Tale of Empire ー復活のダイヤモンドー 小説

Tale of Empire ー復活のダイヤモンドー 第6話 狩り

 秋の狩りにシリウスは仲間を率いて出かけていた。
 静かの森は広大で、しかも住んでいた人の数は少ないということもあり予想以上に収穫がある。
 狩りの日数は1週間の予定だ。今日は三日目である。
 ベリー家の家老は初めて竜人族の狩りに同行しており、入ってはいけない場所や得物の上限を細かく教えている。
 鹿や野鳥が多く獲れ、生け捕りにするものとその場でしめるものとを分けていると、草陰から一人の影が飛び出してきた。
「ばあ!」
 明るい声はシトリンのものだ。初めて狩りに同行し、同じく初めて狩りをする少年らと遊んでいたようだ。子供達がきゃーっと声をあげながら散り散りに逃げていく。
「それでは獲物が逃げてしまうぞ」
「えっ、逃げちゃった? でも、ねえ旦那。次は何捕まえに行くの? 魚を獲りに行こうよ!」
「魚?」
「うん! 王子様は魚料理が好きなんだって」
 シリウスはそれで思い出した。なぜ彼女は彼のそばにいないのか。
「王子はどうした?」
「王子様ならおばちゃんと他の人達と一緒。大丈夫! 逃げたりしないって。今弓を習ってるよ」
「見かけによらず好奇心旺盛な王子様だな」
 あれから秋も深まり、木の葉も風に落ち始めている。ロータスが人質となり2週間は過ぎ、今回の狩りに同行させたのだ。
 彼は竜人族の暮らしそのものに興味を示しているらしく、農業や石細工、糸や服の作り方までかなり細部まで見ている。おそらく敵状視察のつもりだろう。
 弓矢に関しても、彼が戦場で竜人族の作った矢を観察していた、と報告があった。
(油断ならない王子だ)
 と、シリウスは気を引き締める。デイジーには「彼は俺たちを視察している」と告げ、武器などの制作、その真髄には近づけないよう注意している。が、シトリンはそれをおそらく理解出来ないだろう。
「彼が危険でないよう、気を遣ってやれよ」
「はぁい。でもシリウスの旦那、王子には婚約者がいるんだって」
 シトリンは不満げに口を尖らせた。シリウスはさもありなん、と「ああ」と返す。
「年頃の王族なんだから当然だ」
「好きでもない相手とするものなんでしょ、王族の結婚って。デイジーのおばちゃんがそう言ってた。意味分かんない、でも旦那もそうだもんね。そういうものなの?」
 シトリンの言った事にシリウスは柄で喉を突きつけられた気分になった。
「……利害が一致すればな」
「なんかショック。王子の婚約者ってどんな人かな? でも好きかは関係ないなら良いか」
「何が良いって?」
「奥様に遠慮しなくて良いなら恋人にしてもらおうって」
 シトリンの直球すぎる一言にシリウスは一瞬呼吸を止めた。
 立ち去ろうとする彼女を呼び止め、諭す。
「俺はお前に伽を命じたわけではないぞ」
「え? 違うってば。ちゃんと好きになってもらうの。王子を襲ったりしないってば」
「当たり前だ。寝所に忍び込むなよ」
「えー。見せつける趣味はないなあ」
 夜の間、彼女らはロータスから離れている。屋敷にはシリウスがいるし、部屋から出る唯一の方法ははしごを使うことだ。音なく降りることは出来ないためシリウス一人で見張りは出来ている。
 それに屋敷の周りは、戦士達がハンモックで交替に夜間の見張りをしている。
 これはロータスのためだけでなく、王国軍の有無を確認するためでもあった。
 今回の狩りでもそうである。ロータスはシリウスと同じテントだ。
「そんなものを見る趣味もない。シトリン、王子に惚れてるのか」
「そうだよ」
「……全く」
 護衛役になった以上、彼に好意的なのは良いはず。だが、恋慕であれば厄介かもしれない。彼女を護衛役から外すべきか? シリウスはため息に似たものを吐き出した。
 そうこうしているうちに、ロータスを連れた一団がウサギを大量に捕まえて戻ってくる。
 これを毛皮に細工するのだ。
 冬の寒さに弱い竜人族は、バーチのものを交易で得ていた。
 が、王国との不和でそういうわけにもいかなくなり、調達する必要が出てきてしまった。
 問題はこれをどうすれば毛皮として使えるか。
 その術をシリウス達は知らなかった。
「まず皮をはいで……」
「それから? 肉は加工すれば良いのか?」
 ウサギの存在はもちろん知っているが、見たことがあるのはすでに加工済みのものばかりだ。
 シシと同じで良いのか、としとめられたウサギを掴んで見ていると、ロータスがそれを取った。
「これは逃がしてやらないと……」
 という一言にシリウスは顔をあげた。
「なぜだ」
「腹に子がいる」
 ロータスはウサギの腹を撫で、水を飲ませてやると解放してしまった。
「王子殿下、流石の思慮深さでございます」
 ベリー家の家老が慎ましく居住まいを正す。
「いや、帝都や王家でも貴族と狩りをするが、腹に子がいる場合と、体が小さい場合は離してやる必要があると教わったんだ。彼らが新たな命を産むから、と」
「あるだけ獲ってはならぬと」
 シリウスがそう言えば、ロータスは深く頷く。
「ああ。あなた方も同じではないか。石をあるだけ採ってはならない、と。何事も節度がないと未来はないのだと言っていたが……」
 確かにこの間話した覚えがある。ロータスの記憶力の良さにシリウスは感じ入った。
「その通りだ。獣も同じだな? ダイヤモンド山では獲れる獲物は少なく、考えていれば俺たちが餓えるが、ここではそうではないと」
「ああ。だいたい、腹を見ればわかるはずだ。腹が膨れているとか、乳首が膨らんでいたりするから……」
 ロータスはもう一匹を掴んでひっくり返す。彼が示した通りに見れば、腹のあたりがふっくらしているのがわかる。
 それにもエサを与えて解放する。
「助かる。もしかして、加工の術を知っているか?」
「さあ。学院で知識だけは得たが……そういうのは狩りの上手な貴族の方が得意かもしれない。まあ、やるだけやってみよう。彼らには冬の間、守ってもらわねばならないし……」
「何匹かは家畜にしましょう」
 家老がそう言ってウサギを選んでいった。シリウスは彼らに任せ、ロータスを見た。
 彼はシリウスとあまり目を合わせようとしない。が、デイジーにいわく他の者達とは上手く付き合っているようだ。
「ウサギをさばくのは帰ってからだ。血の匂いで鷲がやってくると厄介だからな」
 はい、と皆頷く。が、怪我をしたシシがいたことに誰も気がつかなかった。

