ソファに体を預けていると、休息に眠気が襲ってきた。
シルバーは深く息を吸って、重いまぶたを開ける。
オニキスの腕が耳元を過ぎ、髪、頭を撫でてきた。心地よさにまたまぶたが重くなる。
このまま寝てはいけない、シルバーは手を彼の背に伸ばし、シャツを掴むと引っ張った。
「……どうされましたか」
顔をあげたオニキスと至近距離で目が合う。
ロウソクの灯で照らされた目は不思議に印象が柔らかく、それでいて有無を言わせない何かが潜んでいた。
「……終わったわけでは、ないのでしょう?」
「はやく続きがしたい?」
オニキスは不敵な笑みを浮かべた。そろっと頬を撫でられ、シルバーは首に緩い電気が走ったような感覚に体を震わせる。
「だって……あなたの、その……」
硬くなってる。
そう言うに言えない。シルバーが言葉を濁すと、オニキスは「ああ」と今気づいたようなそぶりを見せた。
「もったいないでしょう。せっかくの夜なのに、焦っては」
「……そう?」
「私を気づかう余裕が残っていたのは残念」
「なんですって?」
どこか不穏な声音だ。シルバーはオニキスの頬を挟んで顔を見た。
やはり余裕めいた、食えない奴の顔をしている。
「ふふ。可愛い人だ」
そう言ってオニキスはシルバーの唇をかすめ取った。
「もう」
「まだ初々しい所を見ておきたい」
耳にふっと熱い息がかかり、柔らかい舌で軟骨をなぞられた。腰がくだけそうな刺激に、思わず声が出る。
「あ……」
脚をすり寄せると、間にあったオニキスの脚を挟む格好になった。太ももに硬い、どことも違う彼の部分が当たって体が熱くなる。
オニキスの唇が首筋に移動し、手が胸に伸び――彼がぱっと身を起こした。
「どうしたの……?」
目をゆっくり開けると、オニキスは髪をかきあげつつ立ち上がった。シルバーの肩と膝に手を入れ、そのまま抱き上げる。
「オ……ねえ?」
「ベッドに行きましょう」
シルバーを抱き上げる腕はがっしりとしている。そういえば、弓を引く、と言っていた。これだけの腕力があるなら相当やりこんでいるのだろう。
白いレースの天蓋が二人を外界から隔離した。
燭台が遠いな、とオニキスが呟いた。
充分だろう。互いの顔はよく見えるだろうに。
「物足りないの?」
「ええ。よく見ていたい」
ベッドに二人で倒れ込む。沈み込むようにすると、洗濯したての清潔な香りに包まれた。
そのままオニキスが抱きしめてくる。シルバーは彼の体温を味わおうと胸元に頬をすり寄せた。
力強い鼓動が聞こえてくる。
「天蓋があるのは良いな。我ら二人だけのようだ」
「ええ……安心出来るわ」
シルバーはそう言いながら、オニキスのシャツを指先でいじる。汗のせいか、しっとりしていた。
抱きしめられたまま呼吸をすると、互いの匂いが混ざって鼻腔に入り込んでくる。
強烈に性交を思わせる、濃く混ざり合った匂いだ。目元が重くなって、頭がくらくらする。
喉が震えるまま息を吐き出し、オニキスのシャツをぎゅっと掴んだ。
汗が混ざる。
オニキスの剛直が、ぐりぐりと穿つように脚の付け根を穿ってくる。痺れるような甘い感覚がそこに蘇ってきた。
「あぁ……もうだめ……」
「だめ?」
オニキスはゆったりとした口調で、しかし重く響くように囁いてきた。首筋にさざ波が立つようだ。
シルバーは離れようとするオニキスの腕を抱く。
「だめ、とおっしゃったではありませんか?」
「言ったけど、そうじゃなくて……」
オニキスは分かって言っているのだろう。試すような目つきに、色濃い瞳。からかうような口ぶりと裏腹に指先はシルバーの体を誘うように撫でてゆく。
「意地悪ね……」
「誤解で組み敷かれたと言われたくありませんので」
「厄介だわ……そういう女性がいた?」
「いた、と言ったら?」
オニキスは上半身を起こすとシルバーの手を取る。指を弄ぶように絡め取られ、爪に緩く歯をたてられると痺れるような刺激が走った。
