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Tale of Empire ー復活のダイヤモンドー 小説

Tale of Empire ー復活のダイヤモンドー 第2話 前線へ

 ベリルの案内で、小川、道を乗り越えたどり着いたのは小さな集落だった。
 民家は数えるほど、小規模の牧場と田畑、井戸など生活に必要なものが最低限、といった感じだ。
 夜ということもあってか活気はない。が、窓の向こうに人影がありこちらの様子を伺っている。
「ずいぶん小さい……村かな」
 ジャスパーがそう言うと、ベリルは振り返らないまま返す。
「ここには一族郎党しか住んでいないから。それに没落貴族だものね、郎党といっても少人数よ」
「当主代理とは?」
「当主は二年前、王都に行ったっきり戻らないの。他にはもうベリー家のものはいないから、代理を名乗っているわ」
「他には? あなた以外にはもういないということか?」
「オウルという長老がいたけど、彼女もどこかへ行ってしまったわ。予言だけ残して……」
 ベリルの持つカンテラが揺れる。彼女の指し示す方にあるのは集落の中では立派な屋敷。
 2階建ての白の土壁は時間の流れを感じさせ、それを隠すように背の高い植物が何本も生えている。
「今夜はここに泊まって。詳しい話は明日聞くわ」
 ベリルの提案にシリウスは頷き、屋敷に入ると案内された2階の客間に入った。
 部屋は広々としてベッドは6つ。大きい窓は身を乗り出せば、シリウスのような体格に恵まれた者でも楽々出られそうだ。
 プルメリアは荷物を放り投げ、ベッドの上で跳ねて感覚を楽しんでいる。
「運良く会えましたね」
「ああ。今のところ敵意はなさそうだが……」
「油断は出来ません。没落した貴族がこれ幸いと王国軍に俺たちを差し出すかも」
「可能性は否定しないが、疑ってかかるのも考え物だぞ。だが、いざとなったらここから出られそうだ」
「プル、そういうことだ」
「逃げるの?」
「その準備も必要だということだ。だが彼女は敵じゃない……はずだ」
 シリウスがそう付け加えると、プルメリアは素直に「うん」と言う。
 シリウスは空に目をやり、月のまぶしさに目を細めた。
 今夜は満月だった。

 シリウスは朝早くに起き上がり、らせん階段を降りる。
 ベリルの姿は見えないが人の気配があった。
 何人――ではない。10人以上はいる。
 足音は軽いため、本格的な武装はしていないようだ。だが緊張感に満ちている。
 昨夜は遅く、屋敷内を見て回っていないがどうやら広い部屋があるようだ。そこに気配が集中している。
「……竜人族が訊ねてきたとか……」
「王国……から逃れ……め?」
「……に庇えるものじゃ……」
「王国に睨ま……私たちも終わり……」
「だが盟約が……」
「盟約の……に死ねるか? 子供もいるんだぞ……」
 やはり自分達のことが話題のようだ。
 シリウスは気配を押し殺し、階段をそっと降りた。大広間と書かれたそこに村民達が集まり、奥にベリルの姿がある。
 彼女は冷静な表情を浮かべていた。
「静かになさい。彼らのあとを誰かがつけてきた様子はないわ、まずいらぬ心配はしないように」
「ベリル様、どうなさるおつもりですか?」
「彼らの言い分を聞く必要があるわ」
「王国へは何と?」
「今は動かないように。当事者だけでは解決出来ない問題よ」
「では帝都に?」
「それが良いでしょう」
 ベリルの提案にシリウスも賛成だった。
 だが村民達の不安感が屋敷に満ちていく。
 もし竜人族と通じて王国を裏切ったと誤解されたら?
 そんな疑問が透けて見えるようだった。
 同じように気配を消したように歩く影に気づき、シリウスは顔だけ動かし背後を見る。
 やはりジャスパーがそこにおり、彼は壁に耳をぎりぎりまで近づけた。彼の耳なら彼らの耳打ちのような会話でも聞こえるだろう。
「……『冗談じゃない、妻子まで王国に殺されるぞ』……『いっそ竜人族を王国軍に突き出せば良い。そうすれば、あるいはベリー家の再興がなるかもしれない。こんな落ちぶれた生活とはおさらばだ』……予想通りだ」
「ジャスパー」
「……『だが予言がある。オウル様の予言では……』『あんなばあさまの予言など信じられるか?』『だが予言の通りだ。銀の竜が……』……」
 ジャスパーとシリウスは互いの顔を見合わせた。
 予言とは何だ?
「予言の通りなら、彼とベリル様がいればベリー家は永遠に栄えるはずだ」
「確かに満月の夜、銀の竜……」
「まさか」
 ひそひそ話は徐々に声が大きくなっていく。
 不安感とは違う、どこかそわそわと期待するかのような……「皆、落ち着いて」とベリルの声が聞こえてきたが、村民達の声は消えない。
「我々は元々アイリス王国ではなく、れっきとした帝国貴族だった」
「そうだ。王国の顔色を伺って生きる必要なんてない」
 異様な空気になっていくのを感じ、シリウスは眉をひそめて立ち上がる――
「何してるの?」
 というプルメリアの声に、その場にいた者達の視線が集まった。

