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小説 鏡中夢幻 食べ物

【鏡中夢幻】 第6話 ※官能シーンあり

2024-11-23

 

 家に帰り、鏡を見つめる。
 やや歪んだ鏡面はいびつに光を反射させ、膝を抱える沙羅をうつしていた。
 崎本はエドガーと同じように、一瞬で消えてしまった。
 探しても彼は見つけられなかった。
 最初に会った時、崎本は「正しく使いなさい」と言っていた。
 願いに反応する鏡を正しく使う……ならばどう使う?
 沙羅は昨日までいたあの日々を思い返す。
 アレクと出会い、彼の保護のもとで暮らし、そして結ばれたのにすぐに別れが来てしまった。

――今度こそお前を守る
――お前は私の元に帰ってきたのではないのか

 アレクはそんなことを言っていた。沙羅にはなんのことか分からない話だ。
 だが彼は最初から優しく、沙羅を見つめてきた気がする。
 それに、花も言っていたではないか、彼は元政府の者で、二年前に越してきたと。そして「売国奴」と呼ばれ、家に火をかけられた。暗殺の対象になったのだ。
 なぜ?
 彼は日本を大切に思っていたのに、そんな風に呼ばれてしまうなど。
(知りたい……)
 アレクの事を知りたい。
 一体、何があったのか。
 なぜ狙われなければならなかったのか……。
 鏡をじっと見つめると、鏡面が波紋を描くように揺らめき、光が複雑な模様を描いた。まるで時計が逆巻くように。
 沙羅はぎゅっと体を抱きしめ、目を閉じる。
 あの時と同じように 紺色の世界で何かがとぐろを巻くように流れていく。
 らせんを描くように、沙羅はそれが登っていくのを見ながら自分はらせんを下がっていった。
 下に、下に、下に。
 左に回転しながら落ちていく。

 目を覚ますと、そこは見慣れぬ場所だった。
 油のしみ込んだこげ茶色の格子戸から日が差し込み、欄間の鶴は今にも羽ばたきそうなほど細かい彫刻。
 ゴブラン織りのらしい生地を張り付けた椅子が大量に置かれている。
 天井にはシャンデリアが淡く橙色の光を放っていた。
「……ここは?」
 やはり和洋折衷の室内だが、アレクと過ごしたあの洋館ではなさそうだ。
 沙羅は立ち上がり、周囲を見渡した。
 壁にある燭台一つとっても贅沢なほどの細工である。百合の花はかなり立体的で、金色だというのに香ってきそうなほどだ。
 人の声に思わず座り込んで身を隠した。
「まあこれを建てるために大層な金額を投入したらしいじゃないか」
「日本を見くびられてはかないませんからね」
「ところでこのワインというのは……」
 数人の男性が話しながら歩いて行った。
 どうやら公共の施設?のようだ。
 何人もの人が出入りしているようで、沙羅は動くに動けなくなってしまった。
 こっそり椅子の影から様子を伺うと、燕尾服の男性達に、髪をアップに結わえた日本人女性達が、フランスかイギリスのアンティーク人形のようなドレスを身にまとっていた。だがその柄は和風。
(明治に戻ってきたみたい……でもここは?アレクは無事なのかしら……)
 あの後のことは沙羅は知りようもない。だが、冷静に考えて無事なわけがない……そう考えると心臓がきりきり痛む。
「アレク……」
「どうした?」
「きゃあ!」
 背中から声をかけられ飛び上がらん勢いだ。
 口を押えて振り返ると、首元まできっちりとボタンを締め、燕尾服を着こなした彼がそこにいた。
 そう、彼――アレクサンダー・ノクターンその人が……。
 心臓はどきどきと全身を目覚めさせるように鳴り、体が喜びに震えた。
 一瞬で目に熱いものが溜まり、手で振ってごまかしていると、アレクもまた目を見開いて近づいてきた。
「何をしているんだ?なぜここに?」
「え、あの……」
 アレクは沙羅を見るとゆったりと微笑みかけた。
 とても緊迫した様子には見えない。
「アレク……」
「家で待っていなさい」
 アレクは沙羅の肩に手を置き、優しく微笑んだ。その微笑みには深い愛情が感じられた。
 人に見つからないよう建物の中を移動する。かなり広く、どこもかしこもレッドカーペットが敷き詰められ、一つ一つ違うデザインの燭台が廊下の壁を飾るという贅沢なものだった。
 沙羅は現実の部屋着のまま来たためかなり浮いている。
 それより、よく見ると、アレクはどことなく若く、精悍な顔つきだ。
 薩摩風のくっきりとした目鼻立ちにオランダ風のエキゾチックな気配が滲む横顔。
 間違いない。
 彼と再会出来たのだ。
 ふわふわと足が浮いたように軽く感じた。ずっとどきどきして、勝手に頬は緩んでしまう。
「アレク、無事だったんですね。良かった……」
「何の話だ?しかし、お前はどうやってここに?」
「え?」
 話がかみ合わない。なぜアレクがこんなに冷静なのか、沙羅には理解できなかった。
「アレク?」
「サラ、とにかく今日はまだだ。……お前を紹介するには早い」
 連れてこられたのは馬車の元。
 沙羅はそこに一人乗せられた。
 アレクは沙羅を見ると、
「今夜は早く帰る」
 と言って、笑った。
 後ろへ流すように撫でつけられた黒髪も、燕尾服。沙羅の手を握るその手は白手袋。
(すごく社交的な場所みたい)
 それもそのはずである。
 沙羅が馬車に乗り、アレクの見送りを受けて去ったその場所は、明治時代の外交や社交の中心として栄えた鹿鳴館なのだから。