シルバーはそれを見ていたが、オニキスの目を覗き込んだ。
「慰めてあげましょうか?」
そう言うと、彼は目元に愉快そうな笑みを浮かべる。
「それは良いな。ぜひ、慰めて下さい」
オニキスに手をひかれ、シルバーは体を起こした。胸元を撫で、自分自身から口づける。
オニキスの手がシャツに導く。シルバーはボタンを外すと、肩からはだけさせるように脱がせた。
自分とは違う張りの良い肌。それを確かめるように指でなぞると、オニキスはくすぐったそうに笑い声をたてた。
「好奇心旺盛だな」
オニキスは楽しげに笑い、シルバーを抱いたまま背中から倒れ込んだ。
彼を見おろす格好になったシルバーは、促されるまま唇を重ねる。
自分からキスをするとまた違う味わいがあった。彼の唇は弾力があり、体温がしっかり通って心地良い温もりがあった。
上唇を咥えるようにすると、オニキスの手が髪に伸びて耳にかけられる。
肩を抱かれるまま体を密着させると、胸がつぶれて形を変えた。
汗が谷間に流れ、オニキスの肌を濡らす。また互いの匂いが立ち上ってきた。
「そのまま体を起こして」
オニキスに言われ、上半身を起こすとこちらを見上げてくる彼と目が合う。
有無を言わせない、強い光が黒々とした瞳の奥にある。うっかり見つめたら服従してしまいそう。
オニキスはシルバーの手を取りそっと導く。
シルバーの手はバランスの良い腹筋をなぞり、呼吸に合わせて上下する腹部を辿り、まだ布に覆われたままのそこにたどり着いた。
今にも弾けそうなほどに張り詰めて、熱く、湿り気を帯びている。
形に合わせて手で撫でると、オニキスは「はあっ……」と息を吐き出した。
「熱いのね……苦しくない?」
「苦しいですよ。かなりね」
「脱がせば良いの?」
「ええ、お嫌でなければ……」
オニキスのベルトに手をかけ、金属を鳴らしながらバックルを取る。前をくつろげると、オニキスはシルバーの手を包んでしまった。
「あまり見るものじゃありません」
そうお説教でもするように彼は言った。
シルバーはむっとして唇を尖らせる。
「私のは見たのに」
「どちらかと言えば、気づかって差し上げてるのに……向学心があるのも考え物だな」
「どうせ薄暗いわ」
「ご覧になって怖がられたら、私が傷つきそうです」
オニキスはふとねだるような声音でそんな事を言った。シルバーはいよいよ眉を寄せる。
「怖くありません」
「では、嫌いになるかも」
オニキスは言葉とは裏腹に余裕めいた笑みを見せた。
(……好ましく思ってもらいたいの?)
まさかオニキスが心まで求めるとは思えなかった。が、わざとらしくても甘えるようなそぶりを見せられては、何か心臓がくすぐったい。
「……嫌いにも、なりません」
そう答えると、オニキスは目尻を和らげて体を起こし、顔を近づけた。
「オニキス……」
「名前は呼ばないように……」
しーっ、と唇に彼の指先が触れる。
そのまま声を飲み込むと、オニキスの唇が啄むように触れてくる。
しっかりとしたオニキスの手が頬を包む。じんわりと暖かいそれは、途方もない安心感をシルバーに与えてくれる。
目を閉じて手の熱を味わい、目を開けると視界がぼうっと淡い色に彩られているようだ。
オニキスの顔がゆっくりと頬を滑ってゆく。
耳に息がかかり、肩が勝手に跳ねたかと思うと耳に緩く歯を立てられた。
「……目を閉じたままで」
さざ波のたつ声が直接耳に注がれ、シルバーは腰をくねらせた。声を出さなかっただけ上出来だろう。
何事かと思っていると、オニキスはシルバーの手を導いた。
熱いモノに触れ、シルバーはそれが何か本能的に察する。背筋に熱の波が立つようだった。
「そのまま、掴んでみて下さい」
「だ、大丈夫なの?」
「ええ。折れるように感じますか?」
「……」
手に力を込める。