 夜、シリウスは沐浴からテントに戻った。
 中にはすでに湯を終えたロータスがいる。顔色が悪い気がして覗き込むようにすると、彼は顔を背けてしまう。
「……体調は?」
「問題ない。いつも通りだ」
「倒れられると俺たちが困る。辛いなら言ってくれ」
「子供じゃないんだ。自分のことくらい、自分で出来る。あなたは少し過保護じゃないか。もしくは監視が行きすぎている」
 ロータスはシリウスに対し、はっきりと睨んでくる。
 他の者には見せない態度。シリウスは思わずむかっと来るものがあり眉を寄せた。
「子供じゃないと言いながら、その態度はまるで反抗期の子供そのものだ。王子というからにはもっと気品あるものと思っていた」
「反抗期? ただでさえあなた方に協力しているようなものだ、なのに私が?」
 ロータスはふんとそっぽを向いてしまう。その態度が反抗期のようでなければなんだというのだろう。
 シリウスも同じように鼻を鳴らすと、すぐに寝床に横になった。毛布を被り、彼に背を向ける。
 ロータスがイライラした様子で寝床に入る音が聞こえる。
 生活に慣れようとしているだけ、本当はマシなのだ。彼がここにいるのは彼の意思でも本意でもない。
 それに、婚約者がいると聞いた。
 もしかしたらあのペンダントは……そうシリウスは勘づき、振り向く。
 ロータスはシリウスに背を向け、毛布を頭からかぶっていた。
 翌日、狩りに来た戦士全員でキノコ類を原木ごと収穫し、それを荷車に乗せている時のことだった。
 太陽はまだ明るいとはいえ、この時期昼から夜はあっという間だ。太陽の作る明るさと影に目を細めていると、やはり顔色の良くないロータスが目に入った。
 彼はベリー家の家老と共にキノコの選別をしていた。やけに頬が白い、とシリウスは思っていた。
 ロータスの首筋を汗が落ちる――その時に違和感に気づいた。
 彼の首元にあるはずのものがない。
「王子、あれは?」
 シリウスが声をかけると、ロータスはやや厳しい顔をして振り向く。シリウスが自身の胸元を指して伝えると、ロータスの手が胸元を探り、青い目が大きく見開かれた。
「ない」
 突き刺すような声色。
 皆彼を見た。
「ない。なぜだ? どこに……探してくる」
 ロータスはその場を離れ、一人来た道を戻る。
「えっ、王子様。一人で行っちゃダメだよ」
 シトリンとデイジーが慌てて彼を追いかけた。
 テントまで戻る彼らを見送り、シリウスは荷車の木を数えた。
「私も一緒に」
 家老がそう言ってロータス達を追う。
 シリウスは荷車がいっぱいになると先に帰るよう指示し、ロータスを追った。