 御者が降ろしたのは東京府の西、森の近くの坂道にある洋館だった。
 奥多摩の館よりやや広く、使用人も何人かいて働いている。
 沙羅はそこで「奥様」と出迎えられた。
 そして理由もわからぬまま館内に案内され、湯あみの後、薄手の着物に着替えさせられてしまった。
 あっという間の出来事である。
「旦那様はお仕事なのです。今日も異国の方々をもてなしておられるのですよ」
 沙羅をかいがいしく世話する彼女は、「岩」と名乗った。ふっくらした体格で、割烹着がよく似合う30代を過ぎた女性だ。
「岩さん」
「嫌ですね、岩なんて。お岩と呼ばれますよ」
「失礼しました。お岩さん……」
「また”さん”をつけて。その癖は治りませんね、奥様」
「奥様って?」
「あなた様に決まっているでしょう?」
 沙羅は首を傾げた。いつ結婚したのだろうか?
「奥様……誰のです?」
「はあ?!」
岩は口を大きく開けてため息をついた。
「アレクサンダー様のですよ!」
「ええ!?」
 沙羅は洋館中に響いたのではと思うほどに叫んでしまった。
 心臓が激しく脈打つ。
 自分がアレクの妻?そんな記憶はない。
 それとも、この時代に来る前の記憶が混乱しているのだろうか。だが、アレクの名前が出た瞬間、心の奥底で何かが共鳴するような感覚を覚えた。
(願いが叶うって……そんな、それは願ってないはずだけど……)
 だが彼の正式な妻など、甘美な夢だ。
 岩が耳を塞ぎ、沙羅の口に手をかぶせる。
「奥様、魂が飛んで行っちゃいますよ」
「へ……」
 驚いて口を開けたままにすると魂が、という日本の考えだ。
 沙羅は自分で口を押え、そのまま周囲を見た。あった、新聞だ。棚にきちんとおさめられている。
 確認すると、日付は明治十六年。
 つまり、奥多摩で出会った時より3年前ということになる。
「もう、お二人の結婚を覚えてないなんて、夢でも見ていたんですか?あ、それとも旦那様があまりに長く待たせたから、怒って素直になれなくなっているんでしょう」
 岩が微笑みながら言った。その言葉に、沙羅は再び驚きの波が押し寄せてくる。
 沙羅は洗面所へ行き、鏡を見た。
 3年前。
 微妙な年月だが、確かに少しだけ若い。24歳ということになるのだろうか。
「3年前……」
 だからアレクは冷静だったのか?
 いや、その前に、結婚している?アレクと?
 沙羅は頭を文字通り抱えた。
 ついその場に座り込んでしまう。
「人違い……では?きっとそうよ、サラって名前で、似た人が……だって……」
 自分はこの時代の人間ではないのだから。
 居間に戻ると、岩が小首を傾げながら割烹着を脱いだところだった。
「相変わらず不思議ですねえ、奥様は」
「相変わらず……ですか?」
 時間になると彼女は館内の住み込み用の別宅へ帰るらしい。
 だがしかし、どうしたら良いのか。
 沙羅はテーブルに肘をついて考えこんでいた。
 鏡には何を願った?
 それと、エドガーがいるなら彼を探し出さないと。
 いやアレクのことを知ることが先だ……色々ぐるぐる考え、メモを取る。
 そうするうちに玄関がガタガタとなり、沙羅は椅子から立ち上がった。
「アレク、お帰りなさい……」
 と、出迎えに行くとそこにいたのは若い男性と、彼に肩を借りて歩くアレクの姿だった。
「奥様、申し訳ありません。お酒を避けるように気を付けていたのですが、”わいん”に慣れない者が出てしまって……」
 代わりに飲め、と言われてしまい、と彼は説明する。
 アレクは下戸だ。頬が赤くなって、今にも眠ってしまいそうである。
 アレクは何とか自力で立ち、若い男性の肩を叩いた。
「助かった、近藤君」
「はい。アレクサンダーさん。それでは、これで失礼します」
 敬礼、と近藤はビシッと挨拶し、馬に乗って帰って行った。
 あの若い男性をどこかで見たことがある、と沙羅は思ったが、「うぅむ……」と呻くアレクを寝室へ連れて行くことですっかりそのことを忘れてしまった。
 ふらついた足で歩くアレクの体重はやはりとても重い。壁に沿って何とか歩き、寝室のベッドへたどり着くと、倒れるように二人飛び込む形になってしまった。
「アレク」
 頬を軽く叩くが返事はない。
 この首までつまったシャツでは苦しいだろう、沙羅はボタンを外し、ジャケットを脱がせようとした。袖までは脱がせられてもその先は無理だ。寝返りを打たせようにも重すぎる。
「……アレク。起きて下さい」
 と声をかけてもだめだ。
 沙羅は彼の隣に座りこむ。
「……アレク」
 彼の名前を呼ぶ。なぜか、以前よりずっとしっくりと馴染んで、愛おしくなった。
 酔って眠っているのを良い事に、沙羅は覆いかぶさるようにして彼の胸に顔を埋めた。
 心臓の音、体温、肌のにおい。
 息遣いに合わせてゆっくりと上下する体。
(戻ってきた……)
 ようやく実感し、彼を抱きしめる。
「アレク」
「……サラ?」
 名前を呼ばれた気がして顔を彼に向けると、薄く目を開く彼と目が合う。
「サラ」
「アレク」
 彼の名を呼ぶと、顔が緩やかに綻んだ。
 アレクの手が沙羅の背中に伸び、そっと壊れ物のように触れ抱きしめてくる。
「私のサラ」