彼の剛直をぎゅっと握ると、力強い脈動が手に伝わってきて痺れそうだ。ゴリゴリと硬いのに、人肌らしく馴染むような弾力がある。それに、どことなくしっとりしていた。
オニキスが唸るような息を吐き出し、それに合わせてシルバーの手の中でぐんぐんとまた大きくなった気がした。
たくましい蛇のようだ。
「んん……こんなに、なるのね」
「怖いでしょう? これが、中に入るんですよ」
あなたのここにね。
オニキスはそう囁きながらシルバーの下腹部に手をあて、そろっと円を描いた。
彼の剛直がここに入る。
どうなってしまうのだろう。
「あ……」
「お腹をなぞっただけで、感じるのですか?」
きゅううっ、と体の深い部分が反応した。足をすり寄せ、唇を噛む。
「こ、怖くは……」
「本当に? あなたのここは、ずいぶん狭い……壊してしまいそうだ。ああ、だけど……」
オニキスは首筋に唇を寄せ、手を下腹部から更に奥へ忍ばせる。
ぬちゅっ、と音がした途端、弾けるような快楽にシルバーは体を折り曲げた。
「ん……!」
「これだけ濡れているなら、大丈夫か……」
「やっ、だめ……」
シルバーの制止も聞かず、オニキスは中に指を侵入させた。
指先がくの字に曲げられ、かき出すように中を探ってくる。
また淫蜜があふれ出てきた。シルバーは足を閉じようとし、しかしオニキスにより足を掴まれ、彼の腹を跨ぐ格好に開かされてしまった。
「ねえ……っ!」
「恥ずかしい? 珍しい表情だな……そんな顔もされるのですね」
「ふ、ふざけているの?」
「ふざけてはいません。色んな貴女を見てみたいだけです」
「も、もう……!」
シルバーはお返しに、と剛直を強く握って見せた。オニキスは軽く呻くと表情を崩す。
手の中でモノが更に強ばった感じがした。
「参った、参りました!」
オニキスは珍しく破顔して笑う。シルバーは手を離した。
「使い物にならなくなったらどうしてくれるのですか」
「あら。そうなったら責任を取って差し上げるわ」
「ふふ。大胆なことをおっしゃる。貴女相手ならそうなっても良いかもしれないな……」
「おだてたって何も出ませんよ」
「そうかな」
オニキスは不敵に笑うとシルバーの頬を片手で掴むようにした。
親指と人差し指で頬を持ち上げ、目が合うと唇にキスをする。
「思っていたよりもずっと可愛い。このまま閉じ込めてしまいたいな」
咽の奥をくすぐるような、本気とも冗談とも取れない、不思議な声音だった。
シルバーはずいぶんくだけた様子の彼に見つめられ、胸からどんどん熱い気恥ずかしさが溢れてくる。
つい目をそらし、足を折りたたむようにすると背中を丸めた。
「ずるいわ……」
「先ほどまでの威勢は?」
「本当に罪作りね」
「それは貴女の方でしょう」
オニキスはそう言って、シルバーの体をひっくり返した。
視界が一気に変化する。シルバーは天蓋を見上げ、見おろしてくるオニキスの顔をまじまじ見ることになった。
「心の準備は?」
オニキスは声を落とし、片手で体を支えながらシルバーの内ももをもう片手でなぞる。
手のひら全体で嘗めるように撫でられると、背骨がぞくりと震えるようだった。
シルバーは足を開き、オニキスの体に手を伸ばす。背中にすがりつくような格好になると、オニキスが腕を広げてシルバーの体を包むように抱きしめた。
(本当は優しいのね……)
オニキスの唇が髪の生え際をなぞった。くすぐったいような熱が灯されていく。意識がふわふわして、体中に暖かいものが満ちていくようだ。
「もっと足を開いて下さい」
「どのくらい……?」
「私の腰がおさまるくらい。そう、そのまま」
シルバーははしたない、と叱られるだろう姿になり、顔が熱くなって彼の目を見られなくなった。
横を向いて目を閉じる。シーツを強く握りしめると、急に心細いような感覚に襲われた。
誰でもない誰かになってしまう気がして。
唇を噛んで耐えるものの、目尻に涙が浮かぶのを止められない。