 大広間に入るよう、シリウス達は促された。
 中は円形になっており、その中央に立つと自然皆の視線が集まる形だ。
 外套を纏わぬままだと、竜人族の特徴が露わだ。
 浅黒い肌色、先端の尖った耳、口を開けば鋭い犬歯、プルメリアのように小さな角が生えていることもある。
 ベリー家の者達は初めて見るその姿に目を開いていた。
「銀髪だな……シリウス殿と言ったか。長の血筋なのか?」
「いいや。竜人族は血筋で長が決まるわけじゃない」
「では何で選ばれる?」
「その時々の……流れのようなものだ。それとダイヤモンドが」
「ダイヤモンド?」
「今は失われている」
「ここに来た目的は?」
「仲間達と住む場所を探しに……秋冬の間だけでも構わない、どこか土地を分けてもらえないかと」
「それだけか?」
「ああ。今はそれが最優先だ」
 王国軍の使者殺害の件に関しても、無実だと訴え出るつもりだ。シリウスがそれを説明すると、皆顔を見合わせた。
 その中で一人だけ、シリウスをまっすぐに見つめるのは緑の目。
 ベリルだ。
「……ベリー家と竜人族の間には盟約がある。住む場所が必要というなら、ここを使って」
 ベリルがそう口を開き、静かな声で言った。
「ベリル様」
「王国軍とベリー家はそれほど親しくない。間に立って良い話し合いが出来ると保証は出来ないわ……」
「でも、危険ではありませんか。王国軍に攻め込まれたら、我らも……」
「なるべく早く帝都に行くわ。皇帝陛下にお話して、互いに矛を納められるよう陳情する。そのためにはある程度、こちらからも事情を掴まなければ」
 ベリルが一歩ずつ進んできた。村民達は彼女に道を譲り、いよいよシリウスの目の前にやってくる。
 春の草原を思わせる、爽やかな緑の目だ。それがシリウスをまっすぐ捉える。感情は見えない。
「オウルが残していった予言はこう――『満月の夜、銀の竜が目覚め我らが末裔と結ばれる。その時永遠の輝きが蘇るだろう』――私たちはずっと待ってた。その銀の竜がやってくるのを。こんな事情になってからだとは思ってなかったけど」
 ジャスパーが睨むような顔つきになった。
 まるで追い詰められたような空気感だ。村民達も不安と期待、両方を目に滲ませている――
「お仲間をここへ呼んで構わないわ。その代わり、一つだけ条件がある」
「さっきと話が違うぞ」
「事情が事情よ。アイリス王国、そしてアッシュ帝国に掛け合うつもりならそれなりに地位がなければ。お互いに悪い話じゃないはず」
 ベリルの薄い唇が発するだろう言葉に、シリウスは仲間の顔を思い起こし腹を決めた。

