うそとまことと 小説

第13話 つながりあって(官能シーンあり)

 

 琴はシャワーを浴び、白のレースで飾られたピンク色のナイトブラとTバック、白いシンプルな部屋着を着て、好きにして良いと許可を得たキッチンで白湯を作っていた。
 雪平鍋に入った水が、徐々に泡を立てる。
 それを見ながらバスルームから聞こえるシャワーの流れる音を聞いていた。
 緊張なのか期待なのか、さっきからどきどきそわそわと心が落ち着かない。
 食事の後、二人で好きな音楽の話や、都筑の撮った写真を見せてもらって楽しんでいたが、ベッドに入る時間が近づくとつい考えてしまう。
(またするのかなぁ)
 セックスが嫌かと訊かれれば、微妙だ。
 段々いやらしくなっていく自分に呆れてしまうのだ。
 その一方、都筑の体温や匂い、息づかいに包まれると幸福感があり、少しずつだが快楽も強くなってきた気がする。
 でも、都筑に「はしたない」と嫌われたら。
 ジュウッ、と湯が火で蒸発する音がして、琴ははっとする。
 慌てて火を消し、量の減った湯をただ見つめる。
(どうしよう……)
 嫌ではないが、期待しているが、どんどん変わる自分についていけない。

***

 カランを回し、湯を止める。
 都筑はタオルを取って髪、体を拭き、衣類を身につけるとリビングに向かった。
 琴は睨むように鍋を見つめていた。
「……どうかしたのか?」
「えっ、あっ!」
琴が振り向いた。
「その、ちょっとこぼしちゃって」
「火傷は?」
 都筑が眉を潜めると琴は首を横にふる。
「大丈夫です。でも飲むには熱いかな~って……」
「それでにらめっこ?」
 都筑は頬を緩めると、琴の側に寄る。
「まだ熱そう?」
「はい。水で割ろうかな」
「なら俺ももらおうかな。足りそう?」
「割れば足ります」
 都筑はコップを二つ用意し、水を入れると鍋の湯を注いだ。
 渇いた喉にぬるい白湯が心地良い。
 琴がなぜか都筑を見つめていたが、やがて彼女もコップに口をつけた。
 ゆっくりと飲んでいる。
 どこか上の空のようすだ。
 都筑は声をかけるか迷ったが、彼女を待つことにして髪をがしがしと拭く。
 もうすぐ夏だ。半乾きでも大丈夫だろう。
「ねえ、普さん」
「ん?」
「あの……」
 琴は話しづらそうにし、目を合わせたかと思うとそらしてしまう。
「その……だ」
「だ?」
「だ、抱きついても良いですか」
 琴の発言に都筑は目を見開く。
 すっぴんの彼女は頬を赤くし、まぶたのすけるまつげになぜか初々しさを感じる。
 恥ずかしげにしている様はメイクなどしていなくても充分色っぽい。
 都筑は下唇を噛むと、髪をかき上げるようにした。ややあって口を開く。
「ダメだ」
「えっ!」
 琴はショックを受けたようだ。
 項垂れて口を尖らせている。
(今そんなことされたら理性がもたない)
 そうと知らない琴は諦めたのか背中を向け、水分補給のため鍋を手にする。
 都筑はふっと笑う。
「なんで笑うんですか」
「可愛いから」
「じゃあ……」
 琴が続きを言う前に手で制する。
「ダメだ。抱きつかれたら、理性が飛ぶ。君を俺で汚したくなるんだ。だから、ダメだ」
 都筑がそう言うと、琴は顔を真っ赤にして黙り込む。視線も下を向き、合わせてくれない。
「抱きしめてるだけで満足……そうなれれば良いけど……今は難しい」
「……そうなんですか? ねえ、普さん。あの……これって、普通ですか?」
「普通?」
「えっちしたいけど、するのが怖いとか……した後なんか……呆れてしまうっていうか……」
「呆れる……賢者タイムか? どんな風に? 俺として、気持ち良くなかった?」
 都筑が慌ててそう訊くと、琴は首を横にふる。
 目をしっかり合わせ、話し始める。
「気持ち良いのは気持ち良いんです。でも、なんか自分がどんどんいやらしくなっていくみたい……そんな自分に呆れるっていうか……ついていけないっていうか……」
 琴の説明に都筑はほっと息を吐く。
「そういうことか……良かった。苦痛だったのかと……」
「これって普通? 大丈夫なんですか?」
「普通だし、大丈夫だよ。性感は育つものだし……俺は嬉しい」
 琴は眉をよせた。
「怖いです。自分が変わってしまうみたいで」
「おいで」
 都筑は両腕を広げ、琴を抱きしめた。
 琴は大人しく都筑の腕の中におさまり、甘えるように腕にすがりつく。
「俺が君をつかまえてる。ちゃんと一緒にいる、だから大丈夫だ」
「いやらしくなっても?」
「そうなったら俺のせいだな」
 琴は顔をあげた。覗きこむような彼女の瞳に、都筑の顔が映り込む。
 琴の体から余計な力が抜けたのが感じられた。
 何も飾らない、彼女自身の目、瞳。
 都筑は惹きつけられ、柔らかいまぶたにキスを落とした。
「色っぽいな、その目」
「目……何もつけてないですけど」
「だからキスしやすい」
 都筑は顔を寄せ、琴が目を閉じるのを確認すると口づけた。
 唇を合わせ、角度を変えて深く貪るようにすると、琴が唇を開く。
 歯列をなめ、琴の肩が震えるのを抑えるように抱きしめると、更に奥へ舌を入れこむ。
 小さな柔らかい彼女の舌を求め、唾液も絡めて貪欲に。
 琴が喉を震わせたのに気づいて解放すると、彼女は目元を潤ませて都筑を見た。
 ぼうっとした瞳にはあやしい光が宿る。
「俺は君よりもっと欲深いよ」
「うん……」
「それは否定しないのか」
「えへへ」
 琴は照れたように笑う。その頬はピンク色だ。
 それをつかまえるように手を伸ばし、頬を包むと再び唇を重ねた。体の中心に熱が生じ—―
「あっ」
 と、琴が突然表情を切り替える。
 都筑が目を丸くしていると、琴は体を離してメモを取った。
「色って、色って……」
「どうしたんだ」
「ねえ普さん。顔見せて」
「……良いけど」
 琴は都筑の頬を持って、自分に向けさせる。
「色が変わる……普さん、こういう時目の色が変わるんです。知ってた?」
「知って……いや自分のは知らないけど、君のは変わるよ」
「これだ!!!」
 琴はメモに猛烈な勢いで書き込んでいく。
 都筑は突然の展開に首を撫で、傾げた。
「分かった、分かった!!! ありがとう、普さん!」
 琴は背伸びして都筑の顔を引き寄せ、自分から口づける。
「大好き!」
「あ、ああ、うん」
 ぎゅうっと抱きつかれ、ブラ越しに胸がつぶれるのが分かる。
 が、ムードはどこへいったやら。
 琴は再びメモに向き合い、楽しそうにしていた。
 都筑は軽く息を吐くと、歯磨きをして、リビングに戻る。
 琴はタブレットを取り出し何か書き込んでいた。
(仕事が早いのは良いことだ)
 そう自分に言い聞かせる一方、ムードが壊れた惜しさを感じた。
(お預けか)
 都筑が座ればぴったりのソファに座り、テレビをつける。歴史のクイズ番組だ。
 時計を見れば夜10時。
 琴はタブレットを遠ざけたり、近づけたりしている。

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