王都へはあと3日ほどだとサンは言った。
この日は街道の村に宿を取る。客がいなかったためか、宿を貸し切り状態だ。
一人一部屋。部屋は狭いが、ありがたい。
街道の村で買い出しをし、それぞれ自由に行動する。
シリウスはロータスから渡された路銀を見た。
ジャスパーが声をかけてきた。
「それは?」
「王子……ロータス王子からの餞別だ」
「けっこうな額じゃないですか」
「ああ。俺は脱獄犯だしな、行く当てがなければしばらく路頭に迷うだろうと」
「思慮が深いのですね」
ジャスパーは顎に手をやるとシリウスをじっと見た。
「何だ?」
「脱獄に至った経緯は聞きました。スティールの野郎、あんたに嫉妬していたし、やりかねない。まだ奴がやったと決まったわけじゃないが、これまでの流れは確かにおかしい」
「誰が一番得をすると思う?」
「さあ。王国……その事情がわかりませんから。だが百年前の内乱でもそうだが、王国はどうしても独裁に傾く性質があるとは言える」
ジャスパーの分析にシリウスは頷いた。
「誰もが戦々恐々としているといった空気だ。国王もそうなのか? だが歴代、民や、それの支持を得た王族が常に王位を簒奪してきた。敵は内部にあり、という習慣になれば、何でも恐ろしいのかもしれない」
「帝国もまだ一つになれない、というところか。皇帝陛下は面白い人物でしたが、人一人では成せることに限界がある」
「ジャスパー?」
ベリルの声が聞こえてきた。
水を汲んでいたらしい。
「ああ、ここにいたの。手伝ってくれない?」
「……」
ジャスパーはシリウスを見た。その視線の意味に気づいたが、シリウスは手を振る。
「お前をご指名だ」
「それで良いんですか?」
「良いんだ」
シリウスの態度にジャスパーは首を捻る。
ジャスパーがベリルのもとに行くのを見て、シリウスは息を吐くとオウルの言葉を思い出した。
立ち上がるとカン、と音を立てて何かが落ちた。
金の髪飾りだ。
それを拾い上げる。
たまたま出会っただけの少女だ。
旅人の多い街。偶然の出会いに意味はないはず。ましてや再会など、あるとしたら奇跡だ。
シリウスはそれを懐にしまうと宿に入る。
夕食の後、一人部屋で静かに星を見る。
春はその気配を濃くし、日中温かい日が増えていた。
移動もしやすい時期だ、明日も予定通り進むだろう。
新聞には目新しい記事はない。だが王女の新居がそろそろ完成だと告げていた。
結婚式もそれの完成に合わせて行われる。
スティールが王家の者となるのだ。
プラチナのまともな葬儀も出来ていないのに。
控えめなノックの音がして、返事するとドアが開く。
全開にはしないまま隙間からのぞいた顔に、シリウスは改めて声をかけた。
「ベリル。どうした?」
「……入って良い?」
ベリルは目を合わせようとしない。
夜間は光源が少ないため、ロウソクの火が頼りだ。だが目の良いシリウスにはベリルの顔色すらよく見えた。
目元まで赤くしている。
何を意味するのか、わからないわけもない。
シリウスは立ったまま、ドアをそれ以上開くこともないまま答える。
「……ダメだ」
「どうして?」
ベリルは弾かれたように顔をあげた。傷ついているように見える。