オニキスの手にそっと顔を撫でられ、シルバーは目を開ける。
「嫌ならやめます」
幼子を宥めるような声だ。シルバーはその一言に、強く首を横にふった。
「やめないで……」
「しかし……」
「消えない思い出が欲しいの。そうすれば、きっと、どこに行っても後悔せずに生きていけるわ」
そう言葉にした瞬間、シルバーは自身で息を飲み、オニキスは眉を顰めた。
「それほどの決意だったのですか?」
オニキスの手が頬を包む。
それだけで全身が炎に包まれたように熱くなった。
「……そうみたい。自分でも驚いたわ」
「……それほど大事な決意なら……」
「嫌?」
「いいえ……」
オニキスの唇が額に触れた。それから耳に滑り、痺れたようになっていた首筋にも。
「あ……っ」
緩く歯を立てられると、腰がざわめいて足が跳ね上がる。
「惜しいな……ここに吸い付きたいけど、それをすれば貴女は好奇の目にさらされる」
オニキスはそう言って、歯を立てたあたりを舌でなぞった。
ざわざわっと波打つような刺激が頭に回る。
シルバーは酔ったようにぼやける視界の中、指先を口に持ってきて爪を噛んだ。
息が乱れているのが自分でも分かる。
「やはり、首が弱い」
オニキスは楽しそうだ。シルバーはオニキスの肩を掴んで目を閉じる。
「私ばっかり乱れてるわ。もう力が入らない……」
「それで良いでしょう。私は痛いくらいに興奮しています」
「そういうもの?」
「ええ。もっと力を抜いて」
オニキスの手が頬を撫で、体をなめるように下へ移動した。内ももを押し広げられると、いつの間にやら柔らかくなっていたカトレアに、ずぷずぷっと指が入り込む。
「ん~……!」
2本、3本、と次々指が入り込む。ぐちゅぐちゅにかき回され、シルバーは全身を強ばらせたが指が引き抜かれると一気に脱力する。
「挿入りそうだ」
オニキスは独りごちると、シルバーの手を掴んでそこへ導いた。
「な、何?」
「挿入る所を確認して」
「えっ」
シルバーは胸元まで熱くなるのを感じながら、オニキスの導くとおりに指を広げる。
ぽってりと腫れて淫蜜を垂らすカトレアの花びらに、オニキスの熱い剛直の、その蛇頭があてがわれるのを指で感じた。
「うぅ……っ、は、挿入るかしら……」
「挿入りますよ。貴女のここは、思ったよりも柔らかい。それによく濡れている」
ずずっ、と蛇頭のその先端が淫口に進んだ。
シルバーは指の間を濡れた剛直が進み、徐々に自身の中を犯すのを予想して、視界を涙でぐしゃぐしゃにした。
熱い。
炎で焼かれているようだ。
「力を、抜いて、下さい」
オニキスが苦しげに言って、シルバーは頷く。
張り詰めた蛇頭がぐっと中に入り込み、狭いところを抜けて中の空洞にぴったりとおさまる。
熱くてよく分からないが、互いに吸着した感じがあった。中が反応してひくひく震えている。
だが指の間で感じるのには、剛直はまだ全ておさまっていない。それだけで息をしているかのようにドクドクと脈打っている。
まだ物足りない、とでも言いたげに……。
だがオニキスはふーっと息を吐き出すと、シルバーの頬や首を撫でた。
「……痛みますか」
「……少し……でも、まだ……」
「慌てなくて良いでしょう。……まさか、物足りないですか?」
「もう」
オニキスらしい冗談にシルバーはつい笑みを浮かべた。
息を整えるようにしていると、涙はおさまり力も抜けてくる。両手を胸の前で組んで息をすると、オニキスが唇を求めてきた。
それに応じて唇を薄く開ける。
彼の熱い舌が入り込んで、舌をとらえた。
オニキスが甘やかすように頬を撫でるのでそのままにしていると、彼は苦しげに息を乱し始めた。
「……そろそろ、動いてもいいですか……」
「え……?」
「このままだと、溶けそうです」
オニキスはシルバーの足を抱えた。膝を立たせ、しっかり開かせると手をそのまま自身の下腹部に伸ばす。