「私と結婚を。シリウス殿」

***

 アイリス王国西方、静かの森に竜人族が集まっているようだ、と兵士は報告をあげた。
 ロータスはこの時も宮殿は王座の間にのぼり、それを父王、兄達と共に聞いていた。
 竜人族が頼るのはベリー家であろう、と誰もが予測していた。驚きはない。
「初冬になればおそらく戦は止まるだろう。拠点はどうだ? つぶせそうか?」
 父王・ジェンティアナがそう水を向けたのは次男のアジュガだ。
 現在アイリス王国騎馬軍の将をつとめる彼は、竜人族との戦闘を何度か経験していた。
 肉食獣を思わせる表情だが、話せば明るくよく見れば整った顔立ちをしている。ロータスにとっては良き兄だった。
「彼らは寒さには弱い。また統率力もなく、戦力も散らばっておりますのですぐに片がつくでしょう」
「それは良い。冬前にはなるべく相手の戦力を削いでおきたいからな。次の出兵で成果をあげよ」
「かしこまりました」
 アジュガはにっと笑ってそう応える。この話はもう終わり、と誰もが思った所、ジェンティアナは口を開いてこう言った。
「ロータス、そなたもアジュガと共に参れ」
 その一言にロータス本人はもちろん、アゲートもアジュガも目を見開く。
「ロータスをですか?」
 口を挟んだのはアゲートである。
「そう言った。聞こえなかったか?」
「そうではなく……彼は体が……」
「すっかり良くなったと聞いておる。末席とはいえロータスも王家の者、民の模範たる姿を見せねばならん。それに王子が二人、陣営に加わったとなれば士気もあがるというものだ」
 ジェンティアナは決定済みのように話し、それに戸惑った様子を見せたのはアジュガだった。
 ロータスは突然の話に驚きはしたものの、否やはない。ジェンティアナの前に出ると深く臣下の礼をする。
「承りました」

 ロータスが王座の間を出ると、すぐにアジュガが追いついて肩を掴んだ。
「おい、本気かよ」
「本気ですとも」
「遊びじゃねえんだぞ。それに、いくらなんでもいきなりすぎるぜ。せめて調練の期間がないと……この頃、父上はちょっとおかしいんじゃないか? 前の話を聞いたぜ」
「前、ですか?」
 ロータスが陣営に加わる農民を一時的でも実家に帰すべきと進言した話だった。
 その時ジェンティアナはロータスを睨みつけ、話をなかったことにしたのだ。
「そりゃ竜人族に裏切られた形だからさ、ピリピリするのはわかってるさ。だからといって……」
「父上がどうお思いかは分かりませんが、私がこの王国に貢献出来ていないのは確かです。今回のご指摘はありがたいものと受け取りました」
「そういう問題かよ。それに領地の評判は聞いてる。ウェストウィンドでの犯罪率は低下してってるってな。お前の統治が上手くいってる証拠じゃねえか」
 ロータスが始めに着手したのはそれだった。
 盗みやいたずらなど、軽犯罪から厳しく取り締まっていった結果、その奥に潜んでいた組織犯罪などが目立ち、解体しやすくなったのだ。
 犯罪率が下がったことで外に出やすく、結果小作人、商人、職人の仕事の効率化がはかれている。
 以前コネクションなる組織犯罪に注意せよ、と帝国全土にお達しがあった際にもロータスはいち早くその気配に勘づき、なんとかコネクションの影響を受けずに済んだものである。
 今でもコネクションによってさらわれた者達の帰還には至っていないが、帰路だけでも安全を保っておくように、とロータスは指示していた。
「とにかく、前線には立たなくて良いからな。後方支援にあたれよ」
「兄上。私はもう幼い子供ではありませんよ。それに体も良くなっておりますから」
 ウェストウィンドに引っ越してから、余裕のある日々の方がずっと長い。
「足を引っ張るようなことはしません。それに逸っているわけでもありませんから」
「ロータス……」
 アジュガは表情豊かだ。
 口の端を下げて眉を寄せた……かと思うと、目をわざとらしく細めてロータスを見た。
 彼の指がぐいっ、とロータスの頬をつねる。
「痛っ」
「全く。とにかく目立たないようにしろよ。お前のこの髪は……」
 アジュガはロータスの頭をがしがし撫でると「ふぅっ」とため息のように吐き出す。
「竜人族の銀髪と似てるからな」
 兄の手が離れると、ロータスは自身でそこを撫で整えた。
 彼の言うとおり、ロータスの銀髪はまるで竜人族のそれに似た輝きだった。
 父がロータスを遠ざけるようになったのも、それが原因かもしれない。
 そんなまさか、と思うものの、どこかでそうなのではと考えてしまっている。
 竜人族の間でも銀髪は珍しい方だと聞くが、少なくとも人間で老年以外の銀髪は聞いたことすらない。
 どうしても連想してしまうのではないだろうか。
「気をつけます」
「ああ」
 兄の陣営に加わるとなるとしばらくウェストウィンドには戻れないだろう。
 ロータスはますます重みを増す宮殿を護衛役と共に歩き、城下街を見下ろす。
 続々運ばれてくるのは槍に弓矢、剣に盾。そして篭手や鎧兜だ。
 騎士達が馬を駆り旗手がアイリス王国の旗を振るう。
 陣太鼓が秋の空に響き渡っていった。