 そのまま体がそっと横たえられ、アレクの手が髪の生え際をなぞった。
 くすぐったさに似ているが、ぞくぞくする方が近い。手が触れる度に反応し、熱い息が溢れてくる。
「アレク……酔っているんでしょう?」
「ああ。だがもう少し酔いたい」
 アレクの目は沙羅を放してくれない。湯あみを終えた沙羅の肩を、アレクの手が寝巻から忍び込んで撫でてくる。
「久しぶりのお前の肌だ」
「ねえ、いつ……結婚したんですか?」
「つれないな。本当は、まだ怒っているのだろう?」
「怒るってどういうことです?」
「婚約から二年もお前を置いて、大英帝国へ行ったことだ」
(そうだったのね)
「二十歳過ぎても一人で、寂しい思いをさせたと思う。償いをさせてくれ」
「それはもう……良いんです」
「お前はいつもそう言うが、私には口惜しいことだ。サラ」
 アレクは沙羅の唇を吸って、深く重ねた。
 彼の舌は何度も沙羅を求め、どちらのものか分からなくなるほど絡めると舌を吸った。
 沙羅は肩で息をし、彼を見上げる。
「もう怒ってないから……」
「ないから?」
 沙羅はふと不安に思った。
(赤ちゃんが出来たらどうなるの?)
 アレクは沙羅の言葉を待っていた。
 例えばそうなっても、嫌ではない。嫌ではないが、もし現実に影響が出たら?
 沙羅は不安になった。もしもの時、一番困るのは子供なのだ。
「……もう少しだけ、二人でいたいから……赤ちゃんは……まだ……」
 覚悟が出来てない、そう伝えると、アレクは沙羅の頭を撫でてから頷いた。
「……ああ。二人の時間を楽しもう」
 額に口づけが落とされ、髪の間にアレクの指が入り混じる。そわっとした快楽が滲み、視界はふわりと揺れた。
 帯が解かれ、前が開かれる。
 沙羅の胸は平均より大きいらしく、丸みのあるアンダーにトップはつんと立ち上がって形も良い。
 アレクの手がそれを包み、力を込めると彼の手に合わせて形が変わる。ふるふる揺れると、蕾のように固くなる乳首がうずうずと快楽を溜めていく。
(どうしよう。本当に知らないことばっかり……)
 アレクが優しい人で良かった。何も分からないまま進めると、「痛い」と聞いている。沙羅は必死で前の事を思い出す。
 割れ目から指が入って、中を探られ、気づくと骨が動かされるような痛みと共に彼の熱を中に感じていた気がする。
 どうしよう、どうしたら良いのか……と考えを巡らせていると、アレクがきゅうっと乳首を吸った。
「ひゃっ」
「考え事をしているな。気持ち良くなかったか?」
「んっ……!」
 アレクの舌先がこりこりになった乳首をつつく。じんとした快感に下腹部が燃えるように熱くなる。
 思わず脚を摺り寄せた。
「気持ち……良いです」