「もっと貴女の中に挿入りたい。……奥まで」
切羽詰まったような彼の様子に、シルバーは腹の奥が疼くように感じた。
痛い。
熱い。
重い。
でもそれだけでもない。このままだと物足りない。
シルバーが頷くと、オニキスはほっと息を吐く。
中の潤んだ壁がそれ以上先へ行っては、後戻り出来ない、と訴える。
ぎゅっと閉じた奥への入り口をこじ開けるように、オニキスは腰をすり寄せた。
「……うぅっ」
「苦しい?」
シルバーは素直に頷く。ビキビキと皮膚が剥がれていくような痛みだ。
「……痛い」
「やめま、しょうか」
そう気遣わしげな声が聞こえて見上げれば、オニキスは黒い瞳をこれ以上なく広げ、唇を噛んでいた。
シルバーは思わず彼の腕に爪を立て、首をふる。
「いいえ……平気……」
そう小声で言うと、オニキスは迷ったのか腰を止めた。
シルバーは体を起こし、オニキスを抱きしめる。
「平気……このまま、奥まで来て……」
そう言葉にした瞬間、オニキスの息が震えた。耳元に熱くかかり、背筋がびくりと反応する。
奥から熱い淫蜜が溢れてくるのをシルバーは感じた。
「そのまま抱きしめていて下さい」
オニキスはシルバーの背に手を回し、ぐっと力を込めて抱きしめる。
中で熱い塊がぬるっと蠢き、ビッ、と突き進んできた。
「んぅっ」
電流に貫かれたような感覚に眉を顰め、中が出血したな、とシルバーは悟る。
耳年増は悪いことばかりでもない。意外と冷静でいられた。
「熱い……殿下……」
オニキスがそう呼び、シルバーは唇を尖らせる。
「呼んではだめ……」
「……そうでしたな。しかし、ここが……」
オニキスはシルバーの下腹部を撫でた。そこではオニキスの剛直が息をするように脈動している。
シルバーは流れてくる赤い血をちらりと見て、すぐに顔をあげた。
「……ごめんなさい。あなたが汚れてしまったわ」
そう謝ると、オニキスは驚く程瞳に光を湛えて見つめてきた。
「汚れたなど……。申し訳ありません。不快な気分にさせるかもしれませんが……自分でも戸惑うほど、今、嬉しいのです」
「え……?」
「すごい……誰にも汚されなかった貴女のここが、私で満たされている。ほら……」
ぐいっ、と蛇頭の先端が奥を突いた。
じんとする痛みに似たものがつま先まで流れていく。
「あっ、待って……」
「困った……歯止めを掛けられそうにない。殿下、お嫌なら、本気で命じて下さい」
「えっ、あ……ちょっと……」
たっぷり濡れているのはどちらなのか、とにかく中を探るには充分らしい。オニキスの剛直はそれこそ蛇のように中をぬるぬる行き来する。
思ったよりも痛みは続かなかったが、今まで通ったことがない所にモノが通るというのは変な感じだ。
オニキスは瞳を輝かせ、息を荒くして腰をすりつけるようにしている。
シルバーはオニキスのその息に全身くまなく犯されていく感じがした。
全身がゆだったように力が抜けていく。それでいて彼の手が胸を鷲掴みにした時、カッと体が熱くなってたまらない気分になった。
「あんん……」
「いい声だ。感じておられるのですか?」
「わ、分からないわ……変な感じよ……あなたは?」
「訊かなくてもお分かりでしょう? すぐにでも暴れてしまいそうだ」
ずぷっ、ぬぷっ、と音を立てて中がかき乱される。膣内を荒馬が暴れているようだ。
――私自身が荒馬ですから
お茶会で冗談めかして言ったあれは、本当のことだったのか。
シルバーは今更ながらオニキスが興奮している様子にどぎまぎし、顔が熱くてたまらなくなってシーツを握りしめた。
「こんなに濡れて……処女なのに、いやらしい」
「あ、あなたがそうさせているのでしょうっ」
「そうですか? ほら、もう俺のをしっかりくわえ込んで、離そうとしない。これじゃ抜けないな……」
「あ……!」
オニキスは力を強くして中を突き、胸の頂きを摘まんで揉み込んだ。
