満月が足下を照らしていた。
今夜は月が近いらしく、かなり明るい。
オニキスは厩舎から衛兵の目をかいくぐり、白いてすりのベランダにたどり着いた。
木枠の彫刻が美しいガラス窓をノックする。
色の濃いカーテンが開かれ、覗き込んできた翡翠色の瞳に笑みを見せる。
シルバーは艶然と微笑むと窓を開けた。空気が中に引っ張られ、オニキスはそれに乗るようにして彼女の寝室に入り込む。
流石は女王のためにしつらえられた寝室だ。
天蓋付きのベッド、クローゼット、化粧台に全身鏡がかなりの余裕を持って配置されている。
足下はふかふかの絨毯で、靴をはいているのが惜しいくらいだ。
それに、清潔ながら甘い香りがする。人工的ではないそれを辿ると、花が飾ってあった。
春に咲く白い薔薇だ。部屋中に飾られている。彼女によく似合っていた。
「どこに潜んでいたの?」
シルバーの声はどこか楽しそうだ。いたずらを思いついた少女のような、そんな生意気な感じがある。
「厩舎に」
「あなたの馬車は帰って行ったのに」
「ええ。ご覧になったのですか?」
「気になったの」
「私が帰ったと思って?」
「そうよ。そしてどこから忍び込むのかしらって」
シルバーの細い手がジャケットに触れた。オニキスはそれを脱ぎつつ振り返る。
シルバーは下ろした髪を左側にまとめて流し、化粧もしていないせいかいつもと雰囲気が違う。
白いレースで縁取られた寝間着はふわふわと動きに合わせて揺れ、女王というより本に登場する乙女のよう。
どこか現実離れした姿。
オニキスは彼女の存在を確かめるようにそっと顎に触れた。
「私が約束を反故にすると思われなかったのですか?」
そう問えば、シルバーはつま先立ちをして秘密話でもするようにささやいた。
「あなたは約束を守るわ」
オニキスはシルバーから寄せられている信頼に頬を緩め、彼女の細い腰に手を回すと抱きよせた。
髪から甘い香油の香りがする。
コルセットをつけていない体は柔らかく、シルバーがそっとしなだれかかると豊かな乳房が押しつけされた。
小さな手がシャツの生地を楽しむように撫でてくる。
オニキスは薄い寝間着越しに、彼女の背を手のひらで味わった。腰に至るまでの背筋のくぼみにそって指でなぞると、シルバーがほっと吐息する。
肩を掴んで顔を上向かせると唇を重ねた。
熱くしっとりとして、弾力のある唇だ。舌で舐めると不思議に甘い。
シルバーの手がそっと頭に伸び、髪の感触を確かめるように撫でた。彼女の肢体は緩やかに力が抜けていく。
オニキスは背に回した手に力を込め、体を密着させた。
唇も角度を変えて、深く。舌を口内に進めると、シルバーの腕からいよいよ力が抜けそうになった。
彼女は慌てて顔を離し、息を整えると頭をふってオニキスの胸元に顔を埋めた。
「だめね、急ぎすぎてる……」
「せっかちなのがお気に召さないのですか?」
「いいえ。でも、本ではあまり簡単に事を進めてはいけないと」
「……本?」
「そういう本があるでしょう。私、勉強はしたつもりですが、実際にするのとでは大違い」
勤勉な彼女らしい言葉だが、オニキスは思わず額をかいた。
良い流れだったではないか?
