ペンダントのチェーン部分を革紐に換え、それを首に下げる。あるものが戻ってきた安心感にロータスは息を吐いた。
狩りを終え、集落に戻った次の日のことだった。
巨大な鷲にさらわれそうになったあの青年――名をフェンネルという――の見舞いに、とロータスは訪れた。
竜人族が鳥を苦手とする、というのは有名な話だが、苦手というより恐怖に近いようだ。
フェンネルは肩に大きな爪痕を負い、しばらく戦闘は出来そうにないとのことだった。
「まあ狩りを終えたし、冬だし、暇になるから不幸中の幸いってやつかなあ」
とのんびりとした声でフェンネルは言った。
「そうかもしれないが……だがあんな高いところから落ちて、足は大丈夫なのか?」
「あっ、それは平気平気。体は元々強いですから」
「それなら良いのだが……」
並の人間ならなかなかの致命傷ではないか。しかし骨折などもしていないらしい。
「羨ましいような気もする……」
「そうですか?」
「ああ。ところで、何か欲しいものがあれば言ってくれ。君には恩がある」
「それ言うならこっちが助けてもらった気がするんですけど」
フェンネルはきょとんとした顔でロータスを見る。何の計算もない、無垢なまなざし。
彼らはある意味、純粋なのかもしれない。
シトリンもそうだ、素直過ぎる。
シリウスはどうだろうか? 彼はある程度の打算はもっているはずだが、そこに下心を感じない。彼らをあまり知らないだけかもしれないが……。
ロータスはふとそう考え、手を組むと視線をそこに落とした。
純粋無垢な彼らと比べ、いつも何か考えてそれを隠すことに慣れてしまった気がする、とロータスは自身に嫌気がさしてきたのだ。
「じゃあお互い様って事で」
フェンネルはそう言って朗らかに笑った。
「なぜ君らは私を……つまり、そう、親しげにしてくる? 私たちは敵同士なのでは?」
ロータスは思わず疑問を口にし、フェンネルの目をさらに丸くしてしまう。彼は何か言おうとしたのか口を開け、しかし頭をかいて「さあ」と返すのみ。
「『さあ』……か……」
「はあ。とにかくシリウスの旦那は王子がここにいれば、しばらくは平穏に暮らせるって言ってるし。王子が嫌な奴なら嫌うけど、そうでもないから」
「……どうなのだろう。私は……それほど良い奴でもないが」
「そりゃ普通でしょう。俺たちもよく短気だって言われるし」
「誰に?」
「誰? 行商とか言う奴ら。こないだも鉄を買ったんだけど、その時とか」
「鉄……?」
ロータスは首を傾げた。どこかで聞いた話だ。
鉄、鉄、鉄。
鉄といえば農具になり、日常の道具になり、武器になる。
彼らが使っていたのは石の鏃だったが、確か槍に短剣は鉄を使っていた。
それから包丁、採掘道具などもそうだったはず。そう、武器に……。
「鉄を買うのか? 原料を掘るのではなくて?」
「そうですよ。鉄ばっかりは人間が掘って加工した奴の方がよっぽど純度高いし、強いんです。鋼っていうんですか、アレ。そういえば、スティールのアニキはどこ行ったんだろう」
「スティールとは?」
「竜人族が誇る戦士です。めちゃ強いんですよ。疾風のごとき槍さばきってね。そういえば王子、倒れた時シリウスの旦那が介抱したんですよ。アニスを使って治療して。でも王子が目覚める前にどっか行っちゃったんだけど……」
「え?」
ロータスは聞き返すが、フェンネルは視線を上にあげ、思考に夢中になり始めた。
ロータスはフェンネルのいる家を出て、シトリンと集落を歩く。
鉄。
それがひっかかって仕方ない。
屋敷に戻り、夕食を終えると湯浴みをする。
ロータスは自身の濡れた髪が目の前に散らばるのを見た。
青っぽく銀色に輝くそれ。シリウスのものはもう少し白みの強い銀色だ。