ぎゅうっ、と固くなったベリーがオニキスの舌で舐めとられる。腰がざわつき、足の付け根に熱いものが流れてゆく。
ちゅうっ、と何度も吸われると乳房全体にじんじんする熱が残った。痛いだけでない官能が中に生じ、オニキスの剛直をくわえ込む。
「ふふっ……素直な体だ」
「た、のしそうね……」
「楽しいというより、嬉しいのですよ。貴女はどこも美しい。そして淫らだ」
「そんなにはしたない……?」
「ええ。……そういう女性は好きだ。何も返さないお人形さんなど、抱いてもつまらないですから」
オニキスはシルバーの首を舐めた。シルバーは官能が頭にまで流れるのを感じて首を仰け反らせる。オニキスの舌がそれを追いかけた。
「いけないな……こんな姿、簡単に見せては」
「ん……だって……」
「言い訳出来ますか? 自ら、腰をゆらして俺のを味わっているではありませんか?」
「え……えぅっ」
「抱き上げたらどうするのかな」
「っ?」
オニキスはシルバーの体を抱いて上体を起こした。座ったまま抱き合う格好になると、先ほどよりも顔が近くなる。
それに、剛直を上から飲み込むことになると、簡単に奥に届いてしまう。
オニキスが腰をゆらすと、ぬちゅぬちゅと互いの愛液が絡まって流れていった。
「……あ、だめ……」
シルバーは振り落とされないよう、オニキスの肩に縋りつく。ベッドが二人の体重で傾いたらしい。ギシギシと音を立てはじめた。
「あっ……」
「甘い声だ……でも、我慢しないと」
「な、ならもっと優しく……」
「優しく? 俺は躾けのなっていない荒馬だ、と以前ご説明申し上げたはずですが」
「あ……っ!」
ぐりぐりっと無遠慮に奥を突き上げてくる。シルバーはいよいよ目尻に涙をためた。
「だめ……だめっ」
「ちゃんと言葉にしないと……」
オニキスは息を吐きながら、シルバーの顎を掴んで目を合わせる。黒い瞳はじんわりと体を溶かすような熱を帯びていた。
「……もっと、胸、して……」
「……かしこまりました」
背を仰け反らせ、胸を突き出す。オニキスは乳房をすくい上げると、敏感に立ち上がるベリーをきつく吸い上げた。
「あっ……!」
舌先がれるれると固いベリーをいじめる。シルバーは口元を覆って声をもらさないようにしたが、その分官能が下半身に流れていく。
逃げ道のない快楽は中のオニキスを更に追い詰めた。
「ぐうっ……! やっぱり、きついな……」
「ん……! ごめんなさ……」
「謝罪よりも唇が欲しい」
オニキスは顔を近づけ、唇をかすめ取る。やや強引に中に舌を入れられ、シルバーは思わず涙を流した。
舌が吸われ、びりびりと体に官能が走る。シルバーは手を震わせてオニキスの体を撫でた。
それだけなのにぞくぞくするほど体温を感じて、息がおかしくなりそうだ。
中で剛直が暴れている。壁にエラが引っ掛かって、それがまた怪しい疼きを誘ってきた。
腰が揺れる。波打つように擦りつけるように。
オニキスの手がシルバーの足の付け根に伸びる。
「あっ!」
ぷっくりと膨れた赤い粒に触れられた瞬間、体が待ち望んでいた快楽に跳ねた。
「ここで、また、イケますか」
オニキスはぬちゅぬちゅ遠慮なく触れながら、殊勝な態度でそんなことを訊いてくる。
シルバーはお互いの唾液を舌に絡ませながら頷いた。
「もう、限界……」
「なら良かった……私も、一度、出しますよ」
粒の皮が剥かれ、指の腹できゅうきゅういじられる。シルバーは先ほどとは違う、熱いくらいの官能に足が跳ねるのを止められなかった。
強く揺さぶられ、コントロールがまるで出来ない。
オニキスは激しく剛直を出入りさせ、それに合わせて荒く息をしていた。
「あっ、イくぅ……!」
喉の奥がキリキリ言うような声が出た瞬間、ぱんっ、と弾けるような官能に体が反応した。