彼女のいう本ではどんな解説が乗っていたというのだろう。
とはいえシルバーはまじめに考えている。それがいやに可愛らしく、背を向けた彼女を抱きしめると腕の中に閉じ込めた。
「こういうことは、お互いの作り出す空気に任せれば良い」
「難しいことを言うのね」
「その本と私と、どちらが信頼出来ますか?」
「……あら」
シルバーは目を丸くしてオニキスの方を見た。
満月の光しかないのが惜しい。これではシルバーの姿を堪能出来ないではないか。
「とはいえ、貴女の意向も無視出来ない」
オニキスはそう言いつつ体を離し、テーブルの燭台に火を点けた。
「あなたは慣れてるのね」
「まあ、これでも健康的成人男性ですから」
「隠さないのは嫌味? それとも余裕? 女と違って殿方は自由ね」
「女性の体の方が価値が高いのですよ。大切だからこそ、守らなければならない。そこらへんのバカな男に差し出してはいけません。自由を勘違いしてはいけませんな」
オニキスは4人は座れそうなソファに腰掛け、ゆったりと腕を広げる。シルバーを誘い、近くにあった燭台にも火を点けた。
「男女の価値に違いがあるのかしら。でも、まあ、そう言われて悪い気はしません。それにあなたはバカではないわね?」
「それはご自身で判断せねば。私はバカな男か、あるいは悪い男かも」
「そうね……少なくとも、私の知ってるあなたは中身のある男だと思うわ」
シルバーはオニキスに誘われるまま、膝の上に座って見おろしてくる。オニキスは小さな手で胸元を撫でられ、とろけるような心地に息を吐き出すとシルバーの腰に触れた。
太ももに感じるお尻のもっちりした感触。
燭台のロウソクに照らされる頬はすべらかで、髪は艶めいて発光しているみたいだ。その生え際に指を滑らせ、頭皮に触れる。
シルバーはくすぐったそうに肩を縮めた。
「貴女にはそう見えているのですね」
「ええ。でも、そうね……騙されないようにしないと。あなたは食えない奴だから……」
そういう彼女の瞳が広がっている。胸が上下し、シャツのボタンを探る指先はじれったそうだ。オニキスはシルバーの耳元に唇を寄せて言った。
「それこそ、脱いでしまえば身分は何も役立たない」
「ベッドでは人の中身がよく分かるということ?」
「あなたは聡い方だ」
オニキスは彼女の手を取り、体を抱きよせると口づける。
どちらのものか分からない、じんとした熱が伝わった。離れてしまうのがもったいなく何度も唇を吸う。
頬を撫でてようやく離すと、じんわりと熱を浮かべる翡翠色の瞳とぶつかった。
「どのように触れあえば貴女のお気に召すのか……本でも読みながらにしましょうか」
「それだとあなたの中身が分からないのよね? それなら、本は必要ない」
「それは良かった」
オニキスは香る彼女の髪の房に鼻先を埋め、青く血管の走る首筋を舌で辿った。シルバーの体がビクビク震える。
首が弱いらしい。
彼女のぴんとした綺麗な耳を唇で辿ると、シルバーは背を丸め、息を飲むようにした。
可愛い反応に力が入る。
オニキスは彼女を逃がさないようしっかりと腕に抱き、耳をくすぐるように囁いた。
「貴女の体は本の中にはない」
シルバーがはっとして顔をあげたが、すでに目尻がとろんと下がっている。そのままソファに押し倒せば、無垢な乙女のようにオニキスを上目遣いに見つめてくる。
何をするつもりなの?