「立場をくれたことに感謝している。お陰で静かの森で暮らすことが出来た。それ以上は望めない。……そこまでしなくて良いんだ」
「私が自分を犠牲にしてると?」
「その通りだ。後戻り出来なくなるぞ」
「構わないわ。一緒にいて、あなたのことがわかった。信頼してる」
「ベリル」
ベリルの手がすがるようにシリウスの手を掴んだ。
「あなたが好きなの」
「それは嘘だ」
はっきりと言うと、ベリルは目を見開いた。
「なぜあなたが決めるの?」
「見ていればわかる。君が信頼してるのはジャスパーだろ? それに、俺のことがわかったと言うが、何がわかった? 俺は聖人じゃない」
シリウスは金の髪飾りを取り出すと、ベリルの目の前に持ち上げる。
「これは?」
「どこぞの娼婦が身につけていたものだ。いや、商売してたかどうかもわからない。そんな少女に俺ははっきり欲情して、その場で犯したんだ。不埒や輩を追っ払ってやってな。その礼だという少女の体を貪ったんだぞ」
ベリルの顔がはっきりと強ばる。
「君より年若い。クレマチスよりも若い女だった。哀れだよな、見ず知らずの男に犯されて。そうとわかっていながら、俺はそれをしたんだ。それでも信頼出来ると言えるか? 俺がわかったと言えるのか?」
「……」
ベリルはしばらく髪飾りとシリウスを交互に見ていたが、やがて口を固く閉ざして項垂れた。
「……もう、いい」
ベリルはきびすを返す。その背中はいつもより小さく、頼りない。
シリウスは後頭部をかくように撫で、ドアを閉めた。
我ながら最低だな、と独りごちる。
***
竜人族から回収した武器の類いは、やはり王宮の倉庫に保管されていた。
槍、剣、斧、弓矢が多い。そのいずれもが錆び付いていた。保管されていたとしてもひどいくらいだ。これでは武器としては使えない。
案内役は王子の来訪に驚きを隠さず、緊張しているのかうまく声が出せないでいた。
ロータスは自ら武器を見に、イオスには薬草の販売経路を探るためフェンネルとともに施療院に向かわせた。
コネクションに繋がる道が欲しい。もしくは、戦を引き起こした張本人だ。
「竜人族はなぜ戦を始めたのだろう」
案内役にそう聞いてみれば、彼は額の汗をぬぐいながら「さあ。私にはとても……」と言った。
「ところでこの頃、鉄や鋼の値段があがっていたのを知っているか?」
「はあ。確かに聞いておりました。生活に直結する問題でしたから、皆どうなるだろうと不安になって……確か買い占めが起きたと」
「買い占めか……王都で多かったのかな」
「そうですね。いえ、鉄や鋼はノースグラスで加工しますから、そのあたりで……」
「ノースグラスか。兄上の領地だな」
ロータスは槍を手に取る。
木の柄は細く、竜人族が振るえば折れてしまうだろう。つまり使えないものだ。
弓矢の仕組みも、竜人族の使いやすい短弓とは形が違う。鏃も、彼らは石で作るのだ。鉄や鋼である必要はなかった。
そう考えれば、やはり彼らは素材そのものを求めたというのは間違いではなさそうだ。
だが竜人族にも裏切り者がいる。
それに王国側も、戦を望んだことはない。
誰かが引き起こし、ほとんどの者は巻き込まれたのだ。
一体誰が?
義兄の言うとおり、ダイヤモンド山を手に入れることが目的だったのだろうか。
父はそれを望んだだろうか?