中はぎゅうぎゅうになり、オニキスの剛直を強く締め付ける。と、オニキスは体を浮かせて剛直を一気に引き抜いた。
どろっとした淫蜜まみれのソレがシルバーの足の付け根で暴れ、オニキスは自らの手で扱く。
オニキスが表情を歪めた。その瞬間、ビュッ、と白い体液が飛び出てシルバーの乳房を濡らす。
「あっ……」
と、熱い体液がかかった事に、腹のあたりがじんわりと妙な熱を生む。
オニキスは唇を噛んでいたが、ふうっと強く息を吐き出して何度も剛直を絞るようにしている。
ビュッ、ビュッ、と飛び出し、その度シルバーの太ももが汚れた。
どろどろの白い体液は手のひらいっぱいほどだろうか。ねばねばして、肌に絡みつくようだった。
「……失礼しました……」
オニキスの手が太ももに触れた。それに足が反応して跳ねるとともに、上擦った声が息をともに出てしまう。
シルバーは自分の手で乳房にかかった白い体液に触れる。
オニキスが目を見開いた。
「……すごい……」
ベリーに白いものが流れて、色が変わる。指先でなぞってすくい上げ、濃いねばねばを指先に絡める。
見ているとおかしな気分になりそう。
シルバーは指から垂れ落ちるそれを目で追い、それからこちらを見つめるオニキスの顔を見た。
「こんなにたくさん、出るのね……」
「あまり言わないで下さい……」
オニキスは珍しく決まり悪そうに顔を背け、シルバーのその指を取ると口に咥えた。
「ん……何してるの?」
「舐めとっているだけです。せめて、綺麗にしないと……」
舐めとる、と言いながらオニキスはさりげなく歯を立てて指の腹や爪を刺激しているではないか。
シルバーは唇を噛んで官能を耐え、オニキスの手が離れると足を抱えるようにした。
「なぜ隠すのです?」
「だって、ここも、するつもりなのでしょう?」
「ええ。そのままで良いのですか?」
「……」
シルバーは返事に困って唇を尖らせた。
オニキスは自身の髪をかきあげ、シルバーの譲らない態度を見ると笑みを浮かべる。
「貴女は時々、子供のようだ」
「どうして良いか分かりませんもの。教えて下さる?」
「参ったな。貴女に妙なことを教えて良いのかどうか……」
「妙なこと?」
「体を見せて下されば、お教えしますよ」
「……綺麗に、するの?」
「舐められるのが嫌なら別の方法にしましょう」
「舐め……嫌いではありません」
シルバーの返事にオニキスはふっと笑った。シルバーの両手を広げ、ふるふる揺れる乳房に顔を埋める。
白い体液を垂らすベリーを丹念に吸われ、シルバーは背中を丸めて喉を震わせた。
「……かなり濃いのが出たな」
「そうなの? 良いことなの?」
「快楽が強いとこうなります。私はね」
「そうなの……」
「逃げないで下さい。お腹まで流れている」
「だって……」
ぼうっとした体なのに敏感に反応する。くすぐったいどころではないのだ。オニキスはシルバーの腰を掴むと胸元からお腹まで、問答無用に綺麗にしていく。
「足は……もう良いですから」
ぐちゃぐちゃに濡れたカトレアはだらしなく花びらを垂らしているだろう。あまり見られたくない。シルバーはそこを隠し、オニキスの腕を取った。
「そうですか?」
「ええ……それで……どうしたら良いの?」
「……私のも綺麗にして欲しいとお願いしたら、どうしますか」
「え」
どういう意味なのか、とシルバーは首を傾げた。オニキスはそれを見ると目元を和らげて笑う。
「やはりな。何でもありません」
「逃げるの? ずるいわ。教えて下さる約束でしょ」
「そこまでおっしゃるなら、仕方ないな。私のこれを、口で吸って欲しいのです」
オニキスは先ほど白いものを噴き出したそれを指さした。
つるんとした先端はまだとろとろしたものを出し、ひくひく震えている。
「……」
「やはり、嫌でしょう」
シルバーがじっと見つめたまま固まっていると、オニキスはそう言って立とうとした。
「ま、待って……嫌とかではなくて、そういうことがあると知らなくて……」