視線でそう言われているみたいだ。
シルバーの脇腹を撫で、唇同士を触れあわせる。
弾力のある唇の奥へ舌を割り込ませてゆっくりと歯列を舐めた。互いの舌先が溶けそうに熱く、唾液のせいで境界線が分からない。
溢れそうになる唾液を絡め取って薄い舌先ごと吸うと、シルバーは体を強ばらせて息を乱した。
上顎を撫ぜ、もっと深くまで、唇ごと味わおうと貪欲に求めると、流石にシルバーは裾をひいてやめるよう訴えた。
口を放すと、「はあ」と酸素を求めた彼女の喉の奥から悩ましげな声がもれる。
「溺れてしまうわ」
「そうなったら助けて差し上げましょう」
オニキスの言い様にシルバーはふふと笑った。冗談だと思ったのだろう。
細い首筋に軽く吸い付き、肩をむき出しにするとそこにも唇を這わせた。どこも滑らかで、ほのかに薔薇の香りがする。
「あなた、泳ぎは得意?」
「ええ。もちろん……貴女は?」
「泳げないの。昔、溺れて以来怖くなって……あっ」
シルバーの声が跳ねたのは、オニキスの手が太ももに伸びたせいだ。指先でむっちりしたももをなぞると、シルバーは脚全体を強ばらせた。
「どこも触り心地が良いな……それに真っ白だ」
脚を持ち上げると、寝間着がめくれあがって内ももまで露出した。青い血管が走る肌は幻想的な白さで、やはり人間離れしたものをオニキスは感じる。
やはり星を母祖に持つためだろうか。
どこかには竜を先祖に持つ人々もいるらしいが……。
オニキスは体を離すと、ソファに寝転がって脚を開く彼女の肢体を見つめた。
シルバーは何事か、と戸惑った目でオニキスを見つめている。
「……こんなに美しいものを見たことがない」
「恥ずかしいわ」
シルバーは寝間着の裾を引っ張って、脚の付け根に寄せる。まだ見えてはいないが、隠されると暴きたくなってしまう。
頬を赤くする彼女の手を取って、閉じようとする脚を止めた。そこに体を割り込ませ、宥めるように髪を撫でる。
「まさか初めてなのですか?」
神殿での成人の儀式を経ていないのだろうか。
「ええ。皇族はしないの……万が一があったらいけませんもの」
「そうか……なるほど」
「でも、気にしないで……私は結婚するつもりも、子供を産むつもりもないの」
「思い出だけが欲しいと?」
「ええ、そう……」
シルバーは身を起こし、オニキスの肩に手をかけると額に口づける。
「それは、いや?」
シルバーは甘えるような声で訊いた。オニキスは参ったな、と頬を緩めると彼女の背に手を回した。
「光栄ですよ。貴女の思い出に残るよう、忘れられない夜にして差し上げます」
「わがままを言うなら、あなたの思い出にも残りたいわ」
そんな事を言うシルバーを抱きしめる。
「可愛い人だな」
うふふ、と小さく笑う彼女の手を取って頭の上に持ち上げる。
オニキスは柔らかくこぼれそうな乳房を包み、寝間着の上から揉みしだいた。ふにゅふにゅだがみっちりと充実した柔乳が手の中で柔軟に形を変える。
「ふぅ……」
シルバーは暑そうに息を吐く。頬は赤く染まり、それが首筋にまで広がりつつあった。
甘い香りが段々強く立ち上る。
谷間からだ。
蜜漬けの薔薇のような甘い香りを肺一杯に取り込もうと鼻先を埋めると、何かが切れそうなほどに陶酔しかねない。
オニキスは顔をあげて口から息を吐いた。
乳房を強く鷲掴みにしても痛い様子はない。好きにしていると、手のひらにぴんと尖ったものが触れた。
寝間着越しに赤いベリーのような乳首が存在感を強めているのだ。食べて欲しそうにしているが、オニキスはその周りをぐるりと爪で辿るのみ。
シルバーがじれったそうに腰をゆらした。
「柔らかい胸だ」
「かたい胸なんてあるの?」
「言われてみれば、ありませんね。でも、ほら」