そして頭巾の男のものはもっと色濃い銀。
いずれも銀だ。
今まで気にしたことはなかったが、兄に言われたことが浮かんでくる。
――竜人族のと似ている。
アジュガやアゲート、そして姉たちはどうしているのだろうか。
それに先の狩りでのことだ。
シリウスに礼を言わねば。
***
シトリン達も帰って行った後、ロータスも湯浴み中で屋敷内は静かだった。
シリウスは槍を研ぎ直し、それが鈍く輝くのを見ると水をかけて仕上がりを確認する。
どこにでもある普通の槍だ。
プラチナが持っていた、竜人族の長に受け継がれるあのダイヤモンドの槍。
あの輝きにはほど遠い。
ダイヤモンドの槍は往古、ベリー家と竜人族の巫女が共に作成したと言われている。
以来ダイヤモンドの槍は、自らが選んだ主が持って初めてその真価を発揮するとのことだ。
確かにプラチナの振るうそれは美しかった。
いくつも光を反射させ、見る者の心をうつのだ。
先の王国軍との戦で失われてしまったが、あれこそ竜人族を導く宝であると誰もが信じている。
(見つけ出さねば)
それともう一つ気になることがあった。
伝書鳩が戻ってこないのだ。
ベリルは連絡のため、と鳩には慣れるようシリウス達に言って渡していった。
彼らを使って、今まで連絡を取り合っていたのだがそれが途絶えて久しい。
(何かあったのか)
探しに行く必要があるかもしれない。
だが冬となる。
そうなれば寒さに弱い竜人族にとって、冬場の長旅となれば命に関わる問題だ。
誰かを使者にするのも危険だ。
ではベリー家の者を、と考えていると、湯浴みを終えたロータスが居間に姿を現した。
いつもならすぐに天井裏に行くが、この時珍しくシリウスをまっすぐ見ていた。
「……何か用か?」
「いや、……色々面倒をかけた。すまない」
「……?」
「ペンダントのこともそうだが、私が倒れた時のこともだ。治療にも、探してくれたのにも、感謝している」
「……王子に倒れられても、逃げられても、厄介だからだ。礼は要らない」
シリウスがそう返せば、ロータスは暗がりの中でもはっきりとわかるほど青い目を大きく見せる。
「……竜人族は皆素直かと思ったが」
そう言葉を切ると、彼はふふっと笑う。
「そうとは限らないようだ」
ロータスの何か余裕の表情に、シリウスは眉を寄せた。
翌朝、デイジーがやってきて朝食を作る。
食卓にはいつも通りの4人の顔が集まっていた。王子は調子も良さそうだ。顔色は悪くない、とデイジーが言っている。
「本格的な冬になる前に、薪や服を作らないといけない。全てゼロからスタートだからな……集中して取り組まないと」
「商人と取引があったのだろう? 彼らはここには来ないのか?」
ロータスがそう言い、シリウスはデイジーを見た。
「たまに来ますよ。そうですね、秋だし、例年通りなら1週間後には」
「それはありがたいが、カネがないな。物々交換するのは本末転倒だ。……ちょっと待った、王子、商人と取引があったとなぜ知っている?」
「フェンネルから聞いた。だが、考えてみれば当然だな。竜人族もこんな戦が起きる前は、ある程度外とも交流があったのだし」
「その通りだが……あいつもおしゃべりなことだ。他に何を聞いた?」
「スティールという戦士がいると」
「スティール。あいつのことだ。王国軍から器用に逃げつつやっていることだろうが……」
「どういう人物なんだ?」
「どういう……一言でいえば、戦闘好きの男だ。当代1の戦士と言えるだろう」
「レディ・プラチナは……」
ロータスの口からその名が出たことで、シリウスは思わず視線をあげた。ロータスは以前より敵意のない目をしている。
「……プラチナは最強の戦士だった」
「……そうか。すまない、私が聞いて良いことではなかった」