いや、父だけが思惑を持つわけではないのだ。それこそ、重臣であろうが民であろうが、人はそれぞれ考える。
竜人族もそれぞれ考える。
どこかに何かがあるはずだ。
それに、姉のブローチだ。
「……」
訳ありの銀を買い取る者がいるとしたら。
ロータスは倉庫を出て、私室に戻る。
私物に宝石が使われているものは少ないが、銀細工なら多い。その全てに印判がある。ロータスの花を象ったものだ。
フェンネルとイオスが来る。
施療院に怪しい人物はいなかったが、イオスは気になる者を見つけたというのだ。
「どういう者だった?」
「話に出ただけで、見たわけではないのです。話の内容では『必要なものを用意する』と」
「そうか……君は精鋭だった。今更言う必要はないだろうが、気をつけて追ってくれ」
「はい。離脱は簡単だと思います。フェンネル君は鼻が利くというか……」
「頭悪いから、護衛に徹してる。シリウスの旦那も出来ることを精一杯やれって言ってたし」
「そうか……。それから、やはりフェンネルの言うとおり、君らが集めていたのは武器ではなく素材だと私も思う。その頃王国では鉄や鋼は値上がりしていたんだ。どこも資材不足だったため、奪い合いが起きたのだろう。錆びがひどく、武器としては使えない。それからノースグラスに連絡を取りたい。あの頃、竜人族も加工を注文していたはずだ」
「あっ。そうか……でも、それだとしたら……」
フェンネルはそうぼそぼそと言う。
「どうした? 気になることがあるならはっきり言ってくれ」
「いや、その……もしそうだとしたら、それをするのはプラチナおばちゃんのはずなんだ。だから判子の印があると思う」
「印……」
フェンネルは紙を取るとそこに描き始める。
円を何重にも描いた中に、三角と丸で複雑な模様にしたもの。かなり細かい装飾で、いかにも竜人族が好みそうなものだ。
「その判子は本物はあるのか?」
「なんか20年くらい前、その時の族長が王様からもらった奴だって。プラチナおばちゃんが保管していたものだから、多分ダイヤモンド山にあると思うんだ。あれは族長に受け継がれるから、多分、スティールのアニキの結婚式に皆が持ってくると思う。帰れるようになったからね」
「……そうか。そうだ、イオス……これを」
ロータスはスカーフ留めを取り出す。銀細工で、蜘蛛の巣のようなデザインだ。裏側に印判があり、盗難防止となっている。
「これを、売りたいんだ」
「売れませんよ。王家の方のものだとすぐにわかります」
「いや、売れるはずなんだ。王家のものだとしてもコネクションなら仕入れる。銀は溶かせば良いんだ、それを欲しがる者はいるはず」
ロータスは確信を込めてそう言う。イオスはそれを受け取り、ぎゅっと握りしめる。
「わかりました。コネクションに近づくためですね」
イオスは意味を理解したようだ。ロータスは付け加える。
「深追いはしないように」
「はい」
「ノースグラスには?」
フェンネルの質問にロータスは首を横にふった。
「今は行けない。私はダブルリバーへ行かねばならないし、姉上の結婚式があるため王都から離れられないしな」
「そうか……」
「私はしばらくアジュガ兄上を追うよ」
二人が頷くのを見て、その日は解散となった。
ピオニーの結婚式は9日後。
プラチナが使っていたという「判子」が手に入れば良いが、どうやって奪うか。
そしてどうやってノースグラスへ向かえば良いのか。
ロータスは目を閉じ、眠りにつくまでそれを考えていた。
*
翌日、イオスは施療院の近くにいるという、必要なものを用意するという男にあった。
イオスが「カネがいる。買い取り手を探している」と言うと、ある人に会わせると言って森の奥へ案内した。
そこにあったのは小高い塔。
森にこんなものがあったのか、とイオスは驚いたが、どうやら出来て間もなさそうだ。壁はまだ綺麗である。
「ここか?」
イオスは塔の中で追い詰められたら、と一瞬思ったが、フェンネルがいることを思いだし、その一歩を踏み出した。
壁伝いに昇る。らせん階段をぐるぐると、酔いそうになりながら。
その屋上にたどり着くと、屈強な男に守られるようにして立つ女に出会った。
白い長い髪、赤い唇。
これはと思うような美貌の淑女だが、蛇のような目をしていた。