***

(ない。ない……どこに行った?)
 あの夕方、彼女に必ず返すと約束したものだ。私物をほとんど取られた中、唯一残ったロータスを家へ繋ぐもの。
 気高く凛としたクレマチスの花。
 来た道は低いが草が生えている。這いつくばり、目をこらす。
 こんな時に限って、シリウスが言ったとおり胸が苦しくなってきた。
 無理をしているという自覚はあったが、彼らに――特にシリウスに弱みを見せたくなかったのだ。
 ロータスはこみ上げてくる咳を押し殺すようにし、胸を叩く。だが良くなる兆しはない。
 結局乾燥しきったような咳が出て目が熱くなった。
「王子様、何がなくなったの?」
「ペンダントだ。花の……うっ」
 ゴホゴホと咳すると、シトリンが心配そうに眉を寄せて背をさする。
「おばちゃんに煎じ薬を作ってもらうよ。だから休んで……」
「放っておいてくれ、あれを見つけるまでは休みたくない」
「でも」
 ロータスはシトリンの手を払い、手を土だらけにしながら辺りを探る。
 駆け寄ってきたデイジーにシトリンがたどたどしく「花のペンダントを」と説明している。
 それが腫れたように熱い喉のせいで、遠くのことのように聞こえてくる。
(どうしたというんだ)
 そう自らに問いかけ、答えが返らぬうちに意識が遠のく――土が目の前に見えると気づいた次の瞬間、視界から何もかもが消えた。