「……」
シリウスは重い息を吐き出したが、ふと気になってロータスに訊く。
「プラチナはどうなった? 彼女の亡骸を誰も見ていないんだ。王国軍が連れて行ったんだろ?」
「私は知らない。だが、話に聞いた限りでは……奇妙な斑点が体中に現れていたということだ。それからどうなったかは分からない」
「毒か?」
「王国軍が毒を兵器として用いたことはないはずだ」
ロータスの返答にシリウスは眉間のしわを深めた。どう聞いても毒だと思うが、王国軍が使ったわけではないと言う。
「おかしな話だ」
ふと空気が重くなり、それに居心地が悪そうなシトリンと目が合う。
シトリンは我慢の限界だ、と言わんばかりに大きなため息をついた。
「ねえー。今日はこれからどうするの?」
「仕事を振り分ける」
「それから?」
「それをやっていく」
「本当に? ああ、また狩りに行きたいよぉ。体を動かしたいなぁ」
「なら買い物に出てくるか?」
シリウスはそう言った。行商、あるいは町か村に出る。
そこで商人達がベリル達を見たかどうか、それも含めて調べてきてもらうのも良さそうだ。
「本当に? あたしが行って良いの?」
「ああ。お前なら竜人族と分かりづらいだろうし……プルメリアも連れて行くか? 無害な家族に見えるだろう」
デイジーとシトリン、プルメリアと3人でなら。シリウスの提案にシトリンは目を輝かせた。
「やったー! 何買ってくれば良いの?」
「苗、種、保存用の肉とか……」
「分かった。えっ、でも三人で? 王子様は?」
ロータスもまたシリウスを見た。彼女らは監視役でもあるはずだからだ。
「王子には息抜きも必要だろう」
「えーっ、ひどい! あたしたちがうっとうしいみたいじゃない?」
出かけていく三人を見送ると、ロータスのいぶかしげな視線に気がつきシリウスは「なんだ」と言った。
「いや、あの幼子を連れて歩くのか、と思って」
「プルメリアは……彼女は方向感覚に優れているんだ。静かの森まで連れてきたのもそのためだ」
「そのために……竜人族ならば、彼女のような子供でも長旅に耐えると?」
「何の苦痛もないわけではない。大人に比べて体力がないのは事実だ。だが、それでも仲間のためプルメリアを頼らざるを得なかったのは確かだ」
ロータスは納得したようなそうでないような、眉を微妙によせて視線を逸らす。
誰かの理解が欲しいわけではない。シリウスはきびすを返す。ロータスも後をついてきた。
「行商……を利用していたのだな」
そう背中に声がかけられる。
「そうだが」
「ダイヤモンド山のあたりまで旅する商人とは、一体どのような者達なんだ?」
「さあ。よくは知らんが、どこにでも行くと言っていたな」
「売っていた物は?」
「欲しいものは何でも揃える、らしい。俺たちからは鉱石を求め、物々交換で取引していた」
「欲しいものは何でも揃える……」
ロータスはそう呟くとため息をついた。
「それはまるで、帝都からのお達しにあったコネクションの売り文句のようだ……」
***
老婆・オウルとの出会いの後、クレマチスは王都内を二人で歩いていた。
神殿での寝泊まりにも慣れてきたが、さすがに晩秋の空気は冷え込み辛いものが出てきていた。
だが兵士らの間でクレマチスを探す様子が出てきており、簡単に動けない。
アジュガは国王を怖れていないと言ったが、命令通りに動かざるを得ないのは、他に理由があるのだろうか。
何より辛いのは、クレマチスは一人では生きていけないという事実に気づいてしまったことだ。
今までの飲食費はオウルが出してくれている。
それに加え、彼女が貴族だと誰も知らない。夕方に出歩くだけで声をかけられ、襲われそうになったものである。
走って逃げられたが、万が一があったら?