 ウェストウィンドへの帰還は叶わぬまま、ロータスの出発が明後日に迫っていた。
 あれから3週間後のことである。
 竜人族が拠点としているのは静かの森から離れた岩山だらけのロックランド。
 岩に身を隠しながら弓で応戦されると予想されているため、盾の準備が急がれていた。
 ロータスはこしらえられた青い鎧を目の前に、緊迫感の増す宮殿内で一人静かに過ごしていた。
 あれからジェンティアナとは会っていない。
 宮殿から遠ざかっていたから気づかなかったが、アジュガの言うとおり、彼はどこかおかしい。
 竜人族の裏切りのためだろう、誰もがそう話している。
 ロータスは腰に下げた一振りの剣を抜き、そこにうつる自分の顔を見た。
 透き通る青い目。アイリス王国ご自慢のサファイヤ湖のようだと言われた目だ。
 今はかげっている。
 それに気づいて眉を寄せた時、遙かに高い天井に届く扉がノックされた。
「お客様です」
 衛兵の固い声が扉越しに聞こえてくる。
「誰だ?」
「クレマチス・ウィンド殿という方なのですが……」
「私の婚約者だ」
 遮るように言って扉を開ければ、頭から薄いスカーフをかぶったクレマチスの姿が飛び込んできた。
「王子」
 気遣わしげな声に応えるように、ロータスは声を明るくする。
「クレマチス。来てくれたのか」
 彼女の手を取ると部屋に入れ、扉を閉める。
 クレマチスはスカーフを取ると、ロータスの姿を頭から足下までじっと見てきた。
「どうかしたのか?」
「戦に出られると聞きました。そのためウェストウィンドには戻れなくなったと……お体の調子はいかがなのですか」
「不調はない」
 我ながら遠回しな言い方だ、とロータスは苦笑すると言い直した。
「大丈夫だよ」
「あまりに突然のお話でしたから……」
 そう話すクレマチスの手を取れば、弱々しく震えているのが伝わってきた。
 それを握るようにするとロータスは笑って見せた。
「出陣すると言っても兄上の陣営だし、慣れた兵士諸君の足を引っ張っても仕方ない。後方に控えていることになると思う。それに、竜人族は将が不在だ。兄上も彼らの戦力を散らせば良い、とおっしゃっていた。危険はない」
「本当ですか?」
 クレマチスはようやく眉を開いた。だが心配が消え去るわけもない、とすぐに口元を引き締める。
「竜人族全体が悪いわけでもないのに……確かに被害にあった方々には不幸でしたが、そのために戦になって良かったのでしょうか」
「それは分からない。竜人族にも被害が出たのも確かだ。どこかで手を打てないか、と考えてしまうが……これは甘い考えかもしれない」
 重い空気を吐き出し、クレマチスに椅子を勧める。彼女がそこに腰を下ろすと、ロータスは先ほどのことを思い出した。
「衛兵があなたのことを知らなかったようなのだが」
 ロータスが言った事に、クレマチスは肩をすくめて答えた。
「王都に入ってからずっとそんな調子でした」
「まさか。末席とはいえ王子の婚約者だぞ。失礼はなかったか?」
「どこの者か問われただけですから、特にはありませんでした。ところで宮殿内は人が多いのですね」
「それは、まあ、そうだろう。衛兵の数は王国の中では最高だそうだし」
「お世話する方も」
「人が多いとそうなるものだ」
「……お若い方が多いのですね。びっくりしました。皆綺麗な服を着て」
「宮殿だからな。どのような者が来ても良いように……」
 クレマチスの目が探るようにのぞいてくる。好奇心に満ちたそれ。
「……何が言いたいんだ?」
 ロータスは彼女の頬をつついた。言いたい事を吐き出せ、と。
「……美しい女性が多いわ。私のことなんて忘れてしまうのでは?」
 ロータスは思わず吹き出した。