オニキスは乳房を下から揉み込んだ。
シルバーの乳房は手のひらに自然と落ち着いて、離すとぷるんと弾む。
「しっとりしていて、手に馴染む」
それを繰り返すと、シルバーは気だるげに息を吐いた。体温は熱く、乳房も。
香りに誘われるまま熱い乳房に顔を近づけ、シルバーを見た。彼女は息が早まり、鼓動が早まり、目尻に目尻を赤く染めている。
「舐めても?」
そう訊きながら返事を待たずにふっくらとした乳房に舌を這わせる。
シルバーの体が跳ね、息が乱れた。
布地ごしにきつく吸うと、シルバーは自身の指先を噛んだ。
オニキスの唾液で濡れ、そこだけがねっとり濡れ透ける。赤いベリーが浮き出るよう。
「はぁ……んん」
感じやすいのか、シルバーは胸を寄せ隠すようにしたが、脚をすり寄せてねだるような仕草を見せた。
オニキスは内ももに手を這わせ、恥骨から揉むようにしてもう片方の乳首を緩く噛んだ。
「んっ」
彼女の喉の奥から跳ねるような高い声が漏れ、オニキスはつい笑みを浮かべると耳元に顔を寄せる。
「声は我慢しないと。扉の向こうの者に聞かれてしまう」
そう言いながら濡れ立つ乳首をきゅうっと摘まむ。シルバーは唇を噛んだがオニキスを睨むように見上げてきた。
「意地悪ね」
「誰にも聞かせたくありませんから……可愛すぎて、もったいない」
「そうやって、ごまかす、のっ?」
指の腹で乳首をこね回すと、みるみる硬くなっていく。
オニキスの言っていることとやっていることがめちゃくちゃだ。シルバーは息を荒げて叱るように言ったが、恐ろしくもない。
布地があるためか、吸うと口の中がもたついてくる。シルバーもじれったいのか、脚の付け根に寝間着を集め、何度もすり寄せている。
シルバーの腕が胸を寄せ、谷間が深くなった。そこに視線が吸い寄せられ、くいっ、と寝間着をひっぱると、柔乳がこぼれそうに盛り上がった。
「あ……っ」
オニキスは谷間に鼻先を埋める。甘い香りで満たされ、白く柔らかい乳房を吸って離せば、香りがどんどん濃くなる感じがした。
「ねぇ……」
「なんです?」
乳房を味わうように舌を這わせるオニキスの肩に手を置き、シルバーは息で胸を上下させながらねだるように言った。
「直接……」
消え入りそうな声で、して、と言うと、シルバーは耳まで真っ赤になった。
オニキスはそれを見ていたが、両手で柔乳の感触を布越しに味わうばかりだ。
「直接ですか? だが、高貴な女性の寝間着を脱がせてしまうのはあまりに忍びない。……同意の証に貴女がこれを脱いで」
「わ、私が?」
「続けて良いと思われるなら」
オニキスは彼女の膝を立てさせ、薄いスカート部分の生地越しに内膝に口づけた。シルバーの脚が震えた。
「……あ、あちらを向いて」
「嫌です」
「な……」
「見ておきたい。私の思い出にも残りたいのでしょう?」
オニキスの言葉にシルバーは泣き出しそうなほど眉をハの字に下げた。
外見は芯の強そうな立派なレディにも関わらず、まるで気弱な乙女だ。
髪を撫でて頬を包み、初めてする若者のようにキスをすると、シルバーは目をきらきらさせてこちらを見つめてきた。
「……ぬ……脱げば良いのね」
そう言うと、シルバーは肩紐をずらし、胸を押さえながら腕を抜いた。
息づかいが聞こえてくる。彼女も興奮しているようだが、オニキス自身も自身の息が早まっていることを今更気づいた。
追い詰められた小動物のような、助けを必死で求める目でシルバーは見つめてくる。
寝間着が重みで下に下がってきた。オニキスが彼女の腕を取ると、パサッ、と細い腰までが一気に露わになる。
しっとりとした豊かな乳房がぷるんと揺れた。
シルバーは目元を酔った人のように赤く染めながら視線を外す。