もしウェストウィンドへ帰れたら、彼女への礼ももてなしも出来るのだが、その財源は主にロータスの政策のおかげではなかったか。
全く情けない話だった。
「なんとか帰る手立てはないのかしら……」
クレマチスはそうため息をつくが、オウルの方には焦った気配がない。
この日も果物を食べながらクレマチスのため息を無視して「まあ時が来るさ」といなしている。
「時が来るとはどういうこと?」
「動くべき時。まあ、それほど遠くないはず……しかし王子から逃げるとは、一体、そなた何をしたというのだね」
「その……」
好意のない結婚話、噛みつくような口づけ、何をどう話せば良いのだろうか。
「わがままかもしれないけど、他に好きな人がいるものだから、あの王子とは結婚したくないと言って……」
「ほほう。大した度胸じゃ。それでなくてはのう」
「あら、叱らないの?」
「叱ってどうする?」
オウルはあっさり言ってクレマチスを撫でた。
「こういうのは、直感に従うべきなのだよ。好きか嫌いか、それは意外と大切なしるべじゃ。孫娘にもそれが分かると良いのだが、あれは頑固でいかん」
「しるべですか……おばあさま、お孫さんがいらっしゃるの? 心配してるでしょうに」
「まあのう。だが仕方ない」
「一体、予言の謎とはなぁに?」
「それを解く鍵となるのがそなたであろうな」
クレマチスは自身の胸元を指した。
「私?」
「うむ。これははっきりと出ておる。その目にな。夜に虹が見えたら、と夢告げがあったのでな」
「目……」
「その内答えはおのずと見えてくるとも。ほれ、そこで昼食にしよう」
オウルが示したのは大衆食堂というやつだ。家族連れが多く、賑やかで、クレマチスは初めて入る空気感に圧倒された。
がやがやと話し声が店内に満ち、ほとんどがくだけた口調である。
クレマチス達が案内されたのは店の奥だが、それでも人々の間に壁というものがない。屋敷の静けさとはまるで違っていた。
「すごい活気だわ……」
「慣れておらぬかえ」
「慣れていないわ……」
「お嬢様だのう。嫌かえ?」
「嫌ではないけど、なんだか、驚きだわ」
食事にマナーもあったものじゃない。皆好きなように食べ、好きなように飲んでいる。酒が進んでいる者もいたが、それも許容され、子供がわめいても誰も咎めない。
クレマチスのすぐ横を、ジュースを持った少年達が走り、それを叱る親の声が聞こえてきた。
「……なんだか自由ね」
「自由の中にも秩序はある。まあ、楽しむと良い」
オウルと共に昼食を摂っていると、誰かの話が聞こえてきた。
「なあ、馬車が検問対象になったらしいぞ」
クレマチスの耳がぴんとなった。
「聞いた話じゃ、竜人族がいるかどうか調べるためだーって」
「竜人族ねえ。戦争仕掛けたんじゃそこまでされても仕方ないけど、俺らの仕事に差し支えるじゃん。迷惑だな」
クレマチスはオウルにむき直した。
「おばあさま、馬車が検問対象になったようだわ」
「そうかえ。それが何か?」
「ウェストウィンドへ帰るなら馬車は使えないかもしれないの。でも、それはそれで危険な旅になってしまうわ……」
「検問が危険? ああ、そうか、そなた王子から逃げているのだものな」
「そうよ。どうしたらいいのかしら……」
「聞いたか? こないだ、実際竜人族の男が同乗してる馬車があったそうだぜ」
「マジかよ。で、どうなったの?」
「金髪の女が一緒だったらしくてさ、これびっくりなんだけど、ベリー家の娘だとかなんとか……」
クレマチスは声をあげそうになり口を押さえ、オウルを見た。
彼女もまた射貫くような目で彼らを見る。
「噂だろ? ベリー家が今更どこに行くっていうんだ」
「帝都へ向かってたらしい。友人が軍にいてさ、教えてくれたんだよ……」
それから新しい情報はない。どこにでもおしゃべりな者がいるものだ、オウルはそう呟くとお金を置いて立ち上がる。
クレマチスは彼女に手をひかれ、そのままついていくことになった。
店を出て歩き出す、オウルの足は早かった。
「孫がいて、竜人族が一緒となれば、捕まった場合どこへ行く? 王宮か?」
「おそらく崖近くの監獄だわ。どうするつもりなの? まさかそこへ行くの?」
「他にどうせよと?」
「監獄に行って入れるわけない。それならば国王殿下に会って……」
無実を訴える?