 ほのかに香る香草は「ラベンダー」というのだと、クレマチスが言っていた。
 彼女はロータスが使う寝具にこれの香りがうつるよう香袋を作り、置いてくれたものである。
 花は紫、バーチ産のものが特に良いのだと。
 あの品ある甘い香りがロータスは好きだった。
 クレマチスの近くにいる時、あの香りがうつった髪や手に口づけるのにやけにときめいたものである。
 それに、確かに呼吸が楽になっていた。
 今鼻腔を刺激するのはどこか甘い香り。だがラベンダーのそれとは違う、どこか食欲をそそるようなものだった。
 目を開けると、テントの継ぎ目が見える。
 充血した目は熱く、息を思い切り吸うと上手く入らず余計に咳き込んでしまった。
「ゆっくり、慎重に」
 しゃがれた声に従い、近づけられた蒸気を慎重に吸い込む。
 潤んだ空気が喉に流れ、具合が良くなってきた。視線だけ上にやれば、竜人族の年長の者が武骨な手にポットを持ちロータスに差し出していた。
「……感謝する」
「……ああ」
 ロータスはポットを受け取り、それを口と鼻に近寄せ蒸気を吸い込んだ。
「……これは?」
「アニスという」
「アニス……初めて聞く名だ」
「貴重なものだが、仕方ない。王子に倒れられる方が迷惑だ」
「それは悪かったな」
 皮肉のような一言にロータスはついと目をそらす。が、彼は悪気がないらしい。
「いいや。王子はよくやっている」
「……それは、……どうも?」
 礼を言うところなのか分からなかったが、彼はそれを言うとすぐにテントを出てしまった。
 去り際、外にシリウスとシトリンが控えているのが見えてしまった。
 軽い咳が出て、再びテント内に一人になる。
 ペンダントを探さねば。
 それだけが今、情熱を持っている目的となっていた。