(これは危険だ)
イオスはそう感じたが、つばを飲み込み話を切り出す。
(蛇の道は蛇。彼らがコネクションに繋がってる可能性が高いということだ)
危険は承知の上。イオスは意を決した。
「……これを」
「銀細工だね。かなりモノは良さそうだ」
淑女の見た目に合わない口調で、女は言った。
どこかで見たことがある、とイオスは思ったが思い出せない。
どこだったか。
「ふうん、王家の印判が入ってる。盗みかい?」
「……ああ。軍人として仕えたが、給料は安くとても割に合わない」
「なるほどねえ。良いよ、カネを出してやろう。へえ、蓮の花ねえ。末の王子様か……あの子、なかなかどうしてやるじゃないか。でももう終わりにしないとね」
「えっ……」
「無駄な努力だったね。あんたはここでのことを忘れる。良いかい? あたしのことを覚えてて良いのは、これから先の者達だけだ。あんたはそこへ連れてってやらないよ」
女の手が伸びてイオスの目を覆った。
「何を……っ?」
ふわっといい香りがする。その瞬間、イオスは意識を失った。
*
ロータスが謁見の間に呼ばれたのは、それから2日後のことだった。
何ごとか、とロータスは不思議に思ったが、冷えたようなそこに入ると、真っ先にアゲートの心配顔とぶち当たる。だが彼は何も言わなかった。
父王の前に膝をつき、臣下の礼を……する前に衛兵の槍が2本、目の前に突き立てられた。
「帰還してからずっと、おかしいと思っていたのだ」
ジェンティアナの声は真冬の夜空より冷たい。
「何がですか?」
「アジュガはお前が身代わりを申し出たと言っていた。だがよくよく話を聞けば、アジュガはお前が人質にならなければ竜人族を蹴散らすのは容易だと言っていたぞ。足をひっぱったのだ」
「……え?」
人質解放の場でもそんなことを言っていた。
急に何が起きた? ロータスは自身を取り巻く環境がかなり悪いことに気づき、顔をあげる。
「それに言うことを聞かぬ。戦に行く前にも、お前は交戦せず兵士らを古里に帰すよう言ったな。まるで竜人族を助けるような言い分ではないか」
「まさか……あれは収穫の手が必要だからと考えてのことです。王国のためであり、竜人族のためではなかった」
「だがお前のしたことは全て、竜人族を助けるものとなっていた。今となってはピオニーが人柱となる結果になった。姉を犠牲にして、それで満足か?」
「父上……。何かの誤解です。私はそのようなことを考えたわけではありません。それに、竜人族全体が悪いわけでもない。彼らに会いましたか? 話の通じる者がいるのも確かです。父上も彼らに命を助けられたことがおありだと、そうおっしゃったではありませんか?」
「だからこそ裏切りは許せぬ。我が民を、無辜の命を奪ったのだぞ!」
「それが真実とは限らない!」
「ロータス!」
ジェンティアナの厳しい声が反響した。
衛兵が後ろに回り、ロータスの両手首を背中に回し、縄で縛り上げる。
「お前が竜人族と通じ、王位を奪うつもりだと密告があった」
「なんですって? 密告?」
「その上、ここ数日アジュガをつけ回していたようだな。あれの暗殺でも目論んでいたか? 彼は王国の守護者だぞ。奪わせはしない」
「そんなこと、私がなぜ考えると?」
「アジュガは竜人族にとって仇敵だからな。竜人族に骨抜きにされたのだろうよ。あいつらは怪しげな草を使っている。薬漬けにされて洗脳されたか?」
ジェンティアナは聞く耳を持たない。ロータスは喉の奥に冷え切った空気が入ってくる感覚を味わい、それを押し返そうと息を吐く。その時、あの白髪が王座の影から見えた。
「もうじき挙式だ。お前の処遇はそれから考える。アゲート、竜人族との関係も洗っておけ」
ジェンティアナは王座を立つと、衛兵に支えられながら出て行った。
後にはアゲート、衛兵、そしてロータスと、あの白髪の女が残るのみ。だがアゲートは彼女を気にした様子を一切見せない。
静かに近づき、片膝をつくとロータスを見据えた。
「兄上……何かの間違いです。王位を奪うことなど、考えたことはない」
「わかっている。だがロータス、今の父上に逆らえる者はいないんだ」
許してくれ、アゲートはそう言って、ロータスの頭に絹の袋をかぶせた。
