卵子凍結・精子提供のリスク
近年、卵子凍結という選択肢が広がり、若いうちに卵子を保存しておけば、後から自由に子どもを持てるという考え方が広まっています。しかし、これは決して万能な解決策ではなく、慎重に考える必要があります。
卵子凍結の本来の目的
卵子凍結はもともと、がん治療などで卵巣機能が低下するリスクのある女性が、将来の妊娠の可能性を残すために開発された技術です。しかし、近年では「将来のキャリアやライフプランに備えて」といった理由での選択も増えています。
卵子凍結のリスク
- 妊娠の保証がない
卵子を凍結しても、それを使って必ず妊娠できるわけではありません。体外受精の成功率は年齢や体調に大きく左右され、加齢による母体の変化も影響します。 - 母体の健康状態
たとえ若い卵子を使っても、妊娠する母体が高齢になれば、妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病、流産のリスクが高まります。卵子自体は凍結時の年齢のままですが、妊娠・出産する母体は加齢の影響を受けます。例えば、以下のような問題が考えられます。
- 内臓機能の衰え:加齢・喫煙・飲酒・食生活の乱れなどの生活習慣によって、肝臓や腎臓が衰え、胎児に必要な栄養を運ぶ能力が低下している可能性があります。
- 骨盤底筋の衰え:加齢によって骨盤底筋が緩むと、流産や早産のリスクが上がります。
- 全身の健康状態:加齢による血流の悪化や、妊娠高血圧症候群のリスクが高まる可能性もあります。
「卵子が若ければ健康な子が産める」と単純に考えるのは危険です。母体の健康が胎児に影響を与えるため、将来出産を希望する場合、日頃から健康的な生活を心がけることが重要です。
- 身体への負担
卵子採取のためにホルモン治療を行う必要があり、副作用として卵巣過剰刺激症候群や感染症、出血などのリスクもあります。 - 長期保管のリスク
液体窒素で保管される卵子ですが、災害などで保存設備が損傷するリスクもゼロではありません。 - 高齢出産のリスク
出産の年齢が高くなると、赤ちゃんへの影響も考えなければなりません。妊娠・出産のリスクは年齢とともに増加し、母子ともに負担が大きくなります。
精子提供に関する問題
精子提供に関しても慎重に考える必要があります。テレビドラマでは、結婚は不要で子どもだけ欲しいと考えた女性医師が、学歴や趣味の情報だけで精子提供者を決めました。しかし、実際に提供者に会ってみると、生理的に受け付けないと感じ、人工授精を断念するというエピソードがありました。これはフィクションですが、現実にも「提供者の履歴書だけでは分からない」問題は多々あります。
また、精子提供による妊娠が増えることで、将来的に同じ父親を持つ子どもたちが偶然出会い、近親婚のリスクが生じる可能性も指摘されています。
将来の妊娠を考える女性へ
もし「40歳を超えたら産もう、でも今は遊んでいたい」と考えているならば、将来の妊娠のために健康を維持することが重要です。具体的には、
- 飲酒や喫煙を控える
- 健康的な食生活を心がける
- 適度な運動を行う
これらを意識することで、加齢による妊娠リスクをできる限り抑えることができます。しかし、それでも100%妊娠できる保証はありません。
年齢が上がるほど妊娠率は下がり、リスクも増えるため、「子供が欲しくなったら産めばいい」という考え方は慎重に見直す必要があります。
本当に必要なのは何か
卵子凍結や精子提供を否定するつもりはありませんが、子どもを持つことは人生の重要な選択です。単なる「選択肢の一つ」として安易に考えるのではなく、リスクや現実を正しく理解し、慎重に判断することが大切です。
卵子凍結を安易に考えることは、子供が欲しい女性の妊娠の可能性を狭め、なんなら妊娠のリスクをあげてしまっているかもしれないのです。
一部では「お金を払ってセックスをしてもらう」という形の妊娠もあると聞きます。このような手段を選ぶ際には、倫理的な問題や将来的な影響について十分に考える必要があります。
また、政策の面でも、女性が仕事と育児を両立しやすい環境を整えることも考えた方が良いのではないでしょうか。現在、都市部では「今は子どもを産まずに働いてほしい」という流れになっていますが、少子高齢化が進む中で本当に必要なのは、家庭が安定して子どもを育てられる社会の仕組みづくりではないでしょうか。
人は誰かや何かのために働いています。
その中にはそれこそ子供や、お母さんやお父さんのためのものもたくさんあるでしょう。
働くことの目的そのものが彼らである場合、仕事を優先させすぎた結果目的がなくなるかもしれません。
子どもは未来への宝です。中には子供が欲しくて大変な努力をしている夫婦・カップルもいます。
何より子供の幸せと人権、それを尊重することが大事です。
だからこそ、卵子凍結は安易な決断ではなく、しっかりと考えることが求められます。