 宮殿内――いや、アイリス王国内で美しい女性、といえばまっさきに彼女の名前があがるだろう。
 レイン王家第二王女・ピオニ―。
 アゲート、アジュガの妹でロータスの姉。
 ご自慢の金髪は細かくうねり輝いており、甘えたように目尻の下がった大きな目は薄緑色。
 白い肌の肩は華奢で、どれほど手の込んだドレスも彼女自身の美しさでかすんで見えると言われるほど。
 ピオニ―の名前の通り、満開の花を思わせる美貌にクレマチスは目をみはったという。
「初めてお見かけしました」
「姉上は宮殿にはよくおられるんだけどな。……お一人だったか?」
「え? 侍女の方々とご一緒でした」
「そうか……」
 ロータスはなんとなくほっとし、ごまかすように髪をかきあげた。
 彼女には常に取り巻きがいる。
 それも男の。
「……とにかく、せっかく王都へ来たんだ。良ければ案内しようか」
 ロータスが立ち上がり手を差し出すと、クレマチスはそれに応じて立ち上がる。
 王都は今はものものしい空気が漂っているものの、ウェストウィンドに比べればやはり華やいだ街である。
 城下へ繰り出せば丁寧に敷き詰められた石畳の大通り、花時計、噴水、と人工物が並ぶ中に商店がいくつも立ち並んでいる。
 酒屋のある通りをロータスは避け、夕陽の黄金色に輝く離宮が見える丘へ足を伸ばした。
 風が髪をまきあげていく。
「王子」
「ん?」
「ご無事のお帰りをお待ちしています」
 クレマチスの言葉に、ロータスはいよいよ戦というものが現実味を帯びてきたのを感じ取った。
 気が緩んでいただろうか? それを反省するように強く頷くと彼女の手を取った。
「何があっても必ず帰る」
「はい」
 クレマチスは微笑んだが、嬉しそうではなかった。眉は心なしか曇り、虹色の目はかげっていた。
「クレマチス……」
「いつまでも待っていますから」
「ああ」
 クレマチスは思いついたように「あっ」と言うと、その時首に下げていたペンダントを取りロータスに差し出した。
 6枚の花びらを象ったもの、彼女の名の花だ。
「お守りに」
「……わかった。帰ったらあなたに返そう」
「はい」
 ロータスは受け取ったペンダントを首に下げる。落ちていく夕陽を背中に、宮殿への帰り道を歩く。一歩一歩、今までとは違う方向へ何かが進もうとしている。
 そんな感覚があった。

次の話へ→Tale of Empire ー復活のダイヤモンドー 第3話 人質

 

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