宮殿内の牢屋は、監獄よりはマシだろう。
石造り、松明は多くあり、窓は広々として開放感もある。
出られないのだから開放感は必要ないかもしれないが。
深夜、ふとフェンネル達は無事だろうかと考えた。
妙に頭は冷めている。捕まっても、もはや父を疑う気持ちすらなかった。
カツーン、カツーン、と軽い足音に振り向く。
ヒールのあるそれ、女性のものだと気づき、顔をあげた時にはさすがに息を飲んだ。
輝かんばかりの金髪に撫でつけた香油は甘い香り。ピオニーはこんな薄暗い場所でも美しい。
「姉上……」
「あら、可哀想な私の弟……体が弱いのに、こんなところにいたら死んでしまうわ」
「何をしに来られたのです?」
「顔を見に来たの。思ったよりも冷静ね」
「……皆おかしい。そう思っておりましたから」
「そうね。おかしいのでしょうね。でも、それがどうしてかわかる? ここでは力を得ないと皆生き残れないからよ。父上ですら怖れている。下の者に引きずり落とされるのをね……。竜人族は確かに恐ろしいわ。身体能力に優れ、独自の技術と知恵があって。数こそ少ないものの、一人一人が一騎当千よね」
ピオニーはその瞳に感情を浮かべなかった。
無感情な人の顔ほど恐ろしいものはない。ロータスはそれをじっと見据えながら、そんなことを考えた。
「私、一体誰を婿にすべきか考えていたわ。どうすれば強い子供を授かれるかしらって。その時思ったのよ。竜人族なら強い子種を持っているはずよねって。そしてその子が王になれば、アイリス王国は今までよりもっと発展するわ。ダイヤモンド山と竜人族を手にできるのだから。そうすれば皇帝になることだって出来るかも知れないわよ」
ピオニーの告白に、ロータスは腑に落ちるものがあった。
そうか。スティールと手を組み、シリウスを追い落とそうとしたのは彼女だったのだ。
だが、アジュガはどうだ?
「姉上。この際だからはっきり聞きます。アジュガ兄上とあなたは密通を」
「ああ、知ってたの? 知ってるのは一部だと思ってた。スカイにもバレたの。密通がバレて、黙っておくから一夜を共にしてくれと」
「まさかその通りに?」
「仕方ないでしょう? 私は男じゃないの。大した力はなくて、男に守ってもらう必要があるわ。ウィローや帝都ならそうではないのかしら。でもアイリスではそうでないと生き残れないわね」
「それは違う。姉上が彼らに寄りかかっているだけです」
「あなたに何がわかるの?」
初めてピオニーが眉間に皺をよせた。だがそれもすぐに消える。
「スティール殿がよく姉上を受け入れましたね」
「簡単よ。ダイヤモンドの槍をあげたの。そしたら山でもなんでもくれてやるって。彼、単純よね。そうね、竜人族で唯一気になるのは、バカが多いってことかしら。でも、これで操りやすくなった。竜人族は勢力を割いた。もう怖れなくて良いわ」
「そうでもない。あなたは何も知らなさすぎる」
「あなたは何でも知ってるとでも?」
「少なくとも知らないということを知っています」
「おほほ。言葉遊びかしら。姉をからかうものじゃありません」
「では弟を無駄にからかわないで下さい。姉上がここに来た目的はなんです?」
「生きたいでしょ? 私に協力すると誓うなら出してあげても良いわ」
ロータスは黙り込んだ。その代わりに彼女を見て目をそらさない。
「条件は?」
「誓うなら話してあげる」
彼女がそう言う間に、ロータスは窓から入ってきた小石が背に当たったのを感じた。
「ならば誓いません。これは協力の要請ではなく、従僕への誘いだ」
ピオニーは明らかに不機嫌な顔を作り、立ち上がった。
ロータスを見下ろし、「生意気な子は嫌いよ。そういえば、下着の件はありがとう。気持ち悪いと思っていたところなの」と言い立ち去った。
ロータスはそれを見送り、足音が聞こえなくなると窓から顔を出す。
フェンネルが手をふった。
フェンネルにより牢屋から助けられ、途中合流したイオスと共に厩舎へ。
3人、今はただ宮殿より遠く。
ただひたすらに夜を駆け抜けた。
次の話へ→Tale of Empire ー復活のダイヤモンドー 第21話 夕陽に混じる影
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