむっと口を尖らせる。
「普さんこそ」
「そう? 俺はキスだけじゃこうならないけどな」
 都筑の指先が降りてきて、琴の谷間からバージスライン、更に赤く色づいた頂きの、その周りをくるくるとなぞる。
「やっ、あ……」
 琴は甘い声をもらすと、慌てて口を閉じる。
 浴室は響くのだ。自身の喘ぎ声が反響し、恥ずかしいことこの上ない。
 期待で膨らんだ、サクランボのような乳輪がシャワーで濡れてつやめいている。その頂きはきゅう、と固まって、都筑の愛撫を待っていた。
「こんなに感じやすくなった」
「やだ……」
 琴は都筑の肩にもたれた。
 乳首をきゅう、と押し込まれ腰をくねらせる。
 久々の快感はするどく脳をしびれさせる。逃げるように身をよじると、都筑の手が逃すまいと肩を抱く。
「胸……大きくなったか?」
 都筑は確かめるように胸を包んだ。
 琴は顔をあげ、頷く。
「ちょっとだけ……」
 ブラのサイズは変わらないが、弾力が増したのは確かだ。
 都筑が気づくとは思っていなかったため琴は驚いた。覚えていたのか、と思うと嬉しさがこみ上げてくる。
「やっぱり……」
 都筑は胸の感触を楽しむように揉みしだいた。
 胸自体はあまり性感を得られるところではないものの、固くなった乳首が都筑の体温に反応してしまう。
「ちょ、ちょっと……やっ」
「柔らかい」
「普さん……っ」
 都筑は顔を寄せ、乳房を口に含んでぱっと離す。
「キスマークが消えてる。惜しいな、念入りにつけたつもりだったんだけど」
「1ヶ月も経ちますからっ」
 都筑は琴の両腕を掴むと、胸元に幾つも口づけを落としてゆく。
 ちゅううっ、と白い乳房をきつく吸われ、琴は顔をしかめるがやがてそこはじんじんと熱い快感を呼ぶ。
「んむぅ」
 琴が変な声を出すと都筑はようやく顔をあげた。シャワーの水滴で濡れた前髪をかきあげ、ふふっと笑う。
「可愛い声だな」
「かわ……」
「もっと聞きたい」
「ひえぇ」
 都筑は琴の背中に手を回し、ぷっくり膨らんだ乳首を口内にふくみ、舌でねっとり舐め始める。
「ああぅっ、うっ……」
 先ほどとは違って、子猫の鳴くような甘ったるい声だ。
 琴は喉がひりつくほどの快楽に足のつま先まで強ばらせた。
 じゅるじゅると唾液でたっぷり濡らされ、吸い上げられると小さな乳首はじんと震える。
「ひぅっ……」
 都筑は左手で琴の体を抱きしめ、右手で全身を撫でた。シャワーの水滴のせいで互いの肌がはりついたようになり、琴はたまらず都筑の背中に手を回して口で息をした。
「普さん……」
 都筑の体温と、わずかな汗の匂い。鼻がつんとするが、それすら愛おしい。
 都筑が琴の髪をなで、首筋を露わにするとそこにも口づけを落としてゆく。
「逢いたかった」
 耳元で吐息ごとそんな言葉を注がれ、琴は腰を跳ねさせると頷いた。
「うん……」
 そっと体を離すと都筑が唇を重ねてくる。
 都筑の右手はつま先にのび、琴の小さな左親指に触れた。
「んん~……っ、だめっ」
「どうして、だめ?」
「まだ洗ってません」
「洗えば良いんだよな?」
 都筑は体を離すと琴の足下に身を寄せ、脚を持ち上げるとボディソープを手にした。
「嫌な予感がするんですけど……」
「嫌な? おかしいな、ここに触れるとかなり甘い声が出るのに」
「う、嘘です……」
「自分で確かめてみるか?」
 ほら、と都筑は自身の右手の指と琴の左足の指を絡めた。
 ぬちゅぬちゅと鳴るボディソープはやがて泡立ち、琴は目をぎゅっと閉じる。
 びくびくと疼くような感覚が脚に昇り、腰がざわつく。
「んんっ、まってっ!」
 鼻をつまんだような高い声が出て、琴は降参だと言った。
「変な声が出ます! 普さんの言うとおりです!」
「変な、ねぇ」
 つま先からぞわぞわと、全身がおかしくなりそうな感じだ。
 琴は息を乱すと湯船の縁に掴まり、目を閉じた。
 つま先の泡がシャワーで流され、琴は次に施されるだろう愛撫にきつくきつく目を閉じる。
 が。
「そんなに警戒されるとは思わなかったな」
 都筑が口調を緩めてそう呟き、脚を解放した。
 琴は目を開き、都筑を振り返る。
 彼は目が合うとふっと微笑む。
 琴は恥ずかしさで顔を赤くし、ぷいっと横を向いた。
「つま先は……おかしくなりそうだから」
「そう? そんな姿を見てみたいけど、今日はやめておこうか。こっちにおいで」
 都筑に誘われるまま向き合って腕の中に収まると、彼の心臓の音が鼓膜に心地良く響く。
 そっと手でたくましい胸を撫でると、都筑が顎に触れてくる。それに誘われて顔をあげる。
 目が合うとどちらからともなく触れあうだけのキスをした。

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