「なら良い。私を見ているんだ。もっと夢中になろう」
 熱を帯びた彼の声は少し掠れ、大人っぽい。カッと全身が熱くなる。
「ほら」
 と抱き起され、アレクの胸に背を預ける恰好に収まった。
 背中から回された手が乳房を掴み、柔らかさを楽しむように揉んだ後、そっと乳首をつまむ。
「んん……ふっ」
 口をおさえ、目を閉じる。
 もうすっかり女なのだと教え込まれているようだ。恥ずかしくてたまらない。
「可愛い体だ。すっかり起ちあがっている」
 ぴん、と乳首を指ではじかれ、沙羅は息を乱すと姿勢を崩した。アレクにもたれかかるようになってしまい、慌てて背を伸ばそうとした。
「そのままで良い。もっと甘えて欲しいくらいだ」
「はぁ……でも……」
 答えようとした声はすっかり熱をあげ、喉をこすっている。
「すっかり反応する体になった」
 アレクは沙羅の耳を舐め、乳首をくりくり指でいじる。たまらない刺激に沙羅は声をあげ、じゅわっと蜜をこぼす秘部を隠すように脚を摺り寄せる――いや、触って欲しくて揺れているのだ。
 もう自分でも分かるほどに濡れている。
「あ、アレク……」
「ん?」
「熱くて……自分で触っても良い?」
 そっと秘部に手を伸ばす。こんなに感じるのは初めてだ。
 アレクの鼓動にもすら全身の肌が愛撫されているようで、もうたまらない。
「可愛いおねだりだ……一緒に触ろうか」
「え……あっ」
 アレクの手が沙羅の手を取り、秘部に触れさせられる。
 求めていた快楽に、ぷりっと顔を出していたクリトリスが体全体を跳ねさせるほどに快感を生んだ。
 アレクの手が導くままに手を動かし、とっくに滴っていた蜜をすくって割れ目をぬるぬると上下する。
「はあ……あぁっ」
 背をのけぞらせて溶けるような快感を味わう。
 声ばかりは恥ずかしいが、アレクはこの姿を喜んでいるようだ。沙羅の腰をなぞるように、熱く固いモノが鼓動に合わせてぴくぴく震えている。
「どうしよう……私、いやらしい……」
「何も怖れることはない、私のわがままに染まっただけだ。お前はきれいなままだよ」
「そんなこと……っ」
 ない、と返そうとした時、アレクの中指がぬちょっと音を立てて中に入り込んできた。
 声を飲み込み、胸を上下させて息をする。
 とろとろに濡れた中をまさぐられる度、じんじんと心地よい快感が体いっぱいに広がり、つま先まで震えてくる。
「ここが好きだろう。一度、気を遣ると良い。楽になる」
 くいっと指が曲げられ、沙羅はスイッチでも押されたかのように全身を震わせた。
 中とクリトリスと、同時に愛撫されると涙が出るほど気持ちいい。
「あぁあっ……!」
 駆け上る快楽に声が押し出され、気づくとぐったりとアレクに抱かれて体を何度も跳ねさせた。