それも無謀だとクレマチスは気づいた。
「……」
「忍び込む手立てを考えるか。ベリルがどうしてこんな行動に出たのか、それを知らねばならぬが……監獄はどうなっているのか、それを知らなければ」
オウルはそうと決めるとクレマチスに監獄へ案内させた。
王宮外にあり、断崖絶壁にたてられた灰色の建造物。
重犯罪を犯した者が入る場所だ。
オウルはそこを見ると、確かにあそこにいる、と言った。
「分かるものなの?」
「これでも巫女なのだよ。多少は気配が分かる」
「そうなの……入れるものかしら」
クレマチスは目をこらす。見張りの兵士らが何人も、あちらこちらを見回って隙がなかった。
「訓練された者なら行けるのかしら」
平穏に暮らしてきたクレマチス、体力はあるが老齢のオウルにはそれは難しいだろう。
「一度城下へ戻って、もっと情報を集めるのはどう?」
「それが良いだろうが、ベリー家の者を簡単に罰したりはしないと思うのだが……」
「きっと大丈夫、さあ行きましょう」
クレマチスはオウルを促し、城下町へ戻る。
すっかり夜になってしまった。
神殿に戻る道すがら、ベリー家の娘、という話を求めたがそれらしい話は出てこない。
軍関係の者の間での話のようだった。
足が流石に疲労している。
冷えた空気を放つ神殿に入る――と、いつもと違う匂いに二人は顔を見合わせた。
誰かいる。
柱に隠れながらそっと様子を伺えば、獰猛な獣を思わせる気配を纏った男が兵士らとともに中にいた。
アジュガだ。
「……逃げるか?」
オウルはクレマチスに目配せする。が、クレマチスは足が縫い付けられたようになり動けない。
恐怖とは違った感覚だ。
先へ進むべき、とでも言いたげな感覚。
「……このままここにいても、飢え死にするかもしれないものね……」
「クレマチス?」
「仕方ないわ……」
クレマチスはわざと足音を出して彼らの前に進み出た。
「……殿下」
「クレマチスか。よく無事でいたものだ」
「はい。こちらのおばあさまのお陰です」
アジュガの目がオウルに向く。オウルはぺこりと挨拶をした。
「あんな逃げ方をして、一体どういうつもりだ」
「驚いてしまったのです。突然すぎて。でも、私をお探しの割にはゆっくりでしたね」
「女一人では生きていけぬとわからせようと思ってな。俺を嘘つき呼ばわりした罰だ」
「……」
アジュガの怒りは収まっていないようだ、だは冷静に話は出来ているようである。
「では、王宮へ戻らねば。父上が与えた猶予は一週間。明日がそうだぞ」
「はい」
「素直になったな。頭が冷えたか?」
「はい。流石に私一人で生けていけないとよく分かりました。帰ることも出来ないのですから」
「それは悪かったな。だが計ったことではない」
「はい」
アジュガはクレマチスに手を差し出した。クレマチスはそれに自分の手を重ねる。
こうも違和感のあるものなのか、とクレマチスは思った。
ロータスよりもごつごつとした分厚い手。
体温が高く、脈も強い。
「……皆のためだ」
「そうですね。約束を、必ず守って」
クレマチスが言った瞬間、神殿の炎が一つ消えた。
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