映画『プリンセス・ブライド・ストーリー』に見る、陰と陽の交流

コメディに潜む哲学

『プリンセス・ブライド・ストーリー』は一見すると王道のおとぎ話+冒険活劇のコメディ映画ですが、実はその中に「陰と陽」、つまり性格やエネルギーの対極にある二人の交わりと成長が描かれています。

軽くあらすじを紹介。

昔々、フローリン王国にバターカップという美しい娘が住んでいました。彼女には永遠の愛を誓ったウェスリーというイケメンかつ献身的な恋人がいたが、彼が旅の途中で海賊ロバーツに殺されたとの噂を聞いて希望を失ってしまう。

それから5年後――生ける屍となったバターカップは、腹黒いフンパーディング王子の求愛をうけ入れるが、戦争を起こそうと目論む奇妙な3人組によって誘拐されてしまう。

そんな時、どこからともなく現われた黒覆面の海賊が現れ、彼は次々と3人組を倒してゆきバターカップを助ける。実は彼こそが死んだはずのウェスリーその人だったのである。

彼は以前のような大人しい青年ではなく、はつらつとして自信に満ちた男になっていた。

しかし王子の腹心である6本指の伯爵によってウェスリーは捕えられ、残虐な拷問をうけて死んでしまう。

そんな彼を魔法使い(???)のもとへ運び生き返らせたのは、あの3人組の内のなんだか憎めない2人、イニーゴとフェジックである。3人は婚礼の始まっているお城に向かい、王子と伯爵を倒し、バターカップを彼らの魔の手から救い出すのだった。

キャラクター紹介:陰と陽の初期状態

  • バターカップ:勝ち気で女王様気質。感情表現に不器用で、思いやりよりも自己中心的に振る舞うことも。

  • ウェスリー:静かで従順。「仰せの通りに」とすべて彼女の命に従う“召使い”のような立ち位置。

陽の女王様と陰の従者?意外な関係性で始まる物語

映画の冒頭、バターカップは勝気で高飛車、まるで女王様のような性格。ウェスリーは彼女の命令に対して常に「仰せの通りに(As you wish)」とだけ答える寡黙な青年です。

しかし彼のその一言には、実は深い愛がこめられていました。バターカップはある日、そのまなざしと声のトーンから「彼は私を愛している」と気付き、自分もまた彼を愛していることを知るのです。

つまり、この「As you wish」という一言は、ただの服従ではなく、愛の表現そのものであり、静かなる陽の種だったわけです。

ここでは「陽=能動的・外向き(バターカップ)」と「陰=受動的・内向き(ウェスリー)」として描かれている。

変化と交わり:相互に影響し合う関係性

陰陽の交代と成長:お互いを必要とすることで強くなる

二人が愛し合うようになってから、関係性は大きく変わっていきます。ウェスリーは冒険に出て、知恵も力も身につけ、やがてバターカップを救いに戻る“頼れる男”になります。

一方バターカップは、彼の愛を受けることで、今度は可愛らしく、柔らかな“乙女”の面を見せるようになります。最初の高飛車な彼女とは違う、貞淑で女性らしい側面が前に出てくるのです。

このように、恋愛関係において陰陽が交代するのはとても自然な流れ。相手を思うからこそ、人としても“進化”していくのです。

陰陽の循環がもたらす真の愛

物語が進むにつれて二人はそれぞれの極端な性質から離れ、バランスを取った存在へと成熟していく

  • バターカップ:ただの勝ち気な娘から、愛する者を信じる強さと柔らかさを持つ女性へ。

  • ウェスリー:従順な青年から、知恵と力を持つ大人の男へ。

この物語が示すのは、「恋愛とは、陰陽のエネルギーが互いに影響しあい、時に反転しながらも調和していく過程」であるということ。
笑って泣けて、最後にはすっきりとした感動が残るのは、陰陽がきれいに循環して“整った”カップルの物語だからこそ。

なんで主人公たちの性格が変わるの?陰陽のルールで見れば、全く矛盾しない自然の摂理!

