うそとまことと 小説

第12話 お泊りデート(官能シーンあり)

 

 都筑と駅前で合流し、スーパーに寄って食材を買う。
 部屋につくと、琴はおやっと思った。
「なんか、部屋……」
 少し散らかっている気がした。
 というより、あまり物がなかった部屋だったが、今は物が表面に出ている気がしたのだ。
 特に、素人目にはかなりごつく見えるカメラが棚に鎮座しているのが目に入った。
「ああ、引っ越しは少し伸ばすことにしたんだ。それで整理したものをまた引っ張り出した」
「へえ~」
 琴は物珍しそうに見渡している。
 音楽CDや何に使うのか分からない、電子機器。本も積まれている。
「なんか良いな……都筑さんのかけらがあるみたいで、落ち着く」
「そう? 前は殺風景だったか?」
「というか、よそよそしい感じかな……」
「ふうん……君は感じやすいのかもしれないな。そういうわけだから散らかってるけど、導線は確保してるから」
「はーい。あ、今日はちゃんと持ってきました。泊まっていって良いって聞いたから……」
 琴はリュックを置いた。
 いわゆるお泊まりセットだ。
 パジャマ代わりの部屋着に、歯ブラシに、下着に、明日の服。
 都筑はそれを見て、ぽつりと言う。
「……やっぱりTバックなのか。俺と会うとき以外は、スカートは穿かないでくれ」
「え? ロングもダメ?」
 琴はオーバーショーツを持っているから、と説明した。
「それでもミニスカートは嫌だな。男がどう見てるか、知ってるだろ?」
「……いやらしい目?」
 沖のような。
「そういうこと。料理しようか」
 都筑は心配性なのか、真剣な表情で琴に言い含め、エプロンを取り出す。
 琴はしまった、と声を出した。
「エプロン持ってきてない」
「……洗い替えで良ければ、俺のがあるけど」
「借りて良いなら使います」
 都筑はブラウンのシンプルなエプロンを琴に渡した。
 当たり前だがサイズはぶかぶか。
 腰の紐をぐるぐる巻いて、なんとか使えるようにする。
 髪の毛を後ろでまとめ、手を洗って食材を取り出した。
 豚肉を切って焼き、サラダを作る。
 オリーブオイルとレモン、塩胡椒の手作りドレッシングを混ぜる。
 都筑に味見を頼み、スプーンが彼の口に咥えられるのを見る。
 その姿になぜかお腹がむずむずする感じがしたが、琴はごまかすように「どうですか?」と聞いた。
 都筑は目を合わせると「うん」と言って、琴の腕を撫でる。
 後ろから抱きしめられる格好になり、琴は戸惑って後ろを向く。
「どうしたんですか?」
「……味、自分で確かめて」
 琴がえっ、と口を開けると、都筑は琴の頬を包んで口づけた。
 挨拶のようなそれと違う。
 口を割って都筑の舌が、琴を求めるように入ってくる。
 んちゅ、と唾液の絡む音がして琴は体を熱くした。
 舌を絡ませる度に、オリーブオイルの青い苦み、レモンの爽やかな酸味、塩気を都筑の舌から感じた。
「んぅ……」
 ようやく口を解放されると、琴は酔ったようにぼうっとした感覚を味わう。
「美味しい?」
「美味しい、です」
「ダメだな……もう触れたい」
「まだ料理、途中……」
「我慢した方がいい?」
「……どうしよう……」
 どきどきと心臓はうるさく、体にはぽっと火がともったようだ。
 もう一度キスして欲しい。
 それが正直な想いだった。
 琴がねだるように手を伸ばすと、都筑は彼女の腰に手を回しながらコンロの火を消す。
 都筑は琴の体を反転させ、調理スペースに座らせると深く唇を重ねてくる。
 唇を余すところなく吸われ、ちゅくちゅく音をたてて舌を絡め、吸われる。
 琴は腰を頼りなくし、後ろに手をついた。
 がちゃん、とヘラがシンクに落ち、二人で笑ってしまう。
「移動しようか」
 都筑が言って、琴は頷く。抱きよせられるまま腕を首にまわし、膝に手を回されるとそのままリビングのソファへ。

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