「無理は禁物ですよ。嫌な思い出になるやも」
「どうなのかしら……してみたいけど」
「……驚くほど好奇心旺盛だな。そのまま口を開けて」
シルバーはまだ硬さの残るソレを手にする。びくびくと脈が伝わって、手のひらが感電したように感じた。顔を近づける。
「舌で舐めて下さい」
オニキスが言って、シルバーはその通りにした。
半透明のぬるっとした液体は、酸っぱいような苦い味だ。それが舌に広がり、眉をひそめる。
そのまま先端を舌でなぞると、オニキスの体が震えるのが伝わってきた。
「咥えて」
「ん、ん……」
口をめいっぱい広げて咥える。口内いっぱい、別の生き物が蹂躙してくるようだ。
おそるおそる目を開けてオニキスを見れば、彼は耐えるように眉を寄せてシルバーを見ていた。
髪をかきあげられると視界が広がる。
目がしっかり合うと、不思議に安心した。
そのまま吸うように喉を動かすと、オニキスが腹の底から熱く息を吐き出した。
「吸ってみて下さい」
言われるままに強く吸う。口内でオニキスのモノが勢いを取り戻し、剛直になった。
シルバーはまた体に熱が溜まるのを感じ、恥ずかしさから顔を熱くした。
一度唾液ごとぬるぬるを飲み込むと、口から離す。オニキスの手が頭に伸びて、顔を上向かせる。
「続けられますか?」
「……う、んん……多分」
シルバーがもう一度剛直を咥えると、オニキスはまた髪を撫でて顔を見てくる。
(見ないで欲しいのに……)
こんなに恥ずかしい思いをしたことはない。全身が視線で焼かれるようだ。
だがオニキスが息を乱すのを悟るたび、それが嬉しく思えて止まらない。
じゅううっと強く吸うと、口内で剛直が強く反応する。
「そのままっ……、出る……!」
シルバーは強く目を閉じ、強く吸い上げた。
それに促されるように剛直がビンビンと反応し、勢いよく喉の奥に熱いものを放つ。
「っ!」
「くぅ……っう……」
オニキスは腰を跳ねさせ、シルバーの頭を抑えた。そのせいで余すことなく熱いものが喉に流れていく。
思わず喉を鳴らして飲み込むと、オニキスは息を飲んでシルバーの顔を覗き込んだ。
「の、飲んだのですか?」
「だって……出せないっ」
「それは、……申し訳ありません。つい……」
シルバーはようやく目を開く。心配顔でこちらを見つめるオニキスとようやく目が合った。
オニキスに顎を掴まれ、親指で唇を開かされる。彼は中を見るとはーっと息を吐いた。
「……参ったな……そんな顔をされるとは……」
「……そんな顔って……?」
「また襲いたくなる顔です」
「……自分じゃ分からないわ……」
「鏡をお持ちしましょうか?」
オニキスはそう言うと冗談ぽく笑った。シルバーはつんと顎を持ち上げてそっぽをむいて見せた。
「もう」
「可愛いな」
オニキスは調子よく笑って、シルバーの唇をかすめ取る。
触れるだけ、そう思っていたキスがどんどん深くなってきた。シルバーはオニキスの肩を押そうとしたが、逆に強く抱きしめられて身動きが出来ない。
舌が絡まり合い、体の中に官能が注ぎ込まれていく。
思わず胸を叩くと、彼は痛そうなそぶりは一切見せずに唇を解放した。
オニキスの手はそれでも誘うようにシルバーの体をなで回し、じくじくする疼きがまた逃げ道を絶ってしまう。
「……もう。男性って止まらなくなるって、本当なのね」
「好意のある相手なら、そうなるでしょう」
シルバーはその言葉に何か返したくなったが、オニキスはすでにその気だ。シルバーの耳に、首に、と次々熱を埋めるように口づけていく。
「もう一度、貴女を抱きたい」
鼓膜に直接響くよう囁かれ、腰を跳ねさせたシルバーに断る術はない。
オニキスに抱きしめられたまま目を閉じ、与えられる快楽に身を任せた。
Tale of Empire -白樺の女王と水の貴公子ー 第6話 それぞれの日常へ