うそとまことと 小説

第10話 はじめての夜(官能シーンあり)

 

 白の外観のマンション、その都筑の部屋につくと、靴を脱ぎながら都筑が琴の体を抱き上げた。
 琴は都筑の肩に手をまわし、求められるまま唇を重ねる。
 何度も音をたてて唇を吸われ、琴は跳ねる心臓とあがる体温に浮かされる感覚を味わった。
 都筑がやっと解放すると、鍵を締める。
 ガチャン、という施錠音に琴はいよいよ緊張感を高めた。
 もう後戻りは出来ない。
 胸を押されているような不思議な圧迫感だ。
 苦しいのに、期待している。
 都筑は琴のヒールも脱がせ、廊下に立たせると壁に手をついて、琴をその中に閉じ込めてしまう。 都筑は琴をまっすぐ見つめるが、その瞳は情欲で色を濃く深くしている。
 琴は思わず魅入られ、じっと見つめていると都筑の手が腰を撫でてきた。
「……っ」
 ぞくぞくと背筋に何かがのぼる。
 都筑は背中、肩、首、と体の線を確かめるように撫でる。
 琴は全身の産毛がそわそわし、体の芯が溶かされるような感覚に息をのんだ。
「嫌だった?」
 都筑が眉をひそめる。
 彼の声はいつもと違い、さらに低く落ち着いて、ゆったりとささやくように語りかける。
 体の芯に響くようなその声を聞き、産毛を立てた琴は首を横にふる。
「嫌じゃなくて……なんか、変っ……」
 都筑の指先が髪をかきわけ、頭皮を、耳のつけねを撫でる。
「ひゃっ」
 我ながら変な声が出た、と琴が思っていると都筑が唇のはしに笑みを浮かべる。
「くすぐったい?」
「くすぐ……ったい」
「なら良かった」
「え???」
 琴は行き場の分からない両手を宙に彷徨わせる。都筑がその細い手首を包んで、そっとのぼって手のひらを合わせた。
 なんてことのない触れあいなのに、琴はびくりと体を跳ねさせる。
 指が絡められると、思わず目をぎゅっと瞑ってしまった。
「あ……っ」
 高い声が喉の奥から出て、驚いて目を開けると都筑が琴をじっと見つめていた。
 琴がどきどきしながら見つめ返すと、彼は不安げに眉を寄せる。
「……大丈夫か?」
 質問の意味が分からず、琴は首を傾げる。
「大丈夫……です」
「……続けても?」
「はい……」
 ぎゅう、と繋いだ手がより強く繋がれる。
 都筑は琴に軽く口づけ、頬に、耳に、と唇でなぞるように口づけて行く。
 その度に琴は体を震わせる。
 首筋に顔を埋められ、熱い息がかかり、舐められて甘噛みされると琴は腰を頼りなくした。
「ひゃあっ」
 と思ったよりも大きな声が出たと同時に腰がくだけ、そのまま崩れ落ちそうになると都筑の手が支えた。
 彼のその手も熱く、またぞくぞくを生む。
「つ、都筑さん」
 都筑は琴の背を撫で、肩に鎖骨にとキスを浴びせている。「何?」と問い返す都筑の声は今まで聞いたことのない、どこか掠れたような低いもの。
 あまりに色っぽくて、耳がおかしくなりそうだ。
「あの、あの、立ってられません」
「そうみたいだ。……気持ちいい?」
「え? え?」
 初めて味わう感覚に戸惑うばかりで、気持ちいいのかも分からない。
 どきどきした心臓はおかしくなりそうだし、熱を帯びた体はふわふわして、都筑に触れられた箇所はじんじんとして、体を焼くようだった。
「嫌じゃなければ良いんだけど」
 都筑がそう言って、琴は頷く。
 嫌ではないし、気持ち悪いということはない。
「なんか、溶けそうです……」
 そう答えるのが精一杯だ。
 都筑はそれを聞くと、ほっと息を吐き出す。
「なら良かった」
 そう囁く都筑の声は安心したようなもので、琴はそれを聞くと緊張が解けた。
 都筑が胸に顔を埋める。服越しだがデコルテに、胸の膨らみに、頂きにキスされ、琴はびくびくと体を震わせる。
 前髪の向こうに都筑のまつげが見えた。
(けっこう長いんだ)
 などと考え、ついで彼の鼻筋に見とれる。
 すう、と都筑がその鼻を動かして、琴を見上げる。
「甘い匂いがする」
「え?」
 都筑は胸元に鼻を埋めて、すうーっと嗅いで匂いを確かめた。
「すごいな……」
 琴は何のことかと思ったが、確かに甘い匂いがする、と感じた。
 ああ、そうだ、これはあれだ。
 ミルクに花や、果実を加えたようなもの。
「都筑さん。牛乳みたいなの、こぼれてる?」
「いいや、そうじゃない。君も感じる?」
「はい。なんですか? これ」
 琴がそう言うと、都筑はふふっと笑った。
「君の……俺を誘うための匂い」
「へ?」
 都筑はもう一度胸元に鼻先を埋めた。匂いをたっぷりと吸い込んで、楽しんでいるようだ。
 それからそっと左胸に手を添える。
 琴は思わず左腕を胸に寄せた。右手で口元を覆う。
 性の象徴のような場所だ。触れられるのはもちろん初めてで、本当にこれからセックスをするのだと思うと流石に恐怖感も出てくる。
「すごいな、鼓動が……早い」
 都筑は姿勢を戻し、琴を見つめた。
「……嫌なら、ちゃんと言うんだ。君が嫌がることはしないから」
 琴は都筑の言葉に、首を横にふって応えた。
「都筑さんを信じてるから……」
「言っていいのかな、それ。俺にもめちゃくちゃにしたいと思う時は、あるよ」
 都筑は琴を横抱きにする。
 太ももに都筑の節だった指が触れ、びくりと脚が跳ねた。
 たくましい腕で体をしっかりとおさえられると琴は不思議に安心し、手を伸ばして肩に掴まった。
 都筑が向かったのはもちろん寝室で、壁にぴったりと収まるシングルベッド、クローゼットとエアコンがあるだけの部屋。
 都筑はベッドに琴をおろすと、立ち上がって明かりをつけた。
 昼光色の白い光は明るく、琴は自分を見下ろすと下着を確認する。
 幸い上下も揃いのもの、変なものはつけていない。
 それから――
「あれっ」
 琴の驚いたような声に都筑が振り向く。
「どうかしたか?」
「シャワーは?」
 琴は素直に疑問をぶつけた。
 都筑は上の服を脱ぎ始めるながら答える。
「ごめん、俺は待てそうにない」
 男性の肌を見たことがない琴は目がちかちかするほどの衝撃を受ける。
 しっかりと鍛えられた体つきは琴と違って色が浅黒く、小麦色よりも濃い。筋肉は厚いが無駄がなく、仕事で実用的に鍛えられた生々しいものだった。
 どきどきして、顔に熱がのぼる。
「あびなくて、いいんですか」
 カタコトのように話す琴に都筑はおかしそうに笑った。
「シャワー浴びながらしたい? でも俺は、せっかくだから君の匂いを感じていたいんだけどな」
「えっ」
「俺は汗臭いかもしれないけど……」
「だ、大丈夫です」
 抱きついた時も嫌な匂いは感じなかったのだ。
 琴がそのつもりで言うと、都筑は別の意味でとったらしくベッドに膝をついた。
 ギィッ、とベッドのスプリングが鳴る。
 距離が近くなったため琴は足をすり寄せ、小さくまとまる。
 都筑が手を伸ばし、琴の頬を撫でた。
「なら、良いんだよな?」
「へ? あ」
 琴はようやく都筑の受け取った「大丈夫」の意味を悟る。
 このままセックスOKのサインだと思ったようだと。
 都筑は琴の首筋から後頭部へ手をまわし、顔を近づけると角度をつけて深く口づけた。
「んん……」
 慣れない琴が苦しげにすると、都筑は少しだけ唇を解放し、舌先で唇をなめた。
「この口紅、味がしないんだな」
 都筑の感想に琴はぼうっとする目を開ける。
「口紅……?」
「舌、出せる?」
「う、んん……?」
 琴は言われるまま舌を出す。都筑はそれを舐めた。
 途端、腰がずくんと反応する。
「んう」
「もっと出して」
 都筑が求めるままに舌を出す。
 舐められるのかと思ったら、唇ごとキスで塞がれ、彼の舌で舌を絡め取られた。
 じゅるじゅる唾液の溢れる音がして、熱いくらいの都筑の舌が琴の口内を確かめていく。
「ぅ……」
 喉が震え、肩がびくびく震えてきた。
 舐められると舌がじんじんし、熱がのぼり、頭が酔ったようにくらくらする。
 ちゅ、ちゅ、と音を立てて舌も唇も吸われて、琴は混乱のままに涙を浮かべた。
 嫌ではないが、どうすればいいのかわからない。
「んんん~……っ」
 都筑の肩を叩き、都筑はやはりおかしそうに笑って唇を解放した。
「苦しかった?」
 琴は頷く。
 笑みを浮かべる都筑の口元は、琴がつけていた口紅の桜色がうつっている。
 明るいせいでよく見えた。
 恋人の口紅が口元につくなど、理由がはっきりしすぎてあまりに扇情的だ。
 琴は思わず彼のそれを指先で拭った。
その指先を都筑はとらえ、口に含むと軽く歯をたてて取り去る。
 都筑が上目遣いに見てきた瞬間、びく、と下腹部が疼いた。
「この色、よく似合ってた」
「そう、そうですか?」
「ああ。唇の色に溶け合ってる。でも…・・・」
 都筑は琴を押し倒し、じっくりと見下ろすと肘を彼女の肩あたりについて、指を髪に絡めた。
 光を遮って、色の濃い瞳で探るように見つめられると、少し怖くなった琴は体をよじって小さくした。
「つけてなくても色っぽいな、君の唇」
 ちゅっ、と唇にキスが落とされる。
「都筑さん……」
「……ん?」
「あの、明るい……ですけど……」
 琴の中ではセックスは暗い夜、ベッドの中で、シャワーを浴びてからするものだというイメージがある。
 今のところベッドの、しか合っていない。それも中ではなく上だ。かけ布団は二人の上ではなく足下にある。
 都筑は琴の髪を撫で、耳や頬をじっとり撫でる。琴は腰が震え、下腹部がじわじわと何か訴えるのを感じた。
 震える息をはき、都筑がそれに惹かれてか指で唇に触れてきた。
「暗い方が良い? 俺はこのまましたいんだけど……」
 都筑は琴の唇から、口の中に指を進入させた。
 琴は逃げるように舌を引っ込めたが、都筑はお構いなしに歯をなぞり、更に舌を撫でる。
「んぅ……」
 琴は目を閉じ、都筑の指から逃げようと舌を動かす。
 撫でられているだけなのに、お腹がむずむずして腰が揺れた。
 都筑も苦しげに眉を寄せる。
「……これ、やらしいな」
 琴は思わず都筑の指を舌で絡めている。
 都筑は熱い息を吐き、指を戻した。
 琴は口で息を吸い込むとぼんやりと都筑を見上げ、唾液にまみれた口元をぬぐう。
「少し暗くしようか」
「……良いんですか?」
「ああ」
 都筑は体を起こし、枕元の棚からリモコンを取った。
 琴がほっとしていると都筑は言った。
「君のその顔を見てると理性が保たない」
「えっ?」
 照明はややオレンジ色に変わり、互いの顔は見える程度の明るさ。むしろムードが出た気がするが、琴は安心感を得た。
 これなら何となく、二人きりの空間になった感じがしたのだ。
 琴がほっとして笑うと、都筑も笑みを浮かべる。
「何?」
「なんか、嬉しい」
「そう?……可愛いな」
 都筑は琴の額にちゅっと口づける。
 まぶたに、頬に、鼻に、耳に。
「あっ」
 と、右耳に口づけられた瞬間に琴は声をあげて腰をくねらせた。
「……耳が好きなのか?」
「わ、わかりません」
 都筑は唇で食むようにし、舌で耳の軟骨をなぞる。
「あぅっ!」
 高い声でなくようにし、腰を跳ねさせた琴を見て、都筑は唇の端を持ち上げて笑った。
「可愛い」
 都筑の熱い息が右耳にかかって、それもあやしげな熱を腰にもってくる。
 琴は目を閉じ、枕をぎゅっと掴んだ。
 都筑は舌で耳を舐め、唇で吸って行く。
 じゅるじゅると耳元でいやらしい音がして、琴は呼吸のリズムを早めた。
(こんなの知らない……)
 そう思いながら、都筑が唇を離すと寂しくなって腿同士をすり寄せる。
 スカートの裏地がもどかしく感じた。
 体が熱い。
 都筑はブラウスの裾から手を入れた。
 節だったたくましい手のひらで器用にキャミソールごと脱がされ、白の生地に花の刺繍がされたブラが露わになる。
 都筑の手が腹、腰を撫で、肋骨に来ると琴は息を強く吸い込んだ。
 胸に触れられるのだろうか、と思うと胸の頂きが何かきゅうきゅうしてくる。
「……息が早いな……大丈夫か?」
 琴が頷き、都筑は宥めるように髪、頬を撫で、胸を包むように両手で触れた。
 大きいというわけではないが形の良いそれは、ブラごと都筑の手の中でふにふにと形を変える。 直接的な感覚はないが、男性に胸を自由にされることに、琴は少なからず衝撃を受けた。
 嫌ではないが、女の子だった自分が消え、女性としての琴が、男性としての都筑に愛される。もう女の子には戻れない寂しさに、少しだけ涙が出る。
「…………嫌だった?」
 都筑が心配したように琴を覗き込む。
 琴は喉を震わせながら首を横にふる。
「嫌じゃ、ないです。ちょっと寂しくなっただけ……」
 繊細な感情を都筑が理解したかは分からない。 都筑は琴の目元に唇を寄せると、それを拭う。琴は甘えるように目を閉じ、手を伸ばすと都筑の頬に触れる。
「好きです、都筑さん……」
 都筑は一瞬目を見開いたが、頬を赤くすると照れ隠しにか前髪で隠してしまった。
「……全く」
「好きだもん……」
 呆れたように言う都筑に重ねて好意を伝え、琴は膝をたてた。
 都筑が上半身を起こし、琴の手を取って導く。
 都筑の体の中心に触れ、琴は驚いて手を引っ込めようとした。
「わっ」
「君の不用意な発言に反応したんだ」
「えっ!」
 ズボンの向こうで存在感を増す、都筑のモノ――つまり男性器に導かれたのだ。
 琴はもちろん触れるのは初めて、見るのも初めてである。
 指先は逃げるが、都筑は手を離してくれない。
「やばいな、きつくなってる」
「え、だい、大丈夫なんですか」
「終われば大丈夫だよ。終わるかわからないけど・・・…」
 都筑の発言の意味がわからず、琴は顔を真っ赤にしながら、都筑のモノを手のひらに感じる。
(硬くて大きい。どうしよう……どうしたらいいんだろう)
 琴が見ないようにきつく目を閉じていると、都筑が手を離した。ベルトのバックルが触れあう金属音が聞こえる。
 琴はそれの意味を察し、肩を震わせる。
「大丈夫だよ、無理に挿入なくてもなんとかなるから。今日全て終わらせる必要はないし……」
「え? えーと……」
「本当に何も知らないんだな……」
「え、いえ! その、つまり、アレが入るのは知ってます!」
 琴がそう言うと、都筑は肩を震わせて顔を伏せる。
「なんで笑ってるんですか~!?」
「笑うだろ、それは。今時珍しいくらい純情だな」
「だって……」
「だって?」
「だってはやく仕事の出来る人になりたかったし……」
 口を尖らせてもごもご言う琴に、都筑は穏やかに笑うと口づける。
「見たくないなら、上向いてて」
 そう言って、都筑はベルトを外してズボンも脱ぎ捨てた。
 琴は恐怖感があったものの、都筑の一部だ。やはり恐怖だけでない感情もある。
 ゆっくり身を起こし、胸元を腕で隠すようにして目をぱちぱちさせる。
「平気?」
「……はい」
 都筑は下着を脱いだ。
 とたん、跳ね上がるようにモノが飛び出す。
 そそり立ったモノは大きなキノコのように太く、青筋だって、先端は何が違うのか杏のような濃いピンク色をしている。動物の鼻先みたいなそれは穴があって、艶めいてつるつるとしていた。
 琴はこれ以上ないくらい顔が熱くなり、心臓がどんどん、とうるさく鳴るのを耳で感じた。
「ど、どうして……」
「どうして?」
「どうしてこんなに大きいのに、下着の中におさまってるの?」
 普段の男性がちゃんと服を着ている姿を必死に思い出すが、これがどこに収まっているのか分からない。
 琴は驚きと恥ずかしさのあまり見当違いの疑問を口にしてしまった。
 都筑が首を傾げる。
「…………君は大物かもしれない」
「は?」
「いや。これは……興奮すると大きくなるんだよ。普段はもう少し落ち着いてるから」
「そうなんですか?」
「もう良いから。君のも脱がすよ」
 都筑は琴のブラに手をかける。
 前から抱きしめられるような格好になり、都筑の匂いがより近く感じた。
 すっとホックが外れ、胸が解放されるとふるんと揺れた。
 外気が入り込み、琴は思わず手でブラを押さえてしまう。
 都筑は肩紐をずらし、すっかり覆うもののなくなった背中を指先で撫でる。すべすべした背中は少し汗ばんで、都筑の指先でなぞられた部分からさらに熱くなる。
「ん……」
 そっと触れられるだけで、頭がぼーっとするほど気持ちよかった。
 胸を露わにしないことを都筑は責めないが、腕と脇の間に指を滑り込ませる。
「あっ……」
 胸の膨らみをなぞられ、体から力が抜けそうになった。都筑の肩に頭を預ける格好になる。その拍子に肩紐がずり落ち、いよいよ胸の谷間が露わになった。
「柔らかいな……」
 都筑が琴の胸に触れる。
 琴は体を震わせた。
 ブラの隙間から、都筑の大きな手が入り込む。
 琴は息をつめ、口元を手で覆った。
「んんっ……!」
 期待で熱を貯めていた胸の頂きが、都筑の手のひらに軽くこすれると、体の中心がきゅんとした。
 今までとは違うはっきりとした感覚に、琴はお腹をむずむずさせて肩を跳ねさせた。
「気持ちいい?」
「……えっ、ええと……」
「気持ちいいなら言って欲しい。声も出して。セックスがお互いに苦痛を与えるものじゃ、むなしいだけだ。気持ち良い方がいいだろ?」
 都筑が宥めるように言った。穏やかな声に琴はほっとして頷いた。
「はい。……気持ちいいです……」
「良かった。これは?」
 都筑はブラの中で乳首をきゅうっとつまむ。
 琴は顔をしかめた。
「ちょっと痛い……ですけど……」
「けど?」
「じんじんする……」
 都筑は回していた左腕を戻すと、琴を寝かせた。
 琴からブラを取りベッドから落とすと、彼女と手を繋いで隠せないようにした。
 そこに視線を落とされ、琴は唇を噛む。
「……綺麗だよ」
 しっとり濡れた白桃のような、琴の乳房。
 収穫を待つサクランボのように鮮やかな赤色になった胸の頂きは、期待で膨らんでいた。
 触れられていないのに、都筑の視線に、クランベリーのような乳首がきゅう、と震えるような感覚を持つ。
 都筑は胸の間に顔を埋め、鼻を動かして匂いを楽しみながら、何度も口づけた。
 白い乳房に、花びらを散らしたような口づけのあとが出来る。
 さっき感じたミルクのような、果実のような甘い香りがまた立ち上ってきた。
 癒やされるような香りなのに、なぜかどきどきする。
 都筑が顔を動かすたびに毛先が乳首にこすれ、くすぐったいような、じれったいような心地よさで脚が揺れた。
「んん……変な感じ……」
「嫌か?」
「ううん、都筑さんの髪、当たるの……」
「あぁ、そうか。髪か」
 都筑は顔をあげると、両手で琴の胸を包み、寄せるようにするとぷっくり膨らんだ乳首を舐めた。

「やぁっ……!」
 突然の刺激の強さに、喉から高い声が出た。
 都筑は手を離し、右胸を揉みながら左胸の乳首を舐めては吸い上げる。
「……あっ、あっ!」
 じゅるじゅると愛撫され、こりこりになった乳首を口の中で弄ばれると腰が揺れる。
 脚の付け根が熱く、汗でもかいたのかと思うほど、湿っている気がした。
 初めて味わう感覚に戸惑い、両手でシーツを握りしめた。
「ああぅっ、うっ」
「可愛い声……ここ、弱いのか」
「わからな……っ!」
「素直な体だ」
 都筑は右胸に顔を寄せる。きゅんきゅんと主張する乳首に熱い息がかかったかと思うと、あっという間に口の中だ。
 溶けそうなほどに熱い都筑の口の中で、ねっとりと乳首を舐められると首がのけぞった。
「んん~……!」
「声、我慢しないで」
 ちゅぷっ、と音をたてて吸われ、左胸の乳首も指でくにくにといじられる。
「あっ!」
 両方に愛撫を施されると、ぞくぞくしたものが一気に体の中心、その奥に運び込まれる。
 脚がばたばたし、つま先まで力が入った。
「あうぅ……っ、ま、待ってっ」
「待つ?」
「あっ、んん……気持ちいいけどっ……」
 琴はスカートに手を伸ばし、ぐいぐいと脚の間に入れこんだ。
 都筑が愛撫を止め、はぁはぁと息をする。
「心臓、おかしくなりそう……」
「参ったな、俺もだけど……」
 都筑は琴が脚をすり寄せるのを見て見ぬふりをし、琴の手を取ると自身の左胸に当てた。
 どくんどくんと力強く打つ鼓動。
 確かに琴のものと変わらない。
 都筑もどきどきしているのか、と知ると、琴はほっとした。
「都筑さんも……」
「ああ。続けるよ」
 都筑は琴の両手をあげさせ、頭の上でクロスさせると手首を片手で掴んで固定する。
 バンザイになっただけなのに、なぜか乳首がきゅうきゅうしてくる。
 しかし都筑はそこに触れず、肋骨に、なだらかな腹に、おへそに、数え切れないほどの口づけを落としてゆく。
 くすぐったさに頬が緩み、笑い声をあげると都筑も笑みを浮かべた。
「何?」
「くすぐったいです」
「そう。……腰、細いな」
「そこは……気をつけてるので」
「なるほど。色っぽいな」
 都筑は腰のカーブに口づけ、軽く歯でなぞる。
 くすぐったいのに、どこかぞくぞくする。
 琴がほっと息を吐いて腰をくねらせると、都筑は琴の手を解放して、両手で腰を撫でてスカートに手をかけた。
「あ、やっ……」
 琴は思わず腰をあげ、都筑の手に自身の手を重ねる。が、すぐに口元に戻した。
「嫌?」
「い、嫌じゃないです……ちょっと怖くなっただけ……」
 琴の返事に都筑は頷き、スカートのチャックをおろした。
 する、と都筑の手が腰から恥骨をなぞるようにおろされる。
 琴は身構え、つま先に力を込めたりして耐えた。
 やがて都筑の指先が太ももへ、また戻ってきて、お尻へ――琴が唇を噛み、目を閉じた時だった。
「あれ……」
 都筑が不思議そうな声をあげた。
 何かおかしかっただろうか、と琴は不安になる。
「……どうかしたんですか?」
「いや……ちょっと、失礼」
 都筑は琴の腰をあげると、スカートを脱がせた。
 それなりに膨らんだ、しっとりとした白い腿。
 骨が作る曲線に、少しくぼんだ脚の付け根がはっきりと見える。
大切なところにはきちんと白のレースがあって、おかしなところはないはずだが、都筑の目は軽く見開かれ、そこに釘付けになっている。
「……都筑さん?」
 琴は不安になり、彼の名を呼ぶ。
「ちょっと後ろ向いて」
「……え、は、はい」
 琴はお尻を向けることに恥ずかしさを感じたが、とりあえず彼の言うとおりにした。
 布のないそこは外気に触れ、頼りなげにぷるんと揺れる。
 しっとりとした琴のお尻は完熟寸前の青い果実みたいだった。
 下着を脱がさなくてもむき出しの、その青い果実に都筑は驚きを隠さない。
「……驚いたな。Tバック?」
 それもハイレグである。サイドは細い、ほとんど紐のようなもの。
「え、はい。一番動きやすくて……」
「……なら、いつも?」
「はぁ。変ですか?」
「いや……君が穿いてると思わなくて」
 都筑は琴の太ももを撫でた。
「そうなんですか?」
「ああ。てっきり……普通のを穿いてるかと」
「普通のが良かったですか?」
「……いや。これも似合ってるよ」
 顔を起こそうとした琴の耳に口づけながら、都筑は太ももからお尻へと手を伸ばす。
「ふぅ……」
 お尻を撫でられても特に何も感じないが、都筑の体温を背中に感じて、安心出来る。
 琴は上半身を捻って、都筑に口づけをせがんだ。
 都筑はそれに応じ、軽くキスをするとどんどん深く、舌を絡める。
 ぱっと口を離すと、二人の間で唾液が繋がったままになった。
「もったいないな」
 都筑は再び口づけ、ちゅう、とそれを舐めとる。
「も、元……戻りたいです」
「体勢? 良いよ、俺も君の顔が見たい」
 琴は都筑と向き合うように体を戻し、まっすぐに見つめてくる都筑のまなざしに微笑んだ。
「この方が嬉しい」
「嬉しい? 顔が見れるから?」
「目が見えるから……かな」
「目……確かに君は綺麗な目をしてる」
「私じゃなくて……」
都筑は琴のまぶたにキスを落とし、頬をすり寄せた。
「君は、可愛いな」
 耳元でじんわりと囁かれ、琴は目を丸くしながら頬を緩ませる。
 しかし、都筑の両肩に手を回し、左肩の大きな絆創膏に触れると笑みは消えた。
「あ……そうだった……」
「ん?」
「肩……痛くないですか?」
「ああ、これか……気にならないよ、今は」
「本当に?」
「上原さん、集中してくれ。それとも物足りない?」
 都筑の言葉に琴は首を横にふる。
 物足りないわけがない。いっぱいいっぱいだ。
 そういえば、都筑は今自分をなんと呼んだか。
「ねぇ、都筑さん……琴って呼んで下さい」
 琴がそうねだると、都筑は自身の首を撫でた。
「え……ああ、そうか……琴」
 そう名前で呼ばれると、すとんと腑に落ちるような感覚があって、嬉しい。
「うん、うふふ。なんか恥ずかしい」
「そう? ああ、じゃあ俺も。下の名前、覚えてる?」
 都筑の問いに琴は視線を上に向ける。
 初めて出逢った時に、自己紹介はしたはずだ。
「……ごめんなさい」
 琴が素直に謝ると、都筑はふっと笑った。
「良いよ。一回しか名乗ってないしな。普だよ、あまね」
「普……さん」
「俺は呼び捨てで、君はさんづけ?」
「年上だし……その方がしっくりきます」
「年はまあ、関係なくなるかな、その内。……君が呼びたいように呼んで」
「はい。普さん」
 都筑は琴の額を撫で、唇を合わせるだけのキスをする。
 琴が微笑むと、都筑も微笑みを返す。
都筑は手を伸ばし、琴の内ももを撫でる。
 琴は熱く息を吐き出した。
「琴。ここは気持ちいい?」
 都筑の手が触れるとじんわりと温かくなり、体の中心がむずむずと心地良い。琴は素直に頷く。
「はい……」
 都筑はそっと撫でながら、琴の肩に、腕に、甘く噛みながら体をずらしてゆく。
 柔らかくなっていた乳首を咥えられ、琴は「あっ」と声をあげて背中を仰け反らせた。
 都筑は琴の脚を開かせ、自身の脇に置くと腕で押さえる。
 流石に琴も次にどうされるか理解できる。
 都筑が低く「良いか?」と訊いて、琴は頷いた。
 口元を両手で覆い、恥ずかしさか怖さか分からない胸の高鳴りを押さえようとした。
 都筑の指がショーツのサイドにかけられる。
 恥骨から浮いていく布の感触に背筋がぞくぞくし、敏感な部分が外気に触れ、恥ずかしさからかいよいよ頭が重くなった。
「濡れてる……良かった」
 都筑は柔らかい恥毛に覆われたそこをじっと見つめ、ショーツを脚から取り去ってベッドから落とした。
 琴は脚をもぞもそと閉じたさに動かすが、都筑はそれを許してくれない。
「あの、あんまり、じっと見ないで……」
「どうして?」
「恥ずかしいし……あの……」
 琴から見れば、自分の脚の間に男性が顔を埋めている格好だ。
 衝撃に近いものをうけ、体全身が熱くなっていくのを止められない。
「綺麗だけどな。いや、可愛い、かな……」
 都筑は恥毛をそっとかき分けた。顔を覗かせていたものが露わになる。
 濡れた鮮やかなピンク色の小さな粒――クリトリスが、都筑の息がかかる度にそこがひくひく震えた。
「やっ……」
「感じてる? ここ……」
「あ、だめっ……」
 琴が手を伸ばすが、都筑の方が早い。
 彼は顔を更に近づけた。琴からは前髪からのぞく、まぶたが見える程度である。
「舐めても?」
「えっ、えっ、そこ汚いですよっ」
「まさか……」
 都筑の苦笑いが聞こえたと思ったら、柔らかく温かい舌で、ぬるぬると舐められた。
「あっ……!」
 今までと違う、とろけるような感触に体の芯がじわじわと喜ぶ。
 ざらつく花びらの内側を撫でるように舐められ、琴はびくびくと内ももを震わせる。
気持ちいいとかはないが、妙にこそばゆい。
 じゅるじゅると都筑は溢れる愛液を舌ですくってゆく。
 琴は脚に力を込めながら、胸元で手を組んだ。熱い息が口から漏れ出る。
「まだそれほど感じないか……本当にうぶなんだな」
 都筑が顔をあげた。
 その口元は琴の愛液でぬるぬると光っている。琴は恥ずかしくなり、顔を隠すように手で口元を覆う。
「どういう意味でしょうか……」
「いや……嬉しいなと思っただけだ」
「そんなに感じてないのに……?」
「ああ。それに、甘酸っぱい。美味しいよ」
「んん……やだ、それ……恥ずかしい」
 都筑は琴に笑みを向けた。彼女の脚を解放すると、指で割れ目にそって下から上へなで上げる。
 愛液が彼の指を濡らし、滑りが良くなる。
 そのまま期待に震えていた粒を指先でなぞられた。
「あぁっ!」
「いい声だな……そんなに気持ちよかった?」
 都筑はそこをぐりぐりと責める。
 琴は両手でシーツを掴み、ぐしゃぐしゃにして顔を隠した。
「やっ、あっ! まって……!」
 じんじんと強烈な快楽で、顔が歪む。
 今までの愛撫で高まっていた熱が、一気に弾けたようだった。
 琴は慣れていない感覚に戸惑い、腰を浮かせるが都筑はやすやすと押さえ込んでしまう。
「まってっ、あぅっ、うっ」
 中から愛液がとろとろと溢れ出し、都筑がなで回すとくちゅくちゅ鳴った。
「やめた方がいいか?」
「えぅっ」
 琴は頷きながら首を横にふる。
 ぞろぞろと都筑の指で撫でられるとたまらなく気持ちいいが、迫ってくる不安に脚がばたつく。
「んん……っ」
 都筑の髪を掴んで、唇を噛んだ。
 熱がどんどん高まり、ぎゅう、と粒が縮まったように感じる。
「イキそうだな……」
「い、いっ、く? わからな……っ」
「そのまま体の感覚に任せて」
 都筑の言うとおりにし、彼の指と粒の感覚に任せた。
 ぐちゅぐちゅと音をたてながら粒をこすられ、「あぁっ!」と上擦った高い声をあげた瞬間、ぐわぐわっと駆け上るように快楽が体の中心で弾けた。
 びくびくと脚を震わせ、何度か体を跳ねさせるとやがてぐったりと体が重くなり、まぶたが重くなった。

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