 体の奥に余韻がある。
 沙羅は息を乱し、視界を涙で滲ませながらも次に期待して体を起こす。
 布団の上に座り、ふらつく体を支えるため手をつくと、自然と胸が寄せられた。
 アレクは着物を脱いで沙羅を抱き寄せ、すっかり勃起したペニスを自身の手で強く握る。
「お前の好きにしてみろ」
 ぐくっ、と杏色の先端が皮から出て蜜を垂らす。
 しっかり笠を広げたそれは、血液をたっぷり含んだ固い肉の刀だ。沙羅の中に入る為、とろりとした潤滑液で濡れている。
(こんな大きいの入るのかな……)
 沙羅は思わずおののいたが、唾を飲んで唇を舐めるとつるんとした先端に口をつけた。
 少しあまじょっぱい味が広がり、口に先端を含むと頭がぼうっとしてくる。
 どうしてかとてもこれが愛おしい。
 手で包んで、舌を這わす。しっかりと浮き上がった裏筋を追って舐めあげ、舐め下げる。
 それに合わせてアレクの息が乱れ、どくどくと手と口の中でペニスが震える。
「ん……」
 喉の奥に触れると上擦った声が出て行く。沙羅は髪をかきあげ、彼のペニスに食いついた。
 また乳首がぴんと起ち、疼く奥から蜜が溢れて腿を濡らす。
(中に欲しい……)
 そんな事を本能的に思い、喉を鳴らしてカウパーを飲む……アレクの手が顎を撫で、沙羅は目を開けた。
 夢中になっていたため、彼が息を乱してこちらを見ていたなど気づかなかった。途端頬に熱が登る。
「……ごめんなさい」
「謝る必要は……だが、もう充分だ。サラ、上に」
「え?」
 上?
 布団に足を伸ばしてアレクは誘う。とにかく導かれるままに彼に跨り、気づいた。
(お祭りで見た……恰好?)
 男性の上に乗って腰を振るのだ。沙羅は全身から汗が噴き出そうなほど体温をあげる。
「う、上……」
「嫌か?中全体で包むようで好きだと言っていたが……」
「私が……」
(好きって?どうしよう、昔の日本女性って大らかだと聞いてたけど……本当なんだ)
「今日は嫌なら、やめようか」
(でもばれてもいけないし……)
 沙羅は意を決すると、「嫌じゃないです」と答える。声が尻すぼみになったが、アレクは納得したのか、自身のモノを掴むと沙羅の秘口にあてがう。
 上から座るように腰を下ろせば、ぽってり膨らんだ花びらで彼のモノを飲み込んでいく感じだ。
 ぞろぞろっとヒダのある中壁が彼のモノを確かめるように蠢めき、慣れているのかしっくりと彼の形そのままに広がって、また縮む。
 血管からきゅうっと快楽が甘く広がっていくようだ。
 にゅぷっと音をたてて空気が押し出され、蜜が外にあふれ出る。
「あっ……気持ちぃい……っ」
 じぃんと奥が満足そうに唸るよう。
 アレクは手を伸ばし、沙羅の手を取ると指を絡めた。
「……あぁ。良い。サラ、お前の中は……いつも私を受けいれてくれる……っ。身も心も優しい、可愛いな……っ」
「んぅっ……」
 腰が勝手に回り始めた。サラの体だから?それとも、沙羅が勝手に?
 ぬちぬちと隙間なく互いの愛液が混ぜられる。
 アレクのモノが中で伸びた気がした。
「あなたの、お、大きくなって……」
「いや……お前が私を、飲み込もうとしてるんだ」