「やはり、美しいな。舞踏会で誰にも見つからなくて良かった」
「……それは、あなたが? 私が?」
「どちらかな……」
彼女らしい、簡単に飲まれてくれない返答に口の端を持ち上げ、ぷりぷりした耳たぶに吸い付く。
「んう……」
と、くすぐったそうに腰をくの字に曲げ、シルバーはオニキスの肩を押しやる。
むき出しになった柔乳が揺れ、目線が釘付けになった。
オニキスは彼女の腰を抱いて、赤い首筋に吸い付いてその乳房を鷲掴みにした。吸い付くような質感だ。
シルバーは酸素を求めて喉を反らせる。腕の中で彼女の力がどんどん抜けていくのが分かった。
ソファに寝かせ、浮き出る鎖骨から充実した下乳にもちゅうっ、と音を立ててしゃぶるように食いつく。
手で乳房を持ち上げ、掴んでゆらすとシルバーがたまらない、と震えた息をもらした。
「あぁ……もう触って……」
シルバーの手が初々しいベリーに導いた。
鮮やかな色の乳輪に、ぴんと尖った小さな果実。汗のせいなのか、燭台に照らされて艶めいていた。
「我慢出来ないのですか?」
オニキスは乳房を好きに揉みながら、肋骨を舌先でなぞった。シルバーは腰をゆらし、膝を立てる。
「んう……だって……」
シルバーの手が自ら乳首に触れようとした。オニキスはそれを掴んでやめさせ、彼女の両手首を取ると頭の上に縫い付ける。
「オニキス殿……っ」
「名前は呼ばないように」
シルバーの口をキスで塞ぐ。じんじん痺れるような刺激が唇に走った。薄くなめらかな舌を追いかければ、彼女は応えるように舌を出した。
「いやらしい」
耳に注ぐようにそう言うと、シルバーは肩を跳ねさせて喘いだ。
「いい子にしていれば、もっとして差し上げます」
「あっ……!」
シルバーの頭を抱えるように撫でると、熱くなった耳に指が触れた。はぁはぁと乱れた息づかいが聞こえる。
まさか普段の自然な威圧感を放つ彼女と、同じ人物とは思えない。ヒールで男を踏みつけていたのは本当に彼女だったろうか?
オニキスは口元に笑みを浮かべ体をずらし、彼女の全身を撫で、徐々に露わになる肌に順々に口づけていく。そのたび彼女の体温が上がり、ねだるような声がオニキスの耳をくすぐった。
意外に引き締まった脚を抱え、指先でその筋を辿る。シルバーはつま先に力を入れ、「あぁっ」と声をあげた。
寝間着が腰まで落ち、そのまま脚を持ち上げるとお尻がむき出しになった。
オニキスは手を伸ばしてお尻を撫でる。
「いい触り心地だ」
くすぐるようにすると、シルバーは手でソファの縁を掴んだ。
「はぁ……あぁ……体が溶けそう……」
シルバーはぐったりと脚から力を抜いた。
オニキスは寝間着を取って脚を開かせ、ソファの背もたれに片足を預けさせた。しっとりとした脚を唇で食み、辿って昇って行く。
視線の先には繊細な毛の茂み。すでに濡れているのか、きらめいて、ひくつきに合わせて毛が蠢く。
「いけませんな、こんなにして」
「ああ……だって……」
「『だって』? 言い訳は聞きませんよ、体は嘘をつけません」
「んん……ごめんなさい……」
素直に謝るシルバーに再び覆い被さり、ぽってり膨らんだ下唇を舐める。
「キスが好きですか?」
「すき……好きです……」
ずいぶん素直ではないか? オニキスは彼女の唇を吸って開放すると、その赤く染まった顔を見ながら胸元に顔を埋める。
「もっとして欲しい?」
「して欲しいです……あっ!」
谷間の皮膚を吸い上げるようにすると、シルバーは背を仰け反らせた。
オニキスはしーっと静寂を促し、シルバーが頷いたので笑みを見せる。
「いい子だ」
「ふ、うっ……!」
乳首を指でくにくにといじり、もう片方を舌で弄ぶ。一気に硬くなったそれを舌の表面でなで上げると、シルバーは喉をそらせてひゅっと息をした。