 シリウスが留守にしたのを見計らい、ロータスは松明を持ち外へ出た。
 夜風は思ったよりも厳しい。
 シトリンとデイジーもいなかったが、見張りの戦士がいるのに気づいたが、逃げ出すつもりはない。ロータスは構わずに足下を探した。
 テント内をひっくり返すように見たが、ペンダントは見つからなかった。では今日辿った場所に?
 ロータスは必死に道を思い出す。
 たしか大きな木を目印に、森を右へ。獣道を通っていったはずだ。
 水飲み場から巨石を左。
 だがペンダントは見つからない。
 焦る気持ちが足を絡め取る。ロータスはその場で転んでしまった。
 すねに痛みが走り、見れば切ってしまっている。石でひっかいたようだ。
 傷は浅い、とロータスはそのまま膝をつき、這うようにして進んだ。
 ふと影に覆われ、顔をあげる。
 思った通り、シリウスが戦士ら数名を連れ後を追ってきたのだ。
「……」
 声を出さぬまま振り返れば、彼らは一様に冷静な目をしたまま散らばる。シトリンがそばに寄ってきた。
「ねえ、ペンダントを探してるんでしょ? そんなに大切なものなの?」
「……ああ。クレマチスが私を守ってくれるように、と渡したものだ」
「クレマチスって、婚約者のこと?」
「そうだ」
 疑うつもりもないような、あまりにまっすぐな目をするシトリンを見られない。
 ロータスは探すふりをして彼女の目から逃げた。
「あたしたちも手伝うよ。こんな寒いのに、一人でまた倒れたら大変」
 シトリンは毛皮のジャケットをロータスの背にかける。いっきに背中が温かくなり、ロータスは情けないような、嬉しいような、複雑な気分にますます罪悪感を深めた。
(君たちを裏切るつもりはない)
 なぜかそう言いたいのに、なぜか言いたくない。そのまま静かに手元を探り、光るものを見つけて手に取る。
 が、それはただの石の側面だった。
 思わず石をどこかへ投げつける――カンッと石同士がぶつかる軽い音がしたのみだ。
 シトリンはロータスから距離を取り、見える範囲で足下を探している。
 シリウス達もそうしているのだろうか。姿は見えないが、草の触れあう音は聞こえている。
 ロータスが黙り込んでいると、シトリンが声をかけた。
「ねえ、シリウスの旦那は知ってるから。王子が逃げるつもりで出て行ったわけじゃないって。そうなら松明を消すだろうからって」
「シリウス殿が……」
「うん。ねえ、皆言わないけどさ、王子のこと誉めてるんだよ。お兄さんの代わりに身代わりを申し出たの、勇敢だって。嫌ってないから、王子もシリウスの旦那のこと誤解しないでよ」
「……誤解?」
「うん。旦那の前じゃけっこう辛辣だって、皆気づいてる。ごめんね、竜人族って普通の人間と違って五感が鋭くてさ、緊張してるな、とか、怒ってるな、とかけっこう匂いでわかっちゃう」
 聞いた通りだ、とロータスは今更ながら納得した。彼らはそれなら、人よりも感情豊かなはず。
 ロータスはようやくシトリンを見た。
 若々しく、健康的な肢体だ。優れた美人とまでは言わないまでも、くるくる変わる表情に素直な性格。王都にいれば引く手数多であろう。
「……君はつまり、嗅覚に優れているのか」
「そうだよ。旦那は目が良いから、すぐペンダント、見つけてくれるかも」
「……では私の気分を君はすぐに気づいたのか?」
「そこまでは読めないよ。でも、最初いい匂いだと思った。顔も好き」
 シトリンは甘えるような声を出した。ロータスは肩の力が抜けるのを感じ、ふっと頬を緩めた。
「……シリウス殿を誤解していると言ったが、そうではない」
「え?」
「……お友達ではないんだ」
 そう呟いた言葉の意味を、シトリンに理解出来たか怪しい。
 ロータスはこの辺りにはない、と立ち上がった。 ちょうどその時、向こうの藪から人影が起き上がった。
「みっけたー! 花のペンダントってこれじゃない?!」
 若い声が森中に響く、ロータスはすぐに駆け寄っていった。
 これこれ~! とロータスと同い年くらいの戦士が手に持っている。
 彼はロータスに手を開いて見せた。
 風車のように、6つの花びらが開いたあの気高い花。
 それを模したペンダントトップ。
 チェーンは切れており、同じ場所に落ちていたようだった。
「これだ……!」
「よっしゃー! 俺のお手柄~!」
「感謝する……! 本当にありがとう」
 ロータスがそう言うと、彼はぴょんぴょん飛び跳ねた。シトリンが間に合い、戦士らがすぐに集まってくる。
 その時、シリウスが血相を変えて叫んだ。
「危ない! しゃがめ!」
 全員が息を飲んだ。大きな影が頭上を覆い、飛び跳ねていた戦士の肩を掴む――鷲だ。それも巨大な。
「木の下に下がれ、弓構え!」
 シリウスの指示が飛ぶ。わあわあと戦士が連れ去られながらも抵抗していた。
「ヤバいって! 俺鳥怖い!」
 竜人族の弱点の一つだ。鳥が苦手である、と。見ればシトリンも他の戦士達も足が震えている。
「助けてええ!」
「落ち着け、いや落ち着くな! 足でもなんでも噛みつけ!」
「無理ですよおぉ! 気持ち悪いって!」
 シリウスは指示を出すが、なかなか行動にうつせない。そのまま高く飛んでしまう……ロータスは鷲を追いかけた。
 シリウスの弓矢を奪うようにし、竜人族に習った通りに弓を引く。
 背と肘で押し広げるように――短弓を引くにはかなりの力がいる。ロータスはギリギリと気力を振り絞り、鷲の首に狙いを定めた。
 矢を放つ。が、狙いがそれて地に落ちた。
 鷲を追えば平地に出る。シリウスは仲間を置いて来たようだ。
「指示してくれ。私はあなた方ほど目は良くない」
「狙うのは?」
「首元だ。彼には恩がある。必ず助ける」
「わかった。構えてくれ」
 ロータスは矢をつがえ、ここか、と影に向かい狙いを定める。
「もう少し右上だ。そのまま、強く引き絞って」
 シリウスがロータスの肩に手を添え、狙いを教えた。
「そのまま、もう少し上に。そう、そこだ。王子、頼んだぞ」
「わかった」
 ぐっと肘で空を押す。不思議と体に一本、芯が通ったように感じられた。そのまま息をするように矢を放つ――ブウン、と音をたてながら矢は飛び、狙い違わずに、鷲の首へ。
 ドサッと音がして、駆け寄れば戦士が足を押さえて転がっていた。隣には首から血を流す鷲。
「旦那あ、いたあい」
 と、シリウスに向かって甘えたような声を出すと、彼は泣いた。

次の話へ→Tale of Empire ー復活のダイヤモンドー 第7話 選択

 

 

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