うそとまことと 小説

第12話 お泊りデート

 

 それから一週間後。
 琴はカリナの写真集のゲストメイクアップアーティストとして呼ばれていた。
 現場のスタジオは初めて訪れる場所。
 大きな駅の近く、繁華街の向こうだった。
 幸い都筑の家の近くへも電車1本で行ける。連絡すると会うことになった。しかもお互い、明日は休みだ。
 琴は楽しみにして、辻と報告がてら話しながらカリナの準備待ちしていた。やがて名前が呼ばれ、琴はメイクルームに入室した。
 今回の写真集で琴が担当するのは3つの姿だ。
 一つはカリナが希望した「男装」
 一つは琴が提案した「ファンタジー」
 一つはカメラマンが指定した「色」
 色に関しては未知数だ。色気なのかカラーなのか。
 琴はとにかくカリナと向き合い、目元にすっきりとしたアイライナーを引いていく。
「二重をちょっとだけつぶそうか」
「潰すの?」
「可愛くなりすぎないようにする。ちょっと切れ長の、あやしい感じにしようかなって」
「分かった、琴さんに任せる」
 カリナの了承を得、琴はアイディアノートを見つつ、実際のカリナの顔を合わせて微調整していった。
 紺、紫、朱色、そして鮮やかな黒。
 カリナの雪のように白い肌にあわせ、それでいて凛として見えるように。
 やがてメイクが終わった。
 カリナはウィッグをつけるためネットをかぶった状態で服を着替えている。
 辻や着物の着付け担当がいる中、カリナが口を開いた。
「ねえ、琴さんの男装写真かっこよかった。個人用のパソコンに保存していい? スマホに残すと色々危ないかもしれないから」
 琴は「恥ずかしいな~」と言いながら頷く。
 カリナに送った「こんなイメージ」の自身に施した男装メイクは、受けが良かった。
 辻曰く「凜々しい爽やか系」
 カリナ曰く「王子様タイプ」
 ミクにも見たい、とせがまれ送った結果「襲っちゃいたい系」という返事だ。
 もちろん身内の意見なので真に受けるのは考え物だが、確かに琴自身も気に入っていた。
「カリナちゃんにするとやっぱり違うね。世界観がよりあやしげ……神秘っていうか、幽玄?」
「能っぽい?」
「そんな感じ」
 着付けが終わり、黒髪のウィッグをつけてヘアスタイリングだ。
「では本人に見てもらいましょうか」
 辻がご満悦な表情を浮かべて言い、カリナを全身鏡の前に連れて行く。
「じゃじゃーん!」
 と、鏡の幕を落とすと、紫色のアイシャドウにシルバーのラメが輝く切れ長の目元、白い肌に映える朱色のフェースシャドウに、白い唇にもわずかな朱色。
 本人の希望通り、可愛いというよりは凜々しくかっこよく。
 黒髪を紫の紐で高く結い上げ、さらさらと背中に流している。
 黒の着物はグラデーションでシルバーグレーにも紺にも輝く。銀糸の刺繍が見事で、どっしりとした帯はやはり朱色。
 袴の雪白が、異様であやしい。
 今までの結城 カリナのイメージをがらりと変える「男装」に仕上がった。
「わー!!!」
 カリナが歓喜の声をあげた。

***

 カメラマンも仕上がりに納得のようで、カリナが小道具の刀を構えるとシャッターを何度も切る。
 カリナはこの撮影のため、殺陣を習ってきたらしい。彼女はやはり白鳥のような女性だ。琴は改めてカリナを尊敬する。
「すごいですね。綺麗っ」
「ええ、本当に。誇らしいです」
「良いな~私も後で撮らせてもらえないかな……」
「あなたカメラ小僧なんですか?」
「かもしれないです」
 琴が怖れていた、カリナの写真集が発売されないようになることはなかった。
 沖はあれから「遊び」を自重しているらしく、司との交際は順調だとアピールしている。
 どうやら司は彼が遊べないようにすることで、「ささやかな復讐」を果たしたようだ。
 結果、沖のファンは減ったがテレビでの露出は増え、新たなファン層を獲得しているらしい。
 今回の撮影は終了で、琴は次回のメイクをカメラマンやスタッフと打ち合わせし、琴もスタジオを出る。
 カリナと辻が車に乗り込んだ。
 挨拶に行くと、カリナが意味ありげに見つめてくる。
「告白、上手く行ったんでしょ?」
 答えを知ってる風なカリナに笑って見せた。
「良かった!」
「ありがとう!」
 カリナを見送り、琴は足取り軽く駅に向かう。 寄り道したくなる店が多いが、琴は一切興味を示さない。
 早く電車に乗って、都筑に会いたかったのだ。

 

18歳以上の方はこちらへ→第12話 お泊りデート(官能シーンあり)

18歳未満の方はこちらへ→エピローグ

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