「感じやすいな……貴女は」
「い、いけませんか……?」
ふと弱気な声が聞こえて顔をあげれば、目尻に涙を浮かべて様子を伺う彼女の姿があった。
「いいえ……だが、いやらしいな。レディとしての気品がない」
「え……あっ」
「こんなに尖らせて、香りをまき散らして」
オニキスは赤い乳首をきゅうっと摘まむ。シルバーは体を跳ねさせ、脚をまたすり寄せた。
「いけない人だな」
「ごめんなさい……」
「もっと我慢しないと」
「ん、う……!」
ちゅううっ、と乳首を吸い上げれば、シルバーは脚をまた大きく開いてしまった。オニキスの脚に甘えるようにすり寄せ、足首を膝に絡ませてくる。
「しまりのない足だ……はしたない」
オニキスの叱りに、シルバーは肩を跳ねさせた。嫌な気分ではないのだろう。頬は赤く、息もどんどん荒くなっている。
「もっとして……っ」
「いい子にすれば、と言ったでしょう?」
「します、しますから……っ」
「本当かな……」
シルバーが無意識に寄せた胸に再び吸い付き、乳輪も乳房もどこにも食いつく。
「~~っ……!」
シルバーは指を噛んで声を押し殺したが、足は更にオニキスを逃がすまい、と絡みついてくる。
「ほら。いい子にして」
「あっ……」
オニキスはその脚を開かせ、ももを撫でた。シルバーは目を硬くつぶって、いやいやをするように首を横にふる。
オニキスがぱっと体を起こすと、シルバーはとっさにそこを隠した。
涙混じりの目で必死に訴えているが、オニキスはそれを受け入れず手をどかす。
咲き始めのカトレアのような秘部の入り口が、その花びらを震わせながら淫蜜をしたたらせていた。ひくっ、と震えると同時につやめく透明な淫蜜がお尻に流れていく。
オニキスが顔を近づけると、まだ青いイチゴと濃いミルクを煮詰めたような匂いが鼻腔を刺激した。
一気に腰のモノが熱くなる。
「すごい……」
「み、見てはだめ」
シルバーは我に帰ったのか、何度も手で隠そうとするが男の力にかなうはずがない。
結局顔を手で覆い隠してしまった。
オニキスは陰毛を探りわけ、カトレアをそっと開かせた。きれいなピンク色の花びらだ。その上には小さな赤い蕾がちょこんと乗っている。
「きれいだ」
ふーっと息を吹きかけると、シルバーの脚が強ばりカトレアも健気にひくついた。
彼女の愛らしい反応にオニキスは気をよくし、ジャケットを手早く脱ぎ捨ててシャツのボタンを片手で開ける。
喉が苦しいくらいに漲って、かわいたようにひりついていた。オニキスは垂れていく淫蜜を舌で掬う。
「いっ……!」
か細い声とともにカトレアがきゅううと締まった。
まだ青い果実のような酸っぱさが口に広がる。シルバーの太ももを抑え、赤い粒ごと吸う。
シルバーは声を出さないようつとめているが、体はしっかり反応して淫蜜を流している。ぱっと口を放し、そろっと割れ目を指先でなぞった。
「こんなに濡らして……」
「あっ、いや……」
「聞こえますか?」
ちゅぷっ、ちゅぷっ、と粘着質な水音が指の動きに合わせて出てくる。
シルバーは指をまた咥え、うっすら目を開けると手を伸ばした。
「いやぁ」
「嫌? 乙女の反応とは思えない……」
シルバーは再び目を閉じて首を横にふった。が、肝心のカトレアはオニキスの指を嬉しそうに迎える。
「こんなに指に吸い付いてきますよ」
指をゆっくり上下すると、意志を持った生き物のように花びらが収縮した。淫蜜が指を伝って流れてくる。
「違うのっ……あ、いや……!」
「また言い訳を? 嫌ならやめましょう」
オニキスは指を抜いて、手を目の前に持ち上げた。とろとろした淫蜜が指の股に垂れ、手のひらを濡らして行く。