 アレクは息を荒げながらそう言って、沙羅の秘部を撫でた。
「あっ!」
 ぎゅううっと秘口が狭まり、中が彼のモノを締めあげる。彼が言った通り、ペニスやカウパーを飲み込むように、きゅんきゅんと。
 その快楽から逃げようとしてか、もっと欲しがってか、腰は勝手にくねる。それがアレクを昂らせ、沙羅の中をいっぱいに満たす――互いが互いをどんどん高めていくのだ。
 二人の口から息が出て、熱い呼気が寝室を満たしてゆく。
(こんなに幸せなの……?)
 好きな人と抱き合うのは。
 沙羅はアレクの胸に手を置き、もっと彼を悦ばせたいと体を波打たせた。
「はあ……すごい……ねえ、アレク……これ、好き?」
 アレクは沙羅の太ももを押さえ、体が離れないようにすると上体を起こした。
「ああ、好きだ。もっとお前と触れ合っていたい」
 たくましい腕が肩から背中を抱く。
 アレクは腰を突き上げ、沙羅の体を揺さぶった。それに合わせてベッドがギイギイと鳴り始める。
「あっあぅ……うぅんっ」
 奥を突きあげられるたび、鼻にかかった声が出てしまう。アレクは一向にやめてくれず、さらに速度をあげて沙羅を貫いた。
「サラ……もっと感じて……私で気をやってくれ。何回でもお前を満たしてやりたい」
「んんっ……!」
 ぐりぐりっ、と奥をすり鉢のようにじっくりこね回され、沙羅はたまらずアレクの背にすがりついた。
 奥から頭まで、一直線に快感が迫ってくる。
「ふあぁっ、もうだめ……っ」
 快感が背骨を走って、頭まで至る。びくびくっと子宮まで震えるようだった。
「くっ」
 とアレクがくぐもった声をあげ、沙羅の体からペニスを一気に引き抜く。
 バッ、と熱いものが沙羅の背中にかかった。
 タラ……っと背中を滑り落ちていくのが彼の精液だと知ると、沙羅はこれ以上なく体を熱くさせる。
 肩で息をして精液がお尻まで流れるのを感じていると、アレクが沙羅をしっかり抱きしめ、頬ずりしてから肩に口づけた。
 熱い口づけは首にも上り、やがて唇を合わせるとどちらからともなく舌を絡ませ合った。

次の話へ→【鏡中夢幻】 第7話

 

  • この記事を書いた人

深月カメリア

ライター:深月カメリア 女性特有の病気をきっかけに、性を大切にすることに目覚めたXジェンダー。以来、性に関して大切な精神的、肉体的なアプローチを食事、運動、メンタルケアを通じて発信しています。 Writer:Camellia Mizuki I am an X-gender woman who was awakened to the importance of sexuality by a woman's specific illness. Since then, I've been sharing an essential mind-body approach to sexuality through diet, exercise, and mental health care.”

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