1. 愛がホルモンバランスを変える?

ウェスリーの深い愛が、勝ち気なバターカップを“可愛いお姫様”に変えていったのは偶然ではありません。
男性からの愛情を受け、陰気をもらうことで性ホルモンバランスが整い、自然と性別の魅力が際立つように。

2.彼女への愛が彼を男として目覚めさせた?

同時に男性も、愛する人を守る為に強くなろうと誓う。そのためこちらも性ホルモンが働き、陽気を彼女からもらうことでその実現が早くなります。

➡️愛情表現のある夫婦関係は、自然と「魅力的な男女」になっていく。

二人は独立した存在ですが、人は一人では生きていけません。愛し合うことで自然とお互いをサポートし、それによって個性をも成長させることが出来たのでしょう。

ウェスリーはバターカップがいなければ強くなれないし、バターカップも当然ながら優しさを身につけることは出来ませんでした。
(そうなろうと思えない、の方が正しいかもしれません)

💡まとめ。陰陽は固定されるものではなく、交代し、交流する

陰と陽はそれぞれ単体だとおたまじゃくしかペイズリーみたいなものです。日本でいえば勾玉みたいな形をしています。
白い方が陽、黒い方が陰。その一番大きな部分に互いの性質を持っています。これが核です。
大きくなればその部分が今度本体になります。
軽く補足すると、陽気は男性的な性質を表し、陰気は女性的な性質を表します。
陽気は与えることを是とし、明るいが短絡的。
陰気は受容を是とし、行動が遅いが思慮深い、などです。

 

陽気の中に陰の核があり、陰気の中に陽の核。
だからこそ、バターカップが最初は陽気な女王様気質であり、ウェスリーが静かで従順な陰の人であるのは、何も不自然ではありません。むしろ、自然の摂理そのものだったのです。

しかし二人の間に「愛」が生まれることで、陰と陽は合体して丸くなり、くるくると回転し始めます。
ウェスリーはバターカップを守るために力強く、頼れる陽の存在となり、バターカップはその愛に包まれて可愛らしく柔らかな陰の気配を帯びていく。

このような陰陽の変化は、恋愛関係に限った話ではありません。
人生経験や年齢、場面(TPO)に応じて、誰の中でも起こることです。
ビジネスの現場でも、陰陽がうまく共存し、交代しあえるパートナー同士は、どんな困難にも対応できる無敵の関係となります。

たとえば、日本のトップロックミュージシャン(名前は伏せるが、あの名コンビ)も、この陰陽のバランスが見事な例だと私は思っています。
陽だけではすぐに枯渇し、陰だけでは滞って腐ってしまう。
内的な陰陽のバランスが整っているとき、人は心身ともに健康で、周囲との関係性も良好になるものです。

だからこそ、『プリンセス・ブライド・ストーリー』の二人は“理想のカップル”なのだと言えるでしょう。
常に陰陽の交代と交流が起きており、どちらかが上になることなく、対等に、お互いを高め合う関係性が築かれている。

それは、恋愛においても、人生全体においても、私たちが目指せる一つの理想のかたちなのかもしれません。

「陰陽」や「東洋思想」と聞くと、ちょっと怪しげなオカルトのように思われるかもしれません。でも実際には、日本(日本にも神話時代から「食薬」の概念がありました)や中国の“神話と呼ばれるような太古の時代”から連綿と受け継がれてきた、統計学的な知見に基づいた自然科学であり、宇宙のリズムに寄り添う宇宙科学とも言えるものです(夏至・冬至など季節の巡りがまさにその例ですね)。

日本では「陰陽師」がいわゆる“魔法使い”的に扱われることもあるため、私たち日本人自身も誤解してしまっている面があるかもしれませんが、本来はとても理にかなった科学的な体系です。

なお、私が扱っているのは、その中でも「現代の日本の暮らしに合わせた」気軽に取り入れられる形のものです。ものすごく本格的!なものではないので、あまり構えず、楽しく読んで下さい。