シルバーに見せつけるようにして舐めとると、彼女は頬を赤くしてそれをじっと見つめた。
ぼうっとしたような彼女の翡翠色の目は熱に浮かされているよう。瞳が広がって、いつもより幼く見える。
「はぁ……あっ、う……」
シルバーは爪を噛み、肩を小刻みに震わせると自らの手を下腹部に滑らせた。オニキスは今度はそれを止めず、その行く先を見る。
「あ……んん、ねえ……」
シルバーの指がカトレアを広げた。とぷっ、と淫蜜が溢れ出す。
「もっとして……」
喉の奥から絞り出されたようなか弱いおねだりに、オニキスは頬を緩ませながらもついいたずら心がわいてしまう。
「わがままだな……とても責任あるお立場と思えない」
「ごめんなさい……」
そう健気に謝るシルバーだが、言葉とは裏腹に叱られる度に体がくねって、誘うように甘い息を吐く。
「ご自身で慰められたことがあるのですか?」
オニキスは淫蜜を掬うようにしながら赤い粒までなぞりあげる。シルバーは必死に首を横にふるが、体は素直だ。
「そんな、こと、聞かないで」
彼女の曖昧な返事に、オニキスは我が意を得たりと笑みを浮かべた。
「見てみたいな……貴女が一人で、ご自身を慰めるところを」
「それ、は……いやっ」
「指を入れたことはありますか?」
シルバーは無言で否定を現す。オニキスはひくつくカトレアの中心にそっと指を這わせ、きゅんきゅん締まる様子を見せるそこに指先をあてがう。
「……入りそうだ」
シルバーは手を伸ばし、オニキスの手を掴んだ。目線をあげると涙をたたえた彼女と、まっすぐに目線がぶつかった。
「……いきなり奥まで、などは……」
「しません。貴女が本気で嫌がることは何も。……それにじっくり味わわないともったいない。入れますよ」
オニキスは自身の手のひらを上向かせ、中指をすーっと差し込んだ。案外スムーズに、彼女の淫蜜は潤滑剤となってオニキスの指を迎え入れて行く。
「……熱い」
シルバーはそんなことを言って、体の力を抜いたようだ。中はさざ波を立てたが、やがて中に入り込んだオニキスの指を確認するように吸い付き始める。
綺麗な感触だ。なめらかで、小さな丸い突起物にちゅうちゅう吸われているよう。
中に自分の剛直を入れたら、どうだろうか。想像するだけで腰回りが熱くなる。
「苦しくは?」
オニキスは喉の熱さをごまかすように息を吐き、そう訊く。
「いいえ……思っていたより、平気……。でも、すごく熱いわ……」
「熱い?」
「火傷したみたいに……あなたは?」
「私は……たまらない。貴女のここは、熱くて、とろとろで、必死に吸い付いてくる」
オニキスが指を探るように動かすと、シルバーは肩をびくつかせて息を飲んだ。
「私のモノで隅々まで味わってみたい」
「あっ……!」
シルバーは自身を抱くように、腕を交叉させた。
「可愛い反応だ」
白い内ももに軽くキスをする。それを繰り返すと、彼女はその度に小さく声を出す。
「しーっ」
そう沈黙を促すと、シルバーは口を覆って頷いた。
「感じやすい体だ。持て余していたのですか?」
「そんなこと……あっ」
「中がうねってきた……私の指がお気に召したようですね」
「あっ、ちょっと……待ってっ」
淫蜜が奥から流れてくる。オニキスの指を濡らし、たっぷり中に満ちた。
多少激しくしても大丈夫だろう。オニキスはカトレアの中心を広げるように指を動かし、シルバーに痛がる様子がないのでもう一本、指を入れこむ。
「う……」
「痛い?」
「い、いいえ……」
ぬぷぷっ、と音をたてて人差し指が吸い込まれて行く。やはり素直な体だ。柔軟に拡がり、オニキスの望み通りにその指に吸い付く。
溢れてきた淫蜜をオニキスは逃さないよう舐めとる。
目の前で赤い粒がぷっくり腫れているのが見えた。切なげに震えている。
オニキスはそれをじゅううっ、と吸った。シルバーの体が跳ね、強ばる。
「ん~……!」
「味が濃くなってきましたな」
オニキスは指を引き抜き、淫蜜で濡れ輝くカトレアを口で味わった。
「あっ……!」
か細い声でなくシルバーの脚を広げさせ、溢れてくる酸っぱい蜜を吸う。
収縮しながらも柔軟に拡がりを見せる、カトレアの中心に舌を潜り込ませた。そこはすっかりほぐれ、ぱくぱくと広がったため、中の薄い乙女の証にも触れられる。
誰にも触れられたことのない、その証。
「あぁ……あっ」
舌でなぞるようにすると、シルバーは不安げに髪を口元に集めた。
翡翠色の目が揺れている。
オニキスは神秘すら感じるそれを舌先で味わう。
薄い膜だ。
下手をすると簡単に破れてしまいそう。
二度と触れることのないその証を、オニキスはこれ以上なく丁寧に味わった。
シルバーのか細い、ほとんど聞こえない声が聞こえる。オニキスは淫蜜の絡みつく舌で、周辺の内壁を探る。
赤い粒がひくひく震えていた。
「っ……はあ、ぁ……も、もう、限界……ねえ……」
「イキたい?」
「ええ、そうね……変になりそうよ……」
シルバーは口で息をし、宥めるように胸元をさする。激しく上下する胸元は、こころなしか赤くなっていた。
「楽にしていて下さい」
オニキスの言葉に頷くと、シルバーは脚を開いて目を閉じた。
オニキスはカトレアの中心を指で広げ、淫蜜が溢れてくるとそれを舌でたどる。
「あっ……んん、ぅ」
色の良い声だ。かなり中もほぐれてきたのだろう。オニキスは腰がどんどん重くなる中、酔いそうになる彼女の蜜を夢中で飲み下し、広がるピンク色の花びらを舌で舐める。
真っ赤に腫れた粒を指で押し、淫蜜を絡めてこするとシルバーは脚を跳ねさせた。
「んん~……っ!!」
つま先にまで力が入っている。白い脚がオニキスの肩を抱くようにした。
やはり、粒は敏感なようだ。触れる度に体が跳ねる。
「……ここを、一人で慰めておられたのですか?」
「っ……! あっ!」
シルバーは羞恥に顔を赤くしている。図星らしく、中心がきゅう、と締まった。
「すごいな……ここ、今にも弾けそうだ」
「やっ……あ、言わないで……っ」
「言って欲しくない? おかしいな。さっきから嬉しそうに蜜をこぼして、私の指を濡らすのに」
「~~~っ!」
シルバーは涙目になって見つめてきた。その時ですらもオニキスの指を締め付ける。
可愛い反応にオニキスはついいじめたくなり、内壁を指の腹で、触れるか触れないか、ギリギリでそーっ、となぞるようにした。
「んんん……っ!」
彼女は体を浮かせ、脚をばたつかせる。熱に浮かされたような目はオニキスをじっと見つめ、小さな手がすがるように頭髪を掴む。
オニキスは真っ赤な粒を強く吸った。
「あっ、もう、いや……!」
ねだるような甘い声をあげた、と思うと、シルバーはカトレアをぎゅうっと収縮させ、オニキスの指を強く締め付けた。
「んんっ!」
びくびくっとカトレアが震え、彼女の脚が跳ねる。オニキスは絶頂を迎えた、と知ると、まだひくついて淫蜜を垂らすそこを丹念に舐めた。
「あ、だめぇ……!」
シルバーはまた体を強ばらせる。
じゅるるっ、と蜜を吸い上げると、オニキスは顔をあげた。思い切り息を吸い込んで、シルバーを見た。
彼女は体をぐったりと横たえ、胸元を上下させ、指先を咥える甘えるようにオニキスを見上げてくる。
「……キスして……」
可愛いおねだりに、オニキスはすぐさま答える。体を抱くようにして覆い被さり、汗でしっとり濡れた肌をなでながら唇を吸った。
次の話へ→Tale of Empire -白樺の女王と水の貴公子ー 第5話 一夜の恋 後編